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三話 逃れられぬ世界
素質の片鱗2
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俺ひとりでは技を繰り出しても顔色ひとつ変えられなかった華候焔。
いくら最強であっても、俺と英正を相手にすれば多少は焦りを見せる瞬間もあるだろう。
昂った心は俺から慎重という言葉を隠す。
二人がかりでどこまでやれるだろうか、という好奇心と高揚が止まらない。
俺は英正の腕を引きながら華候焔から離れ、ちらりと英正を見やった。
「俺が正面から向かって華候焔の気を引く。だから英正は隙を見計らって仕掛けてくれ」
「領主様を囮にするような真似はできません! 私が気を引いてみせます」
「いや、俺は華候焔と一度手合わせしているから、少しは手が読める。ここは俺が――」
「それならばなおのこと、私が隙を作らねばいけないかと……手が分かるからこそ、確実に攻められます」
「しかし英正、俺は――」
意外にも英正が俺に従わず、我を通そうとする。
手合わせをして多少は打ち解けてくれたようだが、ここは譲れない。
張り合うようなやり取りをする俺たちへ、華候焔が「ハハッ」と大きくひと笑いした。
「揉めるぐらいなら同時にかかってこい。役割にこだわるな。戦いの場で時間に余裕なんかある訳ないだろ……!」
言い終わらぬ内に華候焔が駆け、俺たちに攻め込んでくる。
一瞬だった。
懐まで入られ、華候焔の手が俺を捕えかける。
――だが俺の体は意図せず後ろへ飛ばされ、英正が入れ替わる。
迫り来る手を内から外へといなし、軌道を逸らせ、屈強な腕を捕まえた。
そして勢いを活かし、英正は華候焔を投げ飛ばした。
立派な体躯が空を舞い――ザッ。華候焔は余裕で着地する。
「ほう、やるなあ。俺を投げ飛ばすとは……うおっ!」
着地の瞬間は一番気が抜けやすい。俺は間髪入れずに華候焔へ飛びかかっていた。
カッ、コッ、と俺の連撃に華候焔が慌てて応じる。そこへ、
「華候焔様、お覚悟を!」
体勢を立て直す隙を見逃さず、英正が華候焔を攻めていた。
そこからは頻繁に攻め役を変え、俺たちは絶え間なく棍の猛威を与え、時折意表を突いて体術をこなす。
あきらかに一人の時よりも華候焔を攻めることができている。
これなら一撃を入れることができると踏んでいたが……。
「ほらほらほら、動きが甘くなってるぞ。動き続けろ。俺の厄介な攻撃が飛んでくるぞ」
時間が経つにつれて、華候焔が余裕を取り戻していく。
ハァ、ハァ、と息を乱す俺たちは、次第に動きを鈍くし、結局は華候焔に一撃を打ち込むことができず、力が抜けて地に崩れ落ちてしまった。
いくら最強であっても、俺と英正を相手にすれば多少は焦りを見せる瞬間もあるだろう。
昂った心は俺から慎重という言葉を隠す。
二人がかりでどこまでやれるだろうか、という好奇心と高揚が止まらない。
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「しかし英正、俺は――」
意外にも英正が俺に従わず、我を通そうとする。
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――だが俺の体は意図せず後ろへ飛ばされ、英正が入れ替わる。
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「ほう、やるなあ。俺を投げ飛ばすとは……うおっ!」
着地の瞬間は一番気が抜けやすい。俺は間髪入れずに華候焔へ飛びかかっていた。
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「華候焔様、お覚悟を!」
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そこからは頻繁に攻め役を変え、俺たちは絶え間なく棍の猛威を与え、時折意表を突いて体術をこなす。
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これなら一撃を入れることができると踏んでいたが……。
「ほらほらほら、動きが甘くなってるぞ。動き続けろ。俺の厄介な攻撃が飛んでくるぞ」
時間が経つにつれて、華候焔が余裕を取り戻していく。
ハァ、ハァ、と息を乱す俺たちは、次第に動きを鈍くし、結局は華候焔に一撃を打ち込むことができず、力が抜けて地に崩れ落ちてしまった。
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