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六話 将の育成は体を張って
●私を覚えて
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ただの戯れの睦言なら聞き流せるのに、そこに含まれる意味に気づいた今、才明の言葉を心が抱え込みたがってしまう。
もっと何か言って欲しくて、俺は思わず才明の腕にしがみつく。
傍から見れば俺が熱烈に強請っているように映るだろう。そんなことを気にして羞恥を覚える余裕は、才明に根こそぎ奪われてしまった。
俺の顔に穏やかなキスの雨を降らせながら、才明が俺の望みに応えてくれる。
「この世界が夢幻であり、誠人様は現の世界から訪れている……領主は皆がそうなりますが……領主で無くなれば勝者の奴隷になりますが、実は逃げて野に下る者もいるのですよ。その場合は元の姿を奪われ、長く他の領主に登用されねば自我を失い、ただこの世界を動かす傀儡と化す……敗者には恐ろしい場所ですよ、ここは」
自分であるためには、この世界で勝ち続けるか、他の領主の陣営に入るかしなくてはいけない――やはり、ただのゲームの域を超えている。
顔を強張らせてしまった俺を嗜めるように、才明の手が寝間着の間に入り込んで肌を撫でてくる。こそばゆいタッチで胸から肌を撫でられ、思わずビクッと俺の肩が跳ねた。
「硬くならないで下さい……貴方の気配に敏感な者に気づかれてしまいますから」
「……っ……白澤、のことか」
「ええ……ここには最初から作られて用意された者も、領主の手で作られた者も、元領主であった者も、何者か分からなくなった者も、すべてが混在しています。白澤殿も華候焔殿も例外ではありません」
「ならば、才明は……?」
「……正直に言いますと、自信が持てません。私は私であり続けていると思っているのですが、断言するにはいささか長くここへ留まり過ぎました。ですから――」
おもむろに才明は俺の頬を両手で挟み、声にならない密やかな声で告げる。
「どうか誠人様の体に私を覚えさせることをお許し下さい。いつか答え合わせができる日に備えて……現に持ち込めるのは、ここでの記憶と経験だけ。私に身も心も委ね、深く感じて……」
言い終わらぬ内に才明が俺の唇を貪り出す。
激しさはないが、才明の丁寧ながら執拗な舌の動きに口内が溶かされていく。
「ん……ぅ……」
ゲーム内では連日体を拓かれ、淫らさに磨きをかけられ続けている。しかも朝も昼も華候焔の欲情をぶつけられて体は快楽の虜のまま。瞬く間に理性よりも淫靡に育てられた本能が俺を支配する。
ふと、華候焔が情事の最中に告げた言葉が頭をよぎる。
『体は許しても、心は奪われるな』
才明のことを忠告した後の抱き方は、互いを知り合うためのものではなかった。
どこまでも俺を熱く求め、心のすべてを奪おうとするような――相手に一途で恋焦がれる恋人のようなまぐわいだと感じてしまった。
そのせいか才明の言葉に心が揺れながらも、安易にすべてを信じることはできなかった。
もっと何か言って欲しくて、俺は思わず才明の腕にしがみつく。
傍から見れば俺が熱烈に強請っているように映るだろう。そんなことを気にして羞恥を覚える余裕は、才明に根こそぎ奪われてしまった。
俺の顔に穏やかなキスの雨を降らせながら、才明が俺の望みに応えてくれる。
「この世界が夢幻であり、誠人様は現の世界から訪れている……領主は皆がそうなりますが……領主で無くなれば勝者の奴隷になりますが、実は逃げて野に下る者もいるのですよ。その場合は元の姿を奪われ、長く他の領主に登用されねば自我を失い、ただこの世界を動かす傀儡と化す……敗者には恐ろしい場所ですよ、ここは」
自分であるためには、この世界で勝ち続けるか、他の領主の陣営に入るかしなくてはいけない――やはり、ただのゲームの域を超えている。
顔を強張らせてしまった俺を嗜めるように、才明の手が寝間着の間に入り込んで肌を撫でてくる。こそばゆいタッチで胸から肌を撫でられ、思わずビクッと俺の肩が跳ねた。
「硬くならないで下さい……貴方の気配に敏感な者に気づかれてしまいますから」
「……っ……白澤、のことか」
「ええ……ここには最初から作られて用意された者も、領主の手で作られた者も、元領主であった者も、何者か分からなくなった者も、すべてが混在しています。白澤殿も華候焔殿も例外ではありません」
「ならば、才明は……?」
「……正直に言いますと、自信が持てません。私は私であり続けていると思っているのですが、断言するにはいささか長くここへ留まり過ぎました。ですから――」
おもむろに才明は俺の頬を両手で挟み、声にならない密やかな声で告げる。
「どうか誠人様の体に私を覚えさせることをお許し下さい。いつか答え合わせができる日に備えて……現に持ち込めるのは、ここでの記憶と経験だけ。私に身も心も委ね、深く感じて……」
言い終わらぬ内に才明が俺の唇を貪り出す。
激しさはないが、才明の丁寧ながら執拗な舌の動きに口内が溶かされていく。
「ん……ぅ……」
ゲーム内では連日体を拓かれ、淫らさに磨きをかけられ続けている。しかも朝も昼も華候焔の欲情をぶつけられて体は快楽の虜のまま。瞬く間に理性よりも淫靡に育てられた本能が俺を支配する。
ふと、華候焔が情事の最中に告げた言葉が頭をよぎる。
『体は許しても、心は奪われるな』
才明のことを忠告した後の抱き方は、互いを知り合うためのものではなかった。
どこまでも俺を熱く求め、心のすべてを奪おうとするような――相手に一途で恋焦がれる恋人のようなまぐわいだと感じてしまった。
そのせいか才明の言葉に心が揺れながらも、安易にすべてを信じることはできなかった。
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