その腐れ縁、異世界転生でリセットOK?~縁は続くよ、どこまでも~

天岸 あおい

文字の大きさ
上 下
9 / 39
一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~

ビバ、よそよそしさ

しおりを挟む
   ◇ ◇ ◇

 話が決まってからオレたちはバタバタと出立の準備をして、翌朝には里を立った。

 エルフの里は大森林の奥深い所にあるから、そこから出るっていうだけでも一苦労だ。数日は野宿確定。ああ、なんて面倒なんだ。

 しかも転生したクウガと旅するなんて、最悪としか言えない。
 オレたちが犬猿の仲がというのはみんなが知っていたのに、修学旅行は中学も高校もクウガと同じ班にさせられたことを思い出してしまう。

 ……確かに、いつも悪ぶって反発して扱いにくいヤツだったのは認める。
 だからといって、クラス委員長のクウガにオレを押し付けるのはどうかと思う。

 それで妙な使命感でも覚えてしまったんだろう。旅行中はいつにも増してクウガの小言が多かったし、四六時中ずっとオレから離れなかった。監視されて楽しめるはずもないし、寝ても休めなかった。

 今回の旅は数日で済むものじゃない。
 長々とクウガの小言監視付きだなんて、考えるだけでも最悪――。

「ルカ、危ない」

 あれこれ考えながら森を歩いていたオレの腕を、不意にクウガがグイッと引っ張る。

 我に返ってみれば、地面が大きな段差になっている所を危うく踏み外すところだった。

「す、すみません、クウガ様……助かり、ました」

 条件反射で反発したくなるのを我慢して、オレがぎこちなく礼を告げる。
 フッ、とクウガが表情を緩めた。

「そんなにかしこまらないで欲しい。これから長い道中になる。どうか無理しないでくれ」

 お前、そんなこと言って、オレが素の態度見せた途端に「自重しろ」って言い出す気がろ? 思ってたのと違うって文句つけるんだろ?

 本性を丸出しにして溜まりに溜まった文句をぶつけてやりたかったが、転生前よりも年を取ったせいか、しっかりブレーキをかけられる。

 オレ、今は二十六歳。転生前の中身のままでも、ちゃんと大人になってるのって妙な気分だ。

「ありがとうございます、クウガ。そう言って頂けると気が楽になります」

 敬称だけ外して、丁寧な外面は外さずにオレは微笑む。
 下手に前世のオレっぽさを出したら、そのせいで記憶を思い出して口やかましくなるかもしれないし。

 今のままなら、まだクウガにそっくりな別人だと割り切れる。ビバ、よそよそしさ!

 オレがやんわりとクウガの手を退かして距離を取ると、先頭を歩いていたアグードがわざわざ引き返してオレの元へ駆けてきた。

「ルカ兄、大丈夫?」

「問題ない。ちょっと足を滑らせかけたってぐらいだし。ケガしても回復魔法ですぐ治るんだけどな」

「でも転倒した時の痛みはあるから……ルカ兄にそんな思いはして欲しくない!」

 やけにアグードが拳を握って力説する。コイツのルカ兄至上主義っぷりは、たまについていけなくなる。弟分のはずなのに、オカン成分が入ってやがる。兄貴分を過保護にするなよなあ、まったく。

 話しながら歩き出すと、少し離れてクウガの足音が聞こえてくる。

 いつもアグードと二人で森にいることが多いから、足音が多いことに少し違和感を覚えてしまう。

 きっと旅立って間もなくだから気になるんだろう。数日も立たない内に慣れるとは思う。

 ただクウガの気配に慣れるほど、腐れ縁が復活して離れられなくなるんじゃないかって気がしてならない。

 この距離感を忘れないようにしないとな。
 オレは敢えてアグードに寄りながら森を歩いていった。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々
BL
子供を庇って死んでしまった神居都は、死後の世界で自分の子供が命を狙われている事を知る。その命を狙うのは異世界の神だった。子供を守る為、転生を求める神々の試練に挑む。 しかし、まさか転生先が男しかいない獣人世界とは知らず、男に転生するのか女で転生するのか。放り出された異世界で神様と崇められながら、ハーレムルートで新たな人生を歩み出す。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『狼と人間、そして半獣の』 メインのお話が完結し、二人の子供が生まれてからの お話を始めました! 転生者の人間と獣人との間に生まれた半獣のクロウが 成長して冒険に出るまでを予定しています。 複雑な設定では無いので、気楽に読んで頂けると 嬉しいです! こちらのお話も、是非 宜しくお願いします!

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生当て馬召喚士が攻め度MAXの白銀騎士に抗えません

雪平@冷淡騎士2nd連載中
BL
不幸体質大学生の青年が転生したのは魔術師ファンタジーBLゲームの世界だった。 当て馬として生まれたからには攻略キャラの恋の後押しをする事にした。 しかし、この世界…何処か可笑しい。 受け主人公が攻めに、攻め攻略キャラが受けになっていた世界だった。 童顔だった主人公は立派な攻めに育っていた。 受け達に愛されている主人公は何故か当て馬に執着している。 傍観者で良かったのに、攻めポジも危ぶまれていく。 究極の鉄壁一途な白銀騎士×転生当て馬召喚士 ゲームを忠実にするためには、絶対に受けとしてときめいてはいけない。 「君といられるなら、俺は邪魔する奴を排除する」 「俺はただの当て馬でいい!」 ※脇CP、リバキャラはいません、メインCPのみです。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

処理中です...