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一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~
思わず素が出てしまうもので
しおりを挟む空が明るい内はずっと足を動かし続けて、日が沈んで辺りが暗くなる頃に薪を集めて火をおこし、野宿の準備をした。
食事は現地調達。適当に食べられる木の実を採って、近くに飛んできた山鳥を弓矢で射れば事足りる。
弓は持参したけど、矢はそこらに落ちている枯れ枝で十分。真っすぐ飛ばないのを見越して射るのがコツだ。あとエルフだから魔力が多い。ちょっと枝に魔力を流して射ると、鋭い矢じりがあるような威力を出すことができた。
三人とも野宿経験があるから、それはもうスムーズに準備ができた。
しかしオレにとっては準備よりも、焚火を囲んで過ごすひと時が厄介だった。
「ルカ、食欲がないのか? 君の体格ならもっと肉を食べたほうがいいのでは?」
焼いた山鳥の脚を食べ終えた時、焚火を挟んだ向かい側からクウガが声をかけてくる。
口を出さずにはいられないオカン的性格、転生しても変わらねぇな、オイ。
腹の中をムカムカさせながら、オレは余所者用の対応を貫く。
「ご安心を。我々エルフの体は人間とは違うので、これぐらいの量で十分なのです」
山鳥の脚は、鶏の手羽元くらいの大きさ。確かに人間の成人男性なら少ない量だ。
でもエルフの体のせいなのか、山鳥が栄養豊富なのか、食べると腹がすぐ満たされる。無理して食べると筋肉が付き過ぎて、ガチムチなゴリマッチョなエルフになってしまう。
ガチムチ。興味はあるんだけどな。
でもエルフの俊敏さが活かせなくなるんだよなあ……と考えていると、オレの隣で二足目を食べ始めたアグードが口を開いた。
「えっ? 一個だと足りないと思うけど」
「アグードはオレよりも体が大きいからな。でも気をつけろよ。エルフの体はあんまり肉食に向いていないみたいだから、食べ過ぎると腹を壊すぞ。本当ならチーズとか豆のほうが体に合うからな」
「そうか。ルカ兄と一緒に食べると、いつも俺に多く分けてくれたのはそのためだったのか……」
なぜ肩を落としているんだアグード?
内心首を傾げながら、バシッとアグードの背中を叩いてやる。
「可愛い弟分のために決まってるだろ。他のヤツが相手なら、一緒に食わずに他の獣に分けてるから」
「ルカ兄……」
今度は感激しているのか、アグードは目を潤ませながらオレを熱く見てくる。なんというか感情が忙しいヤツだ。
慣れたやり取りをしていると、クウガから小さく笑う音がした。
「フッ……それが君の素なのだな、ルカ」
指摘されて思わず大きくハッとなってしまう。
やめろ、そんな『ヤンチャな子ほど可愛い』的な余裕と慈愛に溢れたオカン的な目でオレを見るんじゃない!
一気に顔が熱くなってしまい、オレは動揺でクウガに言い返しそうになる。
その時――ビクンッ。クウガの体が大きく跳ねた。
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