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一話 『至高英雄』に強さを求め
試し2
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攻撃が間合いへ入った直後まで、華候焔は余裕を湛えた笑みを浮かべていた。
だが刹那、目が据わる。
素早く棒を構えたと思えば、小さく一歩後退しながら俺の棍を迎える。
ガッ! 衝撃が手に伝わり、骨まで響く。
力を加えて押し込もうとしてもビクともしない。
仕切り直しを狙って俺は華候焔から飛び引き、再度構えて真っ直ぐに突く。
ビュッと風を切るが、華候焔はわずかに身を捻って避けてしまう。
二度、三度と立て続けに突いてみるが、予め分かっていたかのように回避される。
華候焔から余裕は消えない。力の差を痛感していると、昼間の試合が――東郷の姿が重なる。
現実で孤高の強者に退屈させてしまった。
ゲームの世界ですら同じことを繰り返すのかと思うと、腹の底が熱を帯びる。
嫌だ。また熱のない目で見られるのは。
腰を落として力を乗せようとしたその時、俺の周りに赤く揺らめく微光が立ち昇った。
「そのまま打ち込め、誠人。受け止めてやる」
華候焔が愉快げな笑みを浮かべる。
これは彼を喜ばせるものなのかと思うと、俺の意思を無視して動こうとする体を恐れず、身を委ねることができた。
初めて扱うものなのに、俺は竹砕棍を縦横無尽に振り回す。
そして周りの微光は火の輪を作り出し、一帯に広がり、そして――。
「はぁっ!」
掛け声とともに華候焔へ棍を振り下ろせば、炎となって彼を渦巻き、火柱となって高く昇る。
俺を巻き込みそうな勢いに思わず飛び引いて離れ、目の前の光景に呆然とする。
これは一体……華候焔は大丈夫なのか!?
慌てて我に返って駆け寄ろうとしたその時、
「この程度で燃やされてたまるか……っ」
ブゥゥンッ! と華候焔の棒が勢いよく振られる。
炎を切ったかと思えば、滑らかに棒を回して先端に火を集めていく。
そしてあらかたまとめてしまうと、斜め下へと棒を払う。すると、プスプスプス……。火は消え、小さく細い煙が立ち昇るだけとなった。
「やるじゃねえか誠人。最初から技を出せるなんて大したものだ!」
「わ、技? 今のやつが?」
「本当はしばらく鍛錬したら使えるようになるものだ。元々の強さもあるが、素質があったみたいだな。ほら、もう少し相手してやる。経験を重ねると練度が上がって、自由に技が出せるようになるぞ。もっと打ち込んで来い」
華候焔の声が楽しそうだ。少なくとも飽きたものではない。
俺のような初心者で技が出せたのた。華候焔も何かしらの技が使えるのだろうが、使う気配は一切ない。やはり本気を出す相手とは認識されていないようだ。
それでも彼の刺激にはなっているという手応えに胸が躍ってしまう。
俺は返事をする時間も惜しくて、華候焔へ棍を打ち込み、弾き返されることを繰り返す。
汗ばみ、疲れを覚えながらも繰り返し打ち込み続けていると、手を止めずに華候焔が話しかけてきた。
「下手な在野武将よりも強いな。体力もある。これなら攻めに出ることもできそうだ。誠人、提案なんだが――先手を打たないか?」
「先手を?」
「わざわざ攻められるのを待たなくても、こっちから仕掛けてしまえばいい。勝算は十分にある。だから俺の話に乗れ」
――ガッ!
強く棒をぶつけ、力を拮抗させながら華候焔が告げる。
「早く勝たせろ。勝ちが見えたのに待つのは退屈だ」
情欲とは違う熱が華候焔の瞳に宿る。
この目を興醒めさせたくなくて、俺は「分かった」と即答していた。
だが刹那、目が据わる。
素早く棒を構えたと思えば、小さく一歩後退しながら俺の棍を迎える。
ガッ! 衝撃が手に伝わり、骨まで響く。
力を加えて押し込もうとしてもビクともしない。
仕切り直しを狙って俺は華候焔から飛び引き、再度構えて真っ直ぐに突く。
ビュッと風を切るが、華候焔はわずかに身を捻って避けてしまう。
二度、三度と立て続けに突いてみるが、予め分かっていたかのように回避される。
華候焔から余裕は消えない。力の差を痛感していると、昼間の試合が――東郷の姿が重なる。
現実で孤高の強者に退屈させてしまった。
ゲームの世界ですら同じことを繰り返すのかと思うと、腹の底が熱を帯びる。
嫌だ。また熱のない目で見られるのは。
腰を落として力を乗せようとしたその時、俺の周りに赤く揺らめく微光が立ち昇った。
「そのまま打ち込め、誠人。受け止めてやる」
華候焔が愉快げな笑みを浮かべる。
これは彼を喜ばせるものなのかと思うと、俺の意思を無視して動こうとする体を恐れず、身を委ねることができた。
初めて扱うものなのに、俺は竹砕棍を縦横無尽に振り回す。
そして周りの微光は火の輪を作り出し、一帯に広がり、そして――。
「はぁっ!」
掛け声とともに華候焔へ棍を振り下ろせば、炎となって彼を渦巻き、火柱となって高く昇る。
俺を巻き込みそうな勢いに思わず飛び引いて離れ、目の前の光景に呆然とする。
これは一体……華候焔は大丈夫なのか!?
慌てて我に返って駆け寄ろうとしたその時、
「この程度で燃やされてたまるか……っ」
ブゥゥンッ! と華候焔の棒が勢いよく振られる。
炎を切ったかと思えば、滑らかに棒を回して先端に火を集めていく。
そしてあらかたまとめてしまうと、斜め下へと棒を払う。すると、プスプスプス……。火は消え、小さく細い煙が立ち昇るだけとなった。
「やるじゃねえか誠人。最初から技を出せるなんて大したものだ!」
「わ、技? 今のやつが?」
「本当はしばらく鍛錬したら使えるようになるものだ。元々の強さもあるが、素質があったみたいだな。ほら、もう少し相手してやる。経験を重ねると練度が上がって、自由に技が出せるようになるぞ。もっと打ち込んで来い」
華候焔の声が楽しそうだ。少なくとも飽きたものではない。
俺のような初心者で技が出せたのた。華候焔も何かしらの技が使えるのだろうが、使う気配は一切ない。やはり本気を出す相手とは認識されていないようだ。
それでも彼の刺激にはなっているという手応えに胸が躍ってしまう。
俺は返事をする時間も惜しくて、華候焔へ棍を打ち込み、弾き返されることを繰り返す。
汗ばみ、疲れを覚えながらも繰り返し打ち込み続けていると、手を止めずに華候焔が話しかけてきた。
「下手な在野武将よりも強いな。体力もある。これなら攻めに出ることもできそうだ。誠人、提案なんだが――先手を打たないか?」
「先手を?」
「わざわざ攻められるのを待たなくても、こっちから仕掛けてしまえばいい。勝算は十分にある。だから俺の話に乗れ」
――ガッ!
強く棒をぶつけ、力を拮抗させながら華候焔が告げる。
「早く勝たせろ。勝ちが見えたのに待つのは退屈だ」
情欲とは違う熱が華候焔の瞳に宿る。
この目を興醒めさせたくなくて、俺は「分かった」と即答していた。
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