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一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~
転生エルフは細マッチョ
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◇ ◇ ◇
マッスルで生装備な神様のおかげで、オレは異世界へ転生した。
実は剣と魔法の世界に憧れてたオレ。
ゲームは王道RPGが大好きでやり込みまくっていたし、漫画やアニメも異世界ファンタジーが大好物。転生ものは当たり前すぎて、もはや教養。
空雅との腐れ縁を切るための思いつきで言い出した異世界転生だったが、転生してからラッキーだったなと胸を躍らせた。もちろん赤ちゃんの体で、だ。
ぶっちゃけ前世の記憶と精神を持ちながら赤ちゃんやるって、ちょっとキツかった。
だって体は思うように動かないし、飲まされるミルクは味が薄くて不味いし、寝てばかっかりで退屈だし。
その代わり、オレの面倒を見てくれる人――たぶん母親――がスゲー美人で優しくて、目の保養になった。あとオレの顔を見に来る親戚縁者みたいなヤツらも、揃いも揃って美男美女。
そしてある時、気づいてしまった。
家に出入りするヤツら全員、耳が大きくて尖っている。エルフ耳だ。
つまりオレはエルフに転生していた。
――なんでオレ、エルフ?
仲間キャラならいいよ。美人で非力だけど、回復魔法とか弓矢とか使えていいと思う。
でも、自分がなりたいキャラじゃない。オレはカッコいい剣を振り回したり、剣が折れてピンチになっても、実は拳ひとつで切り抜けられるような最強俺TUEEE展開が好きなんだ。
エルフはあくまでゲストキャラ。良くてヒロイン――というのがオレのイメージ。いや、カッコいいエルフで強い主人公もいるけどさ。オカリナ吹いたり、妖精で回復したりする緑の服着たイケメンな有名エルフいるけどさ。でも、エルフって細くて力がつかない設定が多い……。
ああ、オレがセルフエルフで萌えられる人間だったら良かったのに……。
そんなことを考えながら、オレは成長し、エルフらしい容姿になっていった。
薄い金色の艶やかな長髪。
やや吊り上がった、切れ長の涼しげな目。
神秘的で透明感のある、深い緑の瞳。
その気になって着飾れば、女性よりも女性らしくなりそうな麗しい顔。
滑らかで透き通るように白い肌。
――ギュッと筋肉を凝縮した、ボクサー体形の細マッチョ。
顔が強そうに見えないのは百歩譲って我慢できるが、筋肉だけは譲れなかった。
エルフは素早さに優れた種族だから、ガチムチ筋肉で体を重くするよりも、瞬発力に長けたアウトボクサー的な筋肉が適している。そう判断して、オレは物心がついた頃から体づくりをした。
幸い、オレは肉体改造が趣味だったから、筋肉を自在につけられる。
エルフの里は森の中だから、トレーニングは簡単にできた。でも問題は食事。彼らが好む食事は筋肉が付きにくい食事ばかりで、肉や卵を積極的に食べたがるオレは里の異端児だった。
筋肉がつく食事をしていれば、当然筋肉が身についてく。
明らかに他のエルフたちとは違う体つきになっていくオレを見て、麗しいエルフの両親は首を傾げるばかりだった。
「どうしてこの子、こんなに筋肉の付き方が良いのかしら?」
「よく外で遊んでいるからなんだろうけど……本当にこの子、俺の子?」
「正真正銘、貴方の子です。二度と言わないで下さい」
オレのせいで夫婦の間が危うくなることもあったが、まあ問題はなかった。
エルフに学校はないし、外で遊べば経験値が溜まるばかりだし、体を動かしてやれることを増やせば生きていける――やっぱり前よりも、こっちのほうが性に合っている。
筋肉がつくようになってからは、オレは自分がエルフということを受け入れられたし、保守的な里の生活も楽しんで送ることができた。
この転生に不満はまったくなかった。
ただひとつだけ、引っかかっていることがある。それは――。
「ルカ、森の奥へ入るなら、薬草を採ってきて」
なぜか転生後の名前が、前と同じ呼び方。
