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一話 『至高英雄』に強さを求め
戦の作戦2
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華候焔の提案に俺の体が小さく震える。
恐れじゃない。戦の筋道が一気に見えたための武者震いだ。
「アナタがやらないんですかー!? なんのために誠人サマが体を賭けてアナタを雇ったと――」
「いいんだ白澤。これでいい」
「でも領主サマが討たれちゃったら、それで戦は強制終了しちゃいますよー? あと死にはしませんけど、死ぬほど痛い目に遭っちゃいますよ……」
「今の状態は普通じゃないんだ。しかも俺のほうが圧倒的に不利……定石通りに守られるより、奇を狙って俺が攻めに出るのは有効だ」
憤慨する白澤をなだめていると、華候焔が腕を組みながら満足げに頷く。
「分かっているようで何よりだ。もし誠人が弱かったら俺が守り抜くやり方を選んでいたが、十分戦える上に技も使えるなら動いてもらったほうがいいと思ってな。誠人、理由は分かるか?」
「勝率が高いからか?」
「いいや。どっちでも勝てるが、確実に勝てるのは俺が守り抜くほうだ。誠人に直接動いてもらうのは、先を見越してのことだ。戦に参加するだけでも経験値は入るが、直接戦えばそれだけ大きく増える。誠人の等級が早く上がれば、自ら登用を望んで人材が入ってくるようになるんだ」
等級? 今まで聞かなかった単語に首を傾げると、白澤がすかさず教えてくれた。
「れべる、と言ったほうが伝わりますかねー。等級の数値が高ければ高いほど、戦いを潜り抜けてきた猛者になりますー」
「特に力のある武将は、等級の高さに惹かれて集まりやすい。優秀な人材の確保は何よりも重要だからな」
華候焔が話に割って入ると、微笑を浮かべながら俺を見据えてくる。
よく見せる不敵な表情の中、その目には一切笑いがなかった。
「今から覇王を目指すなら、危険を冒してでも等級を上げていくべきだ。それとも一勝だけして逃げ帰るか? それなら俺が直接叩いてやるが――」
「……華候焔の案でいく。俺が相手の総大将をを討つ」
逃げずに視線を真っ向から受け止め、俺は決意を伝える。
フッ、と華候焔の眼差しが和らぎ、愉快そうな色を取り戻した瞳を白澤へ流す。
「決まりだな……ほら毛玉、後はお前の仕事だ。誠人に武将の育成の仕方を教えてやれ」
「だからアナタが仕切らないで下さいー! まったくもう……誠人サマ、武将の育成というのは、兵士の中から有能そうな者に名を与えると育てることが可能になるんですー。なので、その者を将にするなら名付けてあげて下さいー」
怒ったり、俺に愛想よく説明したり、白澤は忙しいな……と思いながら、再び華候焔が連れてきた者を見る。
恐れじゃない。戦の筋道が一気に見えたための武者震いだ。
「アナタがやらないんですかー!? なんのために誠人サマが体を賭けてアナタを雇ったと――」
「いいんだ白澤。これでいい」
「でも領主サマが討たれちゃったら、それで戦は強制終了しちゃいますよー? あと死にはしませんけど、死ぬほど痛い目に遭っちゃいますよ……」
「今の状態は普通じゃないんだ。しかも俺のほうが圧倒的に不利……定石通りに守られるより、奇を狙って俺が攻めに出るのは有効だ」
憤慨する白澤をなだめていると、華候焔が腕を組みながら満足げに頷く。
「分かっているようで何よりだ。もし誠人が弱かったら俺が守り抜くやり方を選んでいたが、十分戦える上に技も使えるなら動いてもらったほうがいいと思ってな。誠人、理由は分かるか?」
「勝率が高いからか?」
「いいや。どっちでも勝てるが、確実に勝てるのは俺が守り抜くほうだ。誠人に直接動いてもらうのは、先を見越してのことだ。戦に参加するだけでも経験値は入るが、直接戦えばそれだけ大きく増える。誠人の等級が早く上がれば、自ら登用を望んで人材が入ってくるようになるんだ」
等級? 今まで聞かなかった単語に首を傾げると、白澤がすかさず教えてくれた。
「れべる、と言ったほうが伝わりますかねー。等級の数値が高ければ高いほど、戦いを潜り抜けてきた猛者になりますー」
「特に力のある武将は、等級の高さに惹かれて集まりやすい。優秀な人材の確保は何よりも重要だからな」
華候焔が話に割って入ると、微笑を浮かべながら俺を見据えてくる。
よく見せる不敵な表情の中、その目には一切笑いがなかった。
「今から覇王を目指すなら、危険を冒してでも等級を上げていくべきだ。それとも一勝だけして逃げ帰るか? それなら俺が直接叩いてやるが――」
「……華候焔の案でいく。俺が相手の総大将をを討つ」
逃げずに視線を真っ向から受け止め、俺は決意を伝える。
フッ、と華候焔の眼差しが和らぎ、愉快そうな色を取り戻した瞳を白澤へ流す。
「決まりだな……ほら毛玉、後はお前の仕事だ。誠人に武将の育成の仕方を教えてやれ」
「だからアナタが仕切らないで下さいー! まったくもう……誠人サマ、武将の育成というのは、兵士の中から有能そうな者に名を与えると育てることが可能になるんですー。なので、その者を将にするなら名付けてあげて下さいー」
怒ったり、俺に愛想よく説明したり、白澤は忙しいな……と思いながら、再び華候焔が連れてきた者を見る。
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