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四話 追い駆ける者、待つ者
ゲームだからこそ
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どう見ても冗談とは思えない。
揺らがない目で見つめ続ける英正の視線に、俺の体が縛られる。
華候焔や才明とは違う本気の色が強すぎる眼差し。
……困った。まさか戯れに求められるほうが楽だなんて考える日が来るとは……。
返答に困る俺へ助け舟を出すように、英正がわずかに微笑む。
「絶対に、とは申しません。領主様が少しでも情けを恵んでもいいと思われましたら、どうか私にも御身を許して下さい」
「……確約はしなくてもいいのか?」
「領主様のお心を苦しめたくはありません。くれぐれも無理をなされないで下さい」
静かに英正は跪き、俺に首を垂れた。
「とても分相応なことを申し出てしまいました。明日は褒美の有無に関わらず、領主様のために戦います」
本気で想っているからこそ、力を惜しまないということか。力どころか命すら惜まない気配がする。
ここまで覚悟している英正から逃げるのは卑怯に思えてしまう。
仕える者へ本音を曝け出すのは、さぞ勇気が要っただろう。俺と同じように這い上がろうとしている最中の人間だからこそ、ここまで己を胸の内を見せる勇気に頭が下がる。
「英正、今日は華候焔から何を学んだ?」
「槍と矢を習い、技を授かりました。まだ練度は足りず、一撃で将を仕留められるような力はありませんが、直接対峙して挑むことができる資格を得ました」
「そうか。一日で技を二つも……」
「領主様のお力になりたくて、必死に習得しました」
「……分かった。英正の願い、考えておく」
俺の言葉に英正が勢いよく頭を上げる。
歯切れの悪い保留の言葉――だが英正の目は驚きで丸くなり、そして歓喜に潤む。
「ありがとうございます……っ、必ず、明日は戦い抜いてみせます……!」
バッ、と手と拳を合わせた拝礼を行った後、英正は立ち上がって「では、失礼します」と踵を返して立ち去っていく。
たった一日でここまで成長するのかと俺が見送っていると、
「すごいですねー誠人サマ。モテモテですねー」
唐突に耳元で白澤に呟かれて、俺は驚きで肩を跳ねさせる。
それから側頭部を押さえながら、はぁ……と長息を吐き出した。
「言わないでくれ、白澤……考え始めたら前に進めなくなる」
「負けたら奴隷化ですもんねー。手合わせみたいに、どれだけ負けても挑み続けることができませんしー。手持ちの将が少ない誠人サマは一度でも負ければ即終了ですからー」
「ああ……ゲームでなければ、こんなこと、絶対に受け入れられない」
「……ですよねー。割り切っちゃって、体を褒美にドンドン勝ち上がっちゃいましょー」
どれだけ感触が生々しくて、ゲームを中断して現実に戻っても事後の名残りが残っていても仮想の出来事には変わらない。
そして俺はゲームであっても負けたくない。手段は選ばない。それだけだ。
何度か深呼吸して乱れた心と思考を整えると、俺は自室へと足を踏み入れた。
揺らがない目で見つめ続ける英正の視線に、俺の体が縛られる。
華候焔や才明とは違う本気の色が強すぎる眼差し。
……困った。まさか戯れに求められるほうが楽だなんて考える日が来るとは……。
返答に困る俺へ助け舟を出すように、英正がわずかに微笑む。
「絶対に、とは申しません。領主様が少しでも情けを恵んでもいいと思われましたら、どうか私にも御身を許して下さい」
「……確約はしなくてもいいのか?」
「領主様のお心を苦しめたくはありません。くれぐれも無理をなされないで下さい」
静かに英正は跪き、俺に首を垂れた。
「とても分相応なことを申し出てしまいました。明日は褒美の有無に関わらず、領主様のために戦います」
本気で想っているからこそ、力を惜しまないということか。力どころか命すら惜まない気配がする。
ここまで覚悟している英正から逃げるのは卑怯に思えてしまう。
仕える者へ本音を曝け出すのは、さぞ勇気が要っただろう。俺と同じように這い上がろうとしている最中の人間だからこそ、ここまで己を胸の内を見せる勇気に頭が下がる。
「英正、今日は華候焔から何を学んだ?」
「槍と矢を習い、技を授かりました。まだ練度は足りず、一撃で将を仕留められるような力はありませんが、直接対峙して挑むことができる資格を得ました」
「そうか。一日で技を二つも……」
「領主様のお力になりたくて、必死に習得しました」
「……分かった。英正の願い、考えておく」
俺の言葉に英正が勢いよく頭を上げる。
歯切れの悪い保留の言葉――だが英正の目は驚きで丸くなり、そして歓喜に潤む。
「ありがとうございます……っ、必ず、明日は戦い抜いてみせます……!」
バッ、と手と拳を合わせた拝礼を行った後、英正は立ち上がって「では、失礼します」と踵を返して立ち去っていく。
たった一日でここまで成長するのかと俺が見送っていると、
「すごいですねー誠人サマ。モテモテですねー」
唐突に耳元で白澤に呟かれて、俺は驚きで肩を跳ねさせる。
それから側頭部を押さえながら、はぁ……と長息を吐き出した。
「言わないでくれ、白澤……考え始めたら前に進めなくなる」
「負けたら奴隷化ですもんねー。手合わせみたいに、どれだけ負けても挑み続けることができませんしー。手持ちの将が少ない誠人サマは一度でも負ければ即終了ですからー」
「ああ……ゲームでなければ、こんなこと、絶対に受け入れられない」
「……ですよねー。割り切っちゃって、体を褒美にドンドン勝ち上がっちゃいましょー」
どれだけ感触が生々しくて、ゲームを中断して現実に戻っても事後の名残りが残っていても仮想の出来事には変わらない。
そして俺はゲームであっても負けたくない。手段は選ばない。それだけだ。
何度か深呼吸して乱れた心と思考を整えると、俺は自室へと足を踏み入れた。
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