67 / 345
四話 追い駆ける者、待つ者
技の掛け合い
しおりを挟む
敵兵が俺たちに気づいて反応する。
最前の兵は槍を、後方は弓を構えて俺を狙う。
穿とうと攻撃を放たれる前に――俺は竹砕棍を握り、振り下ろしながら溜めていた力を放つ。
「炎舞撃……っ!」
炎の渦が立ち昇り、辺りに灼熱の痛みを飛ばす。
赤い光が遠くの敵兵を照らし、俺の存在に気付いてどよめく気配がする。
しかし不意に突風が吹いたかと思えば、俺の炎がさらに勢いを増して広範囲へ散らばっていく。
自然に吹く風にしては勢いがあり、あまりに人工的だ。
不自然さに顔をしかめていると、才明がいつの間にか軍師が持つ羽根の扇子を手にし、ひらひらとあおいでいた。
「これが私の技ですよ。広風……誰かの技をより範囲を広げさせるものです。武勇はありませんが、将を活かす術はいくつか持ち合わせております」
軍師というだけでもありがたいのに、戦いのサポート役までこなしてくれるのは助かる。
癖のある性格は気になるところだが、それを言ったら華候焔も同じ人種だ。一人も二人も変わらない……と思わないと前に進めない。
俺は辺りを見渡し、英正の姿を探す。
敵味方が入り混じった中、その姿を見つけるのは困難かと思われたが――パァンッ! 激しく空を割る音が辺りに轟き、北の方角で縦に走る閃光が見えた。
「あれは……もしかして英正の技?」
俺は弱った敵兵たちの中を馬で疾走する。
英正に近づくほどに敵の動揺が凄まじい。領主らしい者が二人現れたからと惑っている感じではない。
まるで四方に脅威があり、どこへ逃げればいいのか分からなくなっている獣のような……。
俺の姿を見て攻めようとしてくる者がいても腰が逃げている。目は明らかに怯え、どうにか生き延びようと足掻いているように見える。
何かがおかしい。
自軍に有利な状況になっているのに、見えない全貌に不安を覚えてしまう。
敵兵の攻撃を軽く払いながら閃光が落ちた場所へ向かうと、青白い光が敵兵に囲まれながら、舞うように跳ねる姿が目に入ってくる。
ようく目をこらして見つめていると、それが人の形をしていることに気が付く。
次第に光を帯びたそれの正体が分かってくる。
黒く染められたはずの髪は青白く、揺らめきながら逆立っている。
手にしている槍を自在に振り回せば、辺りにバチッ、バチッ、と火花が散り、それに触れた途端に兵が光り、その場へ崩れ落ちる。
まるで雷神が降臨したかのような動きだ。
俺は思わずその名を呼んでいた。
「……英正……?」
最前の兵は槍を、後方は弓を構えて俺を狙う。
穿とうと攻撃を放たれる前に――俺は竹砕棍を握り、振り下ろしながら溜めていた力を放つ。
「炎舞撃……っ!」
炎の渦が立ち昇り、辺りに灼熱の痛みを飛ばす。
赤い光が遠くの敵兵を照らし、俺の存在に気付いてどよめく気配がする。
しかし不意に突風が吹いたかと思えば、俺の炎がさらに勢いを増して広範囲へ散らばっていく。
自然に吹く風にしては勢いがあり、あまりに人工的だ。
不自然さに顔をしかめていると、才明がいつの間にか軍師が持つ羽根の扇子を手にし、ひらひらとあおいでいた。
「これが私の技ですよ。広風……誰かの技をより範囲を広げさせるものです。武勇はありませんが、将を活かす術はいくつか持ち合わせております」
軍師というだけでもありがたいのに、戦いのサポート役までこなしてくれるのは助かる。
癖のある性格は気になるところだが、それを言ったら華候焔も同じ人種だ。一人も二人も変わらない……と思わないと前に進めない。
俺は辺りを見渡し、英正の姿を探す。
敵味方が入り混じった中、その姿を見つけるのは困難かと思われたが――パァンッ! 激しく空を割る音が辺りに轟き、北の方角で縦に走る閃光が見えた。
「あれは……もしかして英正の技?」
俺は弱った敵兵たちの中を馬で疾走する。
英正に近づくほどに敵の動揺が凄まじい。領主らしい者が二人現れたからと惑っている感じではない。
まるで四方に脅威があり、どこへ逃げればいいのか分からなくなっている獣のような……。
俺の姿を見て攻めようとしてくる者がいても腰が逃げている。目は明らかに怯え、どうにか生き延びようと足掻いているように見える。
何かがおかしい。
自軍に有利な状況になっているのに、見えない全貌に不安を覚えてしまう。
敵兵の攻撃を軽く払いながら閃光が落ちた場所へ向かうと、青白い光が敵兵に囲まれながら、舞うように跳ねる姿が目に入ってくる。
ようく目をこらして見つめていると、それが人の形をしていることに気が付く。
次第に光を帯びたそれの正体が分かってくる。
黒く染められたはずの髪は青白く、揺らめきながら逆立っている。
手にしている槍を自在に振り回せば、辺りにバチッ、バチッ、と火花が散り、それに触れた途端に兵が光り、その場へ崩れ落ちる。
まるで雷神が降臨したかのような動きだ。
俺は思わずその名を呼んでいた。
「……英正……?」
2
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説




美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる