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六話 将の育成は体を張って

危険な男2

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「おい、俺は城門前で待っていろと言ったはずだ。言うことを聞かんヤツは、身ぐるみ剥いで門にはりつけるぞ」

 羽勳の背後から華候焔が不敵に笑い、肩に手を乗せる。
 振り向いた瞬間、羽勳の顔があからさまに引きつった。

「こ、これは、華候焔殿……申し訳ない。とても動きが良かったもので、つい引き寄せられてしまった」

「気持ちは分かるが、気を付けてもらわんとな。一人だけ特例を許していたら、他の者に示しがつかん。さすがに全員を相手にしてもらうなんてことはさせられんしな」

 ……面接の意味だと思いたい。別の意味を含んでいるように聞こえたとしても。

 俺が深く考えないようにしていると、おもむろに華候焔が俺に近づき、親しげに肩を組んできた。

「先に言っておくと、俺の褒美はこの至宝だ。そのおこぼれが欲しいと言うなら、命をかけて誠人様に尽くしてもらうぞ。ただ便乗して甘い汁を吸おうなんて考えは捨てろ」

「もちろんだとも! オレは人の体をよく知っている……急所を突くことも、気持ち良くしてやって秘密を吐かせることもできる。オレの利用価値は高い。ぜひ登用してもらいたい」

「そいつは考えておく、としか答えられないな。集まった連中に一通り会ってからでなけば判断できん」

「この顔と名前を覚えてもらえるだけでもありがたい! では誠人様、失礼致します」

 意味ありげな流し目を向けながら、羽勳は踵を返して城門の人だかりへと戻っていく。

 十分に離れてから、華候焔が俺に耳打ちする。

「アイツは扱いが難しいな。できれば追い返したいところだが、厄介なことにそこそこ有能ではある」

「……有能なのか、あれで?」

「あれでもこの世界の十傑に入る男だ。俺よりは劣るがな」

 華候焔の自慢を聞き流し、俺は顔鐡へ顔を向ける。

「同じ領主の所にいたらしいが、どんな人物だったか覚えているか?」

「さほど接点はありませんでしたが、領土内で浮名流しまくっておりましたな。あと男女問わずに食い散らかす悪食とも……」

 第一印象通り、性に奔放な人物らしい。
 いくら有能であったとしても、俺的には断りたい。

 訴えるように華候焔を見上げれば、珍しく「我慢しろ」とは言わずに腕を組んだ。

「俺も同感だ。あれは誠人を壊す男だ。絶対に触らせる気はない」

 誰であっても構わないと思っていたら、華候焔なりに気を遣ったのだたと判断する。心の奥で華候焔の顔に安堵していると、

「誠人様、才明から伝言だ。今のままだと誠人様の体で褒美をあげ続けなければいけない。だから褒美を分担できる将を作ったほうがいい、だとさ」
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