転生前の縁が切れていないんじゃないか? と一抹の不満が胸に入り込む。
腐れ縁まで切れてなかったりして……なんて勘弁してくれと思いながら、空雅と無縁の二十六年間をオレは伸び伸びと過ごした。
マッスルで生装備な神様のおかげで、オレは異世界へ転生した。
実は剣と魔法の世界に憧れてたオレ。
ゲームは王道RPGが大好きでやり込みまくっていたし、漫画やアニメも異世界ファンタジーが大好物。転生ものは当たり前すぎて、もはや教養。
空雅との腐れ縁を切るための思いつきで言い出した異世界転生だったが、転生してからラッキーだったなと胸を躍らせた。もちろん赤ちゃんの体で、だ。
ぶっちゃけ前世の記憶と精神を持ちながら赤ちゃんやるって、ちょっとキツかった。
だって体は思うように動かないし、飲まされるミルクは味が薄くて不味いし、寝てばかっかりで退屈だし。
その代わり、オレの面倒を見てくれる人――たぶん母親――がスゲー美人で優しくて、目の保養になった。あとオレの顔を見に来る親戚縁者みたいなヤツらも、揃いも揃って美男美女。
そしてある時、気づいてしまった。
家に出入りするヤツら全員、耳が大きくて尖っている。エルフ耳だ。
つまりオレはエルフに転生していた。
――なんでオレ、エルフ?
仲間キャラならいいよ。美人で非力だけど、回復魔法とか弓矢とか使えていいと思う。
でも、自分がなりたいキャラじゃない。オレはカッコいい剣を振り回したり、剣が折れてピンチになっても、実は拳ひとつで切り抜けられるような最強俺TUEEE展開が好きなんだ。
エルフはあくまでゲストキャラ。良くてヒロイン――というのがオレのイメージ。いや、カッコいいエルフで強い主人公もいるけどさ。オカリナ吹いたり、妖精で回復したりする緑の服着たイケメンな有名エルフいるけどさ。でも、エルフって細くて力がつかない設定が多い……。
ああ、オレがセルフエルフで萌えられる人間だったら良かったのに……。
そんなことを考えながら、オレは成長し、エルフらしい容姿になっていった。
薄い金色の艶やかな長髪。
やや吊り上がった、切れ長の涼しげな目。
神秘的で透明感のある、深い緑の瞳。
その気になって着飾れば、女性よりも女性らしくなりそうな麗しい顔。
滑らかで透き通るように白い肌。
――ギュッと筋肉を凝縮した、ボクサー体形の細マッチョ。
顔が強そうに見えないのは百歩譲って我慢できるが、筋肉だけは譲れなかった。
エルフは素早さに優れた種族だから、ガチムチ筋肉で体を重くするよりも、瞬発力に長けたアウトボクサー的な筋肉が適している。そう判断して、オレは物心がついた頃から体づくりをした。
幸い、オレは肉体改造が趣味だったから、筋肉を自在につけられる。
エルフの里は森の中だから、トレーニングは簡単にできた。でも問題は食事。彼らが好む食事は筋肉が付きにくい食事ばかりで、肉や卵を積極的に食べたがるオレは里の異端児だった。
筋肉がつく食事をしていれば、当然筋肉が身についてく。
明らかに他のエルフたちとは違う体つきになっていくオレを見て、麗しいエルフの両親は首を傾げるばかりだった。
「どうしてこの子、こんなに筋肉の付き方が良いのかしら?」
「よく外で遊んでいるからなんだろうけど……本当にこの子、俺の子?」
「正真正銘、貴方の子です。二度と言わないで下さい」
オレのせいで夫婦の間が危うくなることもあったが、まあ問題はなかった。
エルフに学校はないし、外で遊べば経験値が溜まるばかりだし、体を動かしてやれることを増やせば生きていける――やっぱり前よりも、こっちのほうが性に合っている。
筋肉がつくようになってからは、オレは自分がエルフということを受け入れられたし、保守的な里の生活も楽しんで送ることができた。
この転生に不満はまったくなかった。
ただひとつだけ、引っかかっていることがある。それは――。
「ルカ、森の奥へ入るなら、薬草を採ってきて」
なぜか転生後の名前が、前と同じ呼び方。
転生前の縁が切れていないんじゃないか? と一抹の不満が胸に入り込む。
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