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三話 逃れられぬ世界
体の褒美、再び?
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ニッと歯を見せて顔鐡は笑うと、斜め前に腰を下ろした華候焔に視線を送る。
「それにしても華候焔殿のような名高き猛将を召し抱えられるとは、誠人様の度量に驚くばかりですぞ。失礼ながら、どれほどの褒賞をお与えになられているのか、とても気になりますな」
褒賞? ……褒美、ということか。
昨夜のあれを褒美として扱っていいのか? しかし、あれ以外に華候焔には何も与えていない気が――。
妙な脂汗をかいている俺をよそに、華候焔が堂々と顔鐡へ答える。
「顔鐡。お前が想像しているような褒美はもらってないぞ。こんな未発展の所で正規の褒賞なんて要求した日には、数日も立たずに城が潰れて滅亡しちまうだろ」
「やはりそうか。まさか無償で?」
「いいや。現物支給だ」
げ、現物支給……物は良いようだな。
その場へ突っ伏したくなるのを堪えていると、華候焔が艶めかしい視線を横目で送ってくる。
「誠人様の若くて強靭な体に惹かれてな。そのお体を褒美に貰い受けたんだ」
「体を褒美、だと?」
顔鐡の目が丸くなってしまう。どう見ても驚いている。
改めて考えると、最強の武人を金銭も領土も宝物も与えず召し抱えるなど、普通はあり得ないことだと思う。ましてや現物支給の中身が俺の体だなんて……。
何度か俺と華候焔を見交わした後、妙に顔鐡が大きく頷き、得心を得た気配を見せた。
「なるほど! ならばこの顔鐡も、領土を拡大されるまでは現物支給に誠人様を望みましょうぞ!」
な、な、なんだと?!
今度は俺が目を丸くして顔鐡を凝視してしまう。
華候焔だけでなく顔鐡まで、そういったことを求めるというのか? 英雄は色を好むと聞くが、顔鐡にも該当するなんて――。
あまりにもショックが大きくて俺が何も言えずにいる中、顔鐡は快活に笑った。
「此度の戦では馬上での交わりとなりましたが、ぜひ地に足を着けた状態で誠人様と手合わせをしとうございますな! 私は強き者と戦うことが何よりも喜び。どうか誠人様のお手が空いている時に、私めと手合わせして頂きたい」
……良かった。戦いの手合わせか――願ってもない。
俺は丸くした目を輝かせ、身を乗り出しながら顔鐡へ頷いた。
「喜んで手合わせして欲しい! 俺はもっと強くなるためにここへ来たんだ。それに元は武器を使わない武道を嗜んでいる。ぜひ戦いたい!」
「ここまで喜んで頂けるとは……いやはや素晴らしき向上心。やはり誠人様の元へ下ったのは正しかったようですな。褒美のためにこの力、存分に振るいましょうぞ」
戦力としてだけでなく、俺の戦いの相手をしてもらうことが褒美になるなんて。
素晴らしい将と出会えたと感動する俺に聞こえるように、ぼそりと華候焔が呟く。
「気に入ったようで何よりだが、俺をほったらかしにするんじゃないぞ。本当は戦の褒美とは別に、臣下として召し抱えるために毎日給金が必要なんだからな」
……つまり毎日お前に抱かれろということか、華候焔……。
ここが自室で誰もいないのであれば、頭を抱えて唸るなり身悶えるなりできるのだが、顔鐡の前で恥を晒す訳にもいかない。
俺は聞こえなかったフリをしながらも、心の中で唸るしかなかった。
「それにしても華候焔殿のような名高き猛将を召し抱えられるとは、誠人様の度量に驚くばかりですぞ。失礼ながら、どれほどの褒賞をお与えになられているのか、とても気になりますな」
褒賞? ……褒美、ということか。
昨夜のあれを褒美として扱っていいのか? しかし、あれ以外に華候焔には何も与えていない気が――。
妙な脂汗をかいている俺をよそに、華候焔が堂々と顔鐡へ答える。
「顔鐡。お前が想像しているような褒美はもらってないぞ。こんな未発展の所で正規の褒賞なんて要求した日には、数日も立たずに城が潰れて滅亡しちまうだろ」
「やはりそうか。まさか無償で?」
「いいや。現物支給だ」
げ、現物支給……物は良いようだな。
その場へ突っ伏したくなるのを堪えていると、華候焔が艶めかしい視線を横目で送ってくる。
「誠人様の若くて強靭な体に惹かれてな。そのお体を褒美に貰い受けたんだ」
「体を褒美、だと?」
顔鐡の目が丸くなってしまう。どう見ても驚いている。
改めて考えると、最強の武人を金銭も領土も宝物も与えず召し抱えるなど、普通はあり得ないことだと思う。ましてや現物支給の中身が俺の体だなんて……。
何度か俺と華候焔を見交わした後、妙に顔鐡が大きく頷き、得心を得た気配を見せた。
「なるほど! ならばこの顔鐡も、領土を拡大されるまでは現物支給に誠人様を望みましょうぞ!」
な、な、なんだと?!
今度は俺が目を丸くして顔鐡を凝視してしまう。
華候焔だけでなく顔鐡まで、そういったことを求めるというのか? 英雄は色を好むと聞くが、顔鐡にも該当するなんて――。
あまりにもショックが大きくて俺が何も言えずにいる中、顔鐡は快活に笑った。
「此度の戦では馬上での交わりとなりましたが、ぜひ地に足を着けた状態で誠人様と手合わせをしとうございますな! 私は強き者と戦うことが何よりも喜び。どうか誠人様のお手が空いている時に、私めと手合わせして頂きたい」
……良かった。戦いの手合わせか――願ってもない。
俺は丸くした目を輝かせ、身を乗り出しながら顔鐡へ頷いた。
「喜んで手合わせして欲しい! 俺はもっと強くなるためにここへ来たんだ。それに元は武器を使わない武道を嗜んでいる。ぜひ戦いたい!」
「ここまで喜んで頂けるとは……いやはや素晴らしき向上心。やはり誠人様の元へ下ったのは正しかったようですな。褒美のためにこの力、存分に振るいましょうぞ」
戦力としてだけでなく、俺の戦いの相手をしてもらうことが褒美になるなんて。
素晴らしい将と出会えたと感動する俺に聞こえるように、ぼそりと華候焔が呟く。
「気に入ったようで何よりだが、俺をほったらかしにするんじゃないぞ。本当は戦の褒美とは別に、臣下として召し抱えるために毎日給金が必要なんだからな」
……つまり毎日お前に抱かれろということか、華候焔……。
ここが自室で誰もいないのであれば、頭を抱えて唸るなり身悶えるなりできるのだが、顔鐡の前で恥を晒す訳にもいかない。
俺は聞こえなかったフリをしながらも、心の中で唸るしかなかった。
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