俺はVR中華風戦闘SLGで、体を褒美に覇者を目指す

天岸 あおい

文字の大きさ
上 下
117 / 345
七話 現実が繋がる時

ここは現実なのか?

しおりを挟む
「私は柳生田邦彦。そこの東郷のスポンサーをさせてもらっている」

 確か東郷さんはスポーツ用品を作っている会社とスポンサー契約をしている。ということは、この柳生田さんはその会社の社長か何かだろう。

「初めまして、正代誠人です。このような機会を頂き感謝しております」

「君の活躍は東郷からかねがね聞いているよ。誰もが敵わぬと諦める中、唯一挑み続けている選手だと……大学を卒業したら、ぜひうちに来て欲しい」

 明朗に笑いながら柳生田さんは握手した手を振り、俺を勧誘してくる。

 たぶん光栄な申し出なのだろう。ただ俺の意識はスポンサーを得られるかどうかよりも、東郷さんの意見のほうに向いてしまう。

 まさか東郷さんが俺をそんな風に評価していたなんて……。
 思わず横目で東郷さんを見やれば、その顔は俺がよく知っているもの――一切の感情を無くした、冷え切った表情に変わっていた。

「柳生田社長、今から私たちは練習に向かいますので、失礼します」

「ああ悪い。すまなかったな邪魔をして。ではまた夕方の懇親会の時に……」

 おもむろに俺との握手を解き、柳生田さんは関係者たちとともに立ち去っていく。

 ふと関係者たちが俺たちとすれ違う時、やけにニヤついた目でこちらを見てきた。

「彼が例の――」

「いい体をしているではないか」

「これは――夜が楽しみだ」

 そんなヒソヒソ声が聞こえてきて、俺はわずかに顔をしかめてしまう。

 おそらくこれは、選手である俺の体を見て評価しているのだと思う。
 だが……ゲーム内で淫らな世界を垣間見てしまったせいか、関係者たちの目が色めき、下卑た意味合いを含んでいるように感じてしまう。

 ぞわり。俺の背筋に悪寒が走り、全身が総毛立つ。
 離れていく彼らの背を見つめている最中、ポン、と東郷さんに肩を叩かれた。

「着替えに行こうか、正代君。ロッカールームはこっちだ」

「あ……は、はい。ありがとうございます」

 俺は我に返り、歩き始めた東郷さんの後ろへ続く。

 ロビーから細い廊下へ入った時、東郷さんが背を向けたまま俺に告げる。

「……ここにいる間、俺の相手をずっとしてもらう。決して無断で動かないように。俺から離れる時は必ず一言教えて欲しい」

「それは……練習の後も、ですか?」

「そうだ。くれぐれも忘れないでくれ。もし約束を違えた時は――」

 東郷さんが振り向く。
 姿は見えているのに、気配を感じさせない動き。

 だから俺の頬に手を添えられたことを、すぐに気づくことができなかった。

 東郷さんがあまりにもささやかに、しかし間違いなく俺に笑いかける。
 冷たく妖しい笑み。唐突に滲み出た色香に、俺は全身を強張らせた。

「――お仕置きだ」

 低くて艶めかしい囁き声。何度もゲーム内で耳元で囁かれた、情欲に溢れた男たちの声色を思い出してしまい、俺の腰から力が抜けそうになる。

 ……ここは現実なのか? 俺は『至高英雄』から別のゲームに移ってしまったのか?

 崩れ落ちそうになる膝に力を入れ、俺はどうにか無様な姿を晒すまいと堪える。
 必死に平静であるように見せようとする俺を、東郷さんは舐め回すように見てから踵を返し、ロッカールームへ消えてしまった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。 かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。 その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。 ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。 BLoveさんに先行書き溜め。 なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。

猫宮乾
BL
 異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...