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四話 追い駆ける者、待つ者
力を合わせて
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まだ状況がうまく掴めていないのか、英正は呆然と俺を見上げるばかりだ。
しかし目の焦点が合い始めると、しっかり俺の手を掴んで立ち上がった。
「行けるか、英正?」
「はい。行ってみせます」
やはりかなり体力を消耗したらしく、出陣する前よりも精気が弱っている。
それでも目は死んでいない。むしろ英正の力が目に凝縮されているような気すらしてくる。
「……華候焔様に、お前の弱さを補うために命を使うぞ、と言われて雷獣化を身に着けました。死ぬ前に解除してやるが、廃人になるかもしれないから覚悟しておけ、とも」
「そうだったか。躊躇せずに駆け付けて良かった」
「もし領主様が先に来たならば、丁度いい所で終わらせられるだろうが……と華候焔様は仰られていました。アイツなら来るな、と確信を持たれた様子でした」
華候焔……あの男は――。
彼と出会ってからずっと、俺は華候焔が思い描いた図の通りに動かされている。
未熟な俺を確実に育てるように。
早くここまで駆け上がって来いと待ちわびるように。
数多の兵士たちの向こう側で矛を振るっているだろう華候焔のことを考えていると、英正が俺と握り合う手に力をグッと込めた。
「私も領主様を信じておりました。そして、お二人のような絆が欲しいと切望しております」
「絆……か。あるように見えるのか?」
「それはもうはっきりと。私もそうなれるよう努力し、追いついてみせます」
……英正にそう見えるというなら、少しは華候焔との間にあるのか。
あまりに本音が掴めなくて実感がなのだが――。
「誠人様、これより敵将の元へ向かうのですか?」
俺が乗っていた馬を引き連れた才明が、自分の馬を降りて俺に問うてくる。
「ああ。今あそこで華候焔と顔鐡が奮戦している。早く向かわねば……」
「もうここで待っていても良さそうですよ? あのお二人なら大丈夫でしょうし」
「いいや。多分ギリギリまで俺たちを待っている。未熟な俺たちに敵将を討たせ、経験を積ませたいと思っているだろうから」
意外そうに才明が目を見開き、すぐに肩をすくめた。
「特殊ですねえ、誠人様のところは……でも分かりました。私はここで待機しております。英正殿、どうか私の馬を使って下さい」
初めて才明と顔を合わせた英正が、これは誰だと訝しげな顔を見せる。
しかし俺が「ありがとう才明」と礼を伝えると、俺の意思ならばと素直に才明から手綱を受け取ってくれた。
俺は自分の馬に乗り、手綱を取りながら才明へ告げる。
「色々と感謝する才明! 戦が終わったら、どうかこれからの道を示して欲しい」
「もちろんです。誠人様に喜んで頂けるよう、夜通しでもじっくりとお伝えしましょう」
フッ、と才明の目に妖しい光が覗く。
……今は考えないようにしよう。鳥肌が立って仕方がないが。
俺は馬の腹を蹴り、混戦模様の場へと向かう。
英正もすぐ俺に続き、並びながら共に疾走する。
どれだけ数が多くとも、戦意を削がれている敵兵など脅威だと感じなかった。
しかし目の焦点が合い始めると、しっかり俺の手を掴んで立ち上がった。
「行けるか、英正?」
「はい。行ってみせます」
やはりかなり体力を消耗したらしく、出陣する前よりも精気が弱っている。
それでも目は死んでいない。むしろ英正の力が目に凝縮されているような気すらしてくる。
「……華候焔様に、お前の弱さを補うために命を使うぞ、と言われて雷獣化を身に着けました。死ぬ前に解除してやるが、廃人になるかもしれないから覚悟しておけ、とも」
「そうだったか。躊躇せずに駆け付けて良かった」
「もし領主様が先に来たならば、丁度いい所で終わらせられるだろうが……と華候焔様は仰られていました。アイツなら来るな、と確信を持たれた様子でした」
華候焔……あの男は――。
彼と出会ってからずっと、俺は華候焔が思い描いた図の通りに動かされている。
未熟な俺を確実に育てるように。
早くここまで駆け上がって来いと待ちわびるように。
数多の兵士たちの向こう側で矛を振るっているだろう華候焔のことを考えていると、英正が俺と握り合う手に力をグッと込めた。
「私も領主様を信じておりました。そして、お二人のような絆が欲しいと切望しております」
「絆……か。あるように見えるのか?」
「それはもうはっきりと。私もそうなれるよう努力し、追いついてみせます」
……英正にそう見えるというなら、少しは華候焔との間にあるのか。
あまりに本音が掴めなくて実感がなのだが――。
「誠人様、これより敵将の元へ向かうのですか?」
俺が乗っていた馬を引き連れた才明が、自分の馬を降りて俺に問うてくる。
「ああ。今あそこで華候焔と顔鐡が奮戦している。早く向かわねば……」
「もうここで待っていても良さそうですよ? あのお二人なら大丈夫でしょうし」
「いいや。多分ギリギリまで俺たちを待っている。未熟な俺たちに敵将を討たせ、経験を積ませたいと思っているだろうから」
意外そうに才明が目を見開き、すぐに肩をすくめた。
「特殊ですねえ、誠人様のところは……でも分かりました。私はここで待機しております。英正殿、どうか私の馬を使って下さい」
初めて才明と顔を合わせた英正が、これは誰だと訝しげな顔を見せる。
しかし俺が「ありがとう才明」と礼を伝えると、俺の意思ならばと素直に才明から手綱を受け取ってくれた。
俺は自分の馬に乗り、手綱を取りながら才明へ告げる。
「色々と感謝する才明! 戦が終わったら、どうかこれからの道を示して欲しい」
「もちろんです。誠人様に喜んで頂けるよう、夜通しでもじっくりとお伝えしましょう」
フッ、と才明の目に妖しい光が覗く。
……今は考えないようにしよう。鳥肌が立って仕方がないが。
俺は馬の腹を蹴り、混戦模様の場へと向かう。
英正もすぐ俺に続き、並びながら共に疾走する。
どれだけ数が多くとも、戦意を削がれている敵兵など脅威だと感じなかった。
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