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三章 聖石を求めて
容赦ない戦いぶりの理由
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◇ ◇ ◇
聖石を求めてオレたちは旅を続ける。
一つ目の山を越え、二つ目の山を登り始めたんだが――。
オレは今、目の前の光景に軽く引いていた。
(うわぁ……)
クウガを呪った魔物・サダナックがいる所に近づいているせいか、魔獣の出現率が高くなっている。
それは別にいい。むしろ大歓迎だ。だって思いっきり暴れられるし。バトル最高!
だから魔獣が現れたら真っ先にオレが戦いたい。全力で拳を叩きつけたい。
ぶっちゃけオレは暴れたいんだ。ふざけた状況――淫紋のせいで抱かれないといけない体になって――が続いて、ストレスは溜まりまくっているんだ。
なのに魔獣の気配がした瞬間、
「はぁぁぁぁっ!」
クウガがいち早く反応して魔獣たちに詰め寄り、剣で鮮やかな一閃。
ちくしょう、腹立たしいほどカッコいい。憧れのファンタジーRPGを地で行きやがる。
そしてオレの後方から現れた魔獣には、
「ルカ兄の手を煩わせる間でもない……っ!」
歯を剥き出しにしながら、アグードが荒々しく素手で魔獣を倒していく。
あれ? お前、確かオレよりも動きは遅くなかったか? 身長も筋肉も力もお前のほうが上なのに、本気出したら速さも上なのか!?
オレたちが本気を出せば、そこらの獣がちょっと強くなったぐらいの魔獣なんて楽勝で倒せる。
でもな、格下に全力出すってどうなんだよ。
今オレの目の前で繰り広げられているのは、RPGのスタート地点に出てくる最弱ザコ魔物に最終奥義を全力でブチかますという、いじめプレイだ。しかも1匹ずつ。
ここまでやられると戦う気が萎える。魔獣が不憫でたまらない。
あまりの戦いっぷりに一帯の木々は何本も倒れるし、茂みはキレイに真っすぐカットされるし……もうバッタバタだ。なんて見事な森林破壊。
魔獣の気配が消えて――たぶん殲滅した――ひと息つくクウガとアグードに、オレは口端を引きつらせた。
「お前らなあ……なんで今日はそんなに容赦ないんだよ。弱いもんイジメするなよ。あと森を荒らすな。一応エルフって森の守護者なんだぞ、アグード? あと騎士道ってこんなに野性味溢れるもんだったか、クウガ?」
オレの言葉に二人は顔をしかめる。しかし各々に首を横に振る。
「ルカ兄の言うことは分かる。でも……」
「ああ、こうしないと……」
なぜか二人して顔を見合わせ、視線だけで意思疎通して頷く。
お前らこんなに息ピッタリなんて、ちょっと気味が悪いんだけど。
ますます引いてしまうオレに、二人が目を向けてくる。
――それはもうギラついて、今にもしゃぶりつきたいですと言わんばかりの獣の目だった。
「今すぐルカ兄を押し倒して抱き潰したくなるから」
「さすがに呪いを無視してルカを抱き続けるのは駄目だろう」
オレへの欲情を少しでも紛らわせるための魔獣いじめ。
一晩かけて二人ともオレを抱きまくったのに、前の日よりも性欲が高まるってどうなんだよ……。
早くオレの淫紋をどうにかしないと、三人で腹上死する未来しか見えない。
二人の努力を知って、オレは素直に「それは、しょうがないな」と頷いて先を進むことしかできなかった。
聖石を求めてオレたちは旅を続ける。
一つ目の山を越え、二つ目の山を登り始めたんだが――。
オレは今、目の前の光景に軽く引いていた。
(うわぁ……)
クウガを呪った魔物・サダナックがいる所に近づいているせいか、魔獣の出現率が高くなっている。
それは別にいい。むしろ大歓迎だ。だって思いっきり暴れられるし。バトル最高!
だから魔獣が現れたら真っ先にオレが戦いたい。全力で拳を叩きつけたい。
ぶっちゃけオレは暴れたいんだ。ふざけた状況――淫紋のせいで抱かれないといけない体になって――が続いて、ストレスは溜まりまくっているんだ。
なのに魔獣の気配がした瞬間、
「はぁぁぁぁっ!」
クウガがいち早く反応して魔獣たちに詰め寄り、剣で鮮やかな一閃。
ちくしょう、腹立たしいほどカッコいい。憧れのファンタジーRPGを地で行きやがる。
そしてオレの後方から現れた魔獣には、
「ルカ兄の手を煩わせる間でもない……っ!」
歯を剥き出しにしながら、アグードが荒々しく素手で魔獣を倒していく。
あれ? お前、確かオレよりも動きは遅くなかったか? 身長も筋肉も力もお前のほうが上なのに、本気出したら速さも上なのか!?
オレたちが本気を出せば、そこらの獣がちょっと強くなったぐらいの魔獣なんて楽勝で倒せる。
でもな、格下に全力出すってどうなんだよ。
今オレの目の前で繰り広げられているのは、RPGのスタート地点に出てくる最弱ザコ魔物に最終奥義を全力でブチかますという、いじめプレイだ。しかも1匹ずつ。
ここまでやられると戦う気が萎える。魔獣が不憫でたまらない。
あまりの戦いっぷりに一帯の木々は何本も倒れるし、茂みはキレイに真っすぐカットされるし……もうバッタバタだ。なんて見事な森林破壊。
魔獣の気配が消えて――たぶん殲滅した――ひと息つくクウガとアグードに、オレは口端を引きつらせた。
「お前らなあ……なんで今日はそんなに容赦ないんだよ。弱いもんイジメするなよ。あと森を荒らすな。一応エルフって森の守護者なんだぞ、アグード? あと騎士道ってこんなに野性味溢れるもんだったか、クウガ?」
オレの言葉に二人は顔をしかめる。しかし各々に首を横に振る。
「ルカ兄の言うことは分かる。でも……」
「ああ、こうしないと……」
なぜか二人して顔を見合わせ、視線だけで意思疎通して頷く。
お前らこんなに息ピッタリなんて、ちょっと気味が悪いんだけど。
ますます引いてしまうオレに、二人が目を向けてくる。
――それはもうギラついて、今にもしゃぶりつきたいですと言わんばかりの獣の目だった。
「今すぐルカ兄を押し倒して抱き潰したくなるから」
「さすがに呪いを無視してルカを抱き続けるのは駄目だろう」
オレへの欲情を少しでも紛らわせるための魔獣いじめ。
一晩かけて二人ともオレを抱きまくったのに、前の日よりも性欲が高まるってどうなんだよ……。
早くオレの淫紋をどうにかしないと、三人で腹上死する未来しか見えない。
二人の努力を知って、オレは素直に「それは、しょうがないな」と頷いて先を進むことしかできなかった。
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