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二話 初めての戦
勝利の宴
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◇ ◇ ◇
「さあ、勝利の酒を楽しもうじゃないか! 良い酒を手配したから、どんどん飲んでくれ」
戦を終え、城に戻って間もなく、広間で戦勝の宴が開かれた。
俺は帰還して早々に寝てしまい、夕刻に白澤に起こされて案内された時には、すべて準備されていた。
手配したのは華候焔。
自ら率先して酒を手配し、台所で作る料理を指示し、宴のセッティングも嬉々としてやったらしい。
始まりの音頭まで華候焔に取られ、俺はその様を黙って眺める。
本来は領主である俺が音頭を取るべきかもしれないが、こういうのは苦手だ。やりたい者がやってくれるならば助かる。
心から俺は納得しているが、肩に乗る白澤は違った。
「なんで華候焔が仕切ってるんですかー? まるで自分が城主みたいな我が物顔でー!」
わざと周りへ聞こえるように不満を漏らす白澤に気づき、華候焔が酒瓶と杯を手にして寄ってくる。
「それだけ嬉しいんじゃねーか、領主様が勝ったのが。ほら、白澤も飲めよ。飲めば飲むだけ、俺の懐が痛くなるぞ?」
すでに酔っているのか、華候焔がいつになく陽気だ。一応皆の前だからと俺の呼び方を変えているが、違和感がひどくて落ち着かない。
からかわれて怒るかと思ったが、「ふふんー」と白澤は妙に勝ち誇った笑いを零した。
「ワタシの体が小さいからと侮ってますねー? いいでしょうー! ワタシをその気にさせたことを後悔させてあげましょうー」
ぴょんっ、と跳ねて酒瓶の口へ飛び乗ったかと思えば、白澤は術で中の酒を浮かし、そこに口を付けてジュルジュルと飲み干していく。
あっという間に飲み干したが、休む間もなく近くの酒瓶に向かい、また酒を浮かしてすすり出す。
明らかに体の大きさ以上の量を飲んでいる。
いったいどこに入っているのだろうか? と不思議に思っていると、華候焔から乾いた笑いが聞こえてきた。
「ハハ、煽り過ぎたか? あれでもやっぱり神獣か……さあ領主様も勝利の酒を」
華候焔は近くに置かれていた酒瓶を手に取り、俺へ差し出してくる。
祝ってくれる気持ちは嬉しい。
しかし俺は瓶の口に手を被せ、小さく首を横に振った。
「ありがたいが、気持ちだけ受け取る。今日の戦の功労者は華候焔だ。どうか俺の分まで美酒を堪能して欲しい」
一瞬、残念そうに華候焔の目元が歪むが、俺と目を合わせると、仕方なさそうな苦笑を浮かべて肩をすくめる。
「じゃあ言葉に甘えさせてもらおうか……あっ、毛玉のヤツめ。どれだけ飲む気だ!」
慌てて華候焔が白澤の元へ向かう。
俺も目で追ってみれば、いつの間にか白澤は酒瓶を三つも空にし、「あはははー!」と笑いながら、さらなる酒を堪能していた。
「さあ、勝利の酒を楽しもうじゃないか! 良い酒を手配したから、どんどん飲んでくれ」
戦を終え、城に戻って間もなく、広間で戦勝の宴が開かれた。
俺は帰還して早々に寝てしまい、夕刻に白澤に起こされて案内された時には、すべて準備されていた。
手配したのは華候焔。
自ら率先して酒を手配し、台所で作る料理を指示し、宴のセッティングも嬉々としてやったらしい。
始まりの音頭まで華候焔に取られ、俺はその様を黙って眺める。
本来は領主である俺が音頭を取るべきかもしれないが、こういうのは苦手だ。やりたい者がやってくれるならば助かる。
心から俺は納得しているが、肩に乗る白澤は違った。
「なんで華候焔が仕切ってるんですかー? まるで自分が城主みたいな我が物顔でー!」
わざと周りへ聞こえるように不満を漏らす白澤に気づき、華候焔が酒瓶と杯を手にして寄ってくる。
「それだけ嬉しいんじゃねーか、領主様が勝ったのが。ほら、白澤も飲めよ。飲めば飲むだけ、俺の懐が痛くなるぞ?」
すでに酔っているのか、華候焔がいつになく陽気だ。一応皆の前だからと俺の呼び方を変えているが、違和感がひどくて落ち着かない。
からかわれて怒るかと思ったが、「ふふんー」と白澤は妙に勝ち誇った笑いを零した。
「ワタシの体が小さいからと侮ってますねー? いいでしょうー! ワタシをその気にさせたことを後悔させてあげましょうー」
ぴょんっ、と跳ねて酒瓶の口へ飛び乗ったかと思えば、白澤は術で中の酒を浮かし、そこに口を付けてジュルジュルと飲み干していく。
あっという間に飲み干したが、休む間もなく近くの酒瓶に向かい、また酒を浮かしてすすり出す。
明らかに体の大きさ以上の量を飲んでいる。
いったいどこに入っているのだろうか? と不思議に思っていると、華候焔から乾いた笑いが聞こえてきた。
「ハハ、煽り過ぎたか? あれでもやっぱり神獣か……さあ領主様も勝利の酒を」
華候焔は近くに置かれていた酒瓶を手に取り、俺へ差し出してくる。
祝ってくれる気持ちは嬉しい。
しかし俺は瓶の口に手を被せ、小さく首を横に振った。
「ありがたいが、気持ちだけ受け取る。今日の戦の功労者は華候焔だ。どうか俺の分まで美酒を堪能して欲しい」
一瞬、残念そうに華候焔の目元が歪むが、俺と目を合わせると、仕方なさそうな苦笑を浮かべて肩をすくめる。
「じゃあ言葉に甘えさせてもらおうか……あっ、毛玉のヤツめ。どれだけ飲む気だ!」
慌てて華候焔が白澤の元へ向かう。
俺も目で追ってみれば、いつの間にか白澤は酒瓶を三つも空にし、「あはははー!」と笑いながら、さらなる酒を堪能していた。
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