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一話 『至高英雄』に強さを求め
VRゲーム『至高英雄』について
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馬のいななきを合図に、騎馬隊がぶつかり合う。
兵士たちが競り合う中で武将と思われる二人が、必死の形相で剣を振るい、受け止め、相手に負けまいと挑み続ける。
ゲーム映像というより、リアル過ぎてもはや映画だ。さらに言えば緊迫感があり過ぎて作り物とは思えない。あまりに生々しく、映像から戦いの熱気が伝わってくる。
俺が手に汗を滲ませていると、白澤はテンポよく話し出す。
「ここは群雄割拠する、血沸き肉躍る戦国の世。何百年も続く戦いに人々は疲れ果て、全土を統一し、平和に治める英雄の誕生を望んでいる――というのが設定ですー」
「……設定……ここまでリアルなのに、そんな言い方をするのは無粋というか、所詮は作り物だと興ざめする気が……」
「りある過ぎるからこそですよー。ここはげぇむの世界だと忘れないために、敢えて言ってるんですよー。ワタシ、あったかいでしょー? ここに出てくる人たち、みーんな触ればあったかいし、戦えば血は流すし、痛みもあるんですよー。でも作り物……誠人サマも忘れないで下さいねー」
念を押さなくても、白澤が目の前にいれば忘れないと思うが……。
どう見ても現実にはあり得ない生物。白澤が常に視界に入ればそれでいいような気がする。
胸をモヤモヤとさせる俺をよそに、白澤は説明を続ける。
「基本はよくある戦国しみゅれーしょんげぇむと同じように、国を治め、武将や兵を集めて錬成して、領土拡大をしていけばおっけーですー。何をすれば良いかはワタシが相談に乗りますし、知力の高い将を軍師にして意見をもらうのもいいですよー」
「分かった。最初は頼りにさせてもらう」
「任せて下さいー、一番最適なものをお伝えしますねー。他にも、自らの手で武将を作り上げる育成しすてむや、一武将として直接戦闘に参加したり、一騎討ちで敵将と熱い戦いを繰り広げる武将もーどもありますので、誠人サマのやりたいようにやって下さいー」
こんなリアルなゲームの一騎討ちなら、確かに勝負度胸がつきそうだ。
内心このゲームを勧めてくれた坪田に感謝をしていると、
「それにしても、誠人サマはよほど腕に覚えがあるのですねー。こんな末期の場でげぇむを始めようだなんてー」
「どういう意味だ?」
「多人数参加型のげぇむって人が増えてげぇむが進んだら、また新しいさーばーを作って新規の人が馴染みやすいように分けていくものじゃないですかー。新規さんが熟した場に入ろうものなら、絶好の獲物ですからねー。一応新規者をすぐ狙えないようにはなってますけど、げぇむ時間で七十二時間。それを過ぎたら攻め込み解禁になりますからー」
……待て。つまりゲームを始めた初日で滅亡することになるのか?
唖然となる俺へ、白澤がさらに追い打ちをかけてくる。
「ちなみに、誠人サマがげぇむに入った瞬間から、近くの領主が目ざとく気づいて出兵の指示を出しちゃいましたよー。時間がきたら即戦闘開始ですから、そのつもりでー」
「い、いきなりなのか……っ?!」
「なお敗者になった場合は、勝った者に逆らえなくなりますー。何をされても文句は言えない奴隷状態になっちゃいますー」
「なっ……!」
「あとげぇむから一度抜けるためには、最低一回は戦をして勝たないといけませんー。つまり負けちゃったら、主人になった人が戦をして勝つまで抜けられませんー。中にはわざと戦をせずに奴隷イジメを楽しむ領主もいるので、負けると地獄を見ますよー」
「待ってくれ。ゲームを立ち上げても、サーバー選択画面は出なかったんだが……」
「あー、事前予約を入れられちゃったんですねー。いるんですよー、奴隷を増やすために新規の人を既存さーばーに誘導して、ちゃちゃっと負かして奴隷にしちゃう人が。騙されちゃったんですねー誠人サマ。お可哀そうにー」
兵士たちが競り合う中で武将と思われる二人が、必死の形相で剣を振るい、受け止め、相手に負けまいと挑み続ける。
ゲーム映像というより、リアル過ぎてもはや映画だ。さらに言えば緊迫感があり過ぎて作り物とは思えない。あまりに生々しく、映像から戦いの熱気が伝わってくる。
俺が手に汗を滲ませていると、白澤はテンポよく話し出す。
「ここは群雄割拠する、血沸き肉躍る戦国の世。何百年も続く戦いに人々は疲れ果て、全土を統一し、平和に治める英雄の誕生を望んでいる――というのが設定ですー」
「……設定……ここまでリアルなのに、そんな言い方をするのは無粋というか、所詮は作り物だと興ざめする気が……」
「りある過ぎるからこそですよー。ここはげぇむの世界だと忘れないために、敢えて言ってるんですよー。ワタシ、あったかいでしょー? ここに出てくる人たち、みーんな触ればあったかいし、戦えば血は流すし、痛みもあるんですよー。でも作り物……誠人サマも忘れないで下さいねー」
念を押さなくても、白澤が目の前にいれば忘れないと思うが……。
どう見ても現実にはあり得ない生物。白澤が常に視界に入ればそれでいいような気がする。
胸をモヤモヤとさせる俺をよそに、白澤は説明を続ける。
「基本はよくある戦国しみゅれーしょんげぇむと同じように、国を治め、武将や兵を集めて錬成して、領土拡大をしていけばおっけーですー。何をすれば良いかはワタシが相談に乗りますし、知力の高い将を軍師にして意見をもらうのもいいですよー」
「分かった。最初は頼りにさせてもらう」
「任せて下さいー、一番最適なものをお伝えしますねー。他にも、自らの手で武将を作り上げる育成しすてむや、一武将として直接戦闘に参加したり、一騎討ちで敵将と熱い戦いを繰り広げる武将もーどもありますので、誠人サマのやりたいようにやって下さいー」
こんなリアルなゲームの一騎討ちなら、確かに勝負度胸がつきそうだ。
内心このゲームを勧めてくれた坪田に感謝をしていると、
「それにしても、誠人サマはよほど腕に覚えがあるのですねー。こんな末期の場でげぇむを始めようだなんてー」
「どういう意味だ?」
「多人数参加型のげぇむって人が増えてげぇむが進んだら、また新しいさーばーを作って新規の人が馴染みやすいように分けていくものじゃないですかー。新規さんが熟した場に入ろうものなら、絶好の獲物ですからねー。一応新規者をすぐ狙えないようにはなってますけど、げぇむ時間で七十二時間。それを過ぎたら攻め込み解禁になりますからー」
……待て。つまりゲームを始めた初日で滅亡することになるのか?
唖然となる俺へ、白澤がさらに追い打ちをかけてくる。
「ちなみに、誠人サマがげぇむに入った瞬間から、近くの領主が目ざとく気づいて出兵の指示を出しちゃいましたよー。時間がきたら即戦闘開始ですから、そのつもりでー」
「い、いきなりなのか……っ?!」
「なお敗者になった場合は、勝った者に逆らえなくなりますー。何をされても文句は言えない奴隷状態になっちゃいますー」
「なっ……!」
「あとげぇむから一度抜けるためには、最低一回は戦をして勝たないといけませんー。つまり負けちゃったら、主人になった人が戦をして勝つまで抜けられませんー。中にはわざと戦をせずに奴隷イジメを楽しむ領主もいるので、負けると地獄を見ますよー」
「待ってくれ。ゲームを立ち上げても、サーバー選択画面は出なかったんだが……」
「あー、事前予約を入れられちゃったんですねー。いるんですよー、奴隷を増やすために新規の人を既存さーばーに誘導して、ちゃちゃっと負かして奴隷にしちゃう人が。騙されちゃったんですねー誠人サマ。お可哀そうにー」
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