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VSインキュバス
※エルジュの本音
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◆ ◆ ◆
「もう起きてるかなーグリオス……あ、まだ寝てる」
外出から戻ってきたエルジュは、部屋へ入って真っ先にグリオスの様子をうかがう。
仰向いて目を閉じたまま。身じろぎすらしない。
ベッドに腰かけて完全に寝入っているグリオスを見下ろし、エルジュは小さく息をつく。
「さすがに今回は無理させちゃったなあ。でもさ、仕方ないよ……素のままのグリオスを抱けるなんて、初めてだったんだし……」
ボソボソと小声で呟きながら、グリオスの頬を軽くつつく。
巨大ローバーを倒した後、応急処置で森の中で淫らに交わり、宿についた後は本格的にたっぷりと体を繋げて――一度気絶して、目覚めた後からは素のグリオスに戻っていた。
しかし気だるげに見上げてくる顔がいやらしいままで、引き寄せられるように手を伸ばせば、恥じらいを見せながらもよがってくれて、エルジュは嬉々としてグリオスを貪り続けた。
ほんの少しだけ手応えが得られた。村を旅立って四年経ってようやく――。
エルジュの顔に苦笑が浮かぶ。
「……気づいてよ、グリオス。オレがどうして魔物のワナにかかりたがってるか……もうハッキリと言っちゃおうか。こんなにヤってるんだもの。オレから離れられなくなってるだろうし」
自分でも自覚できるほどの容姿と力を授かり、その気になればどんな美男美女でも手に入れられるという確信はある。
だが自分から本気で誰かを求めたいとは思わない――たった一人を除いては。
「鈍感なのか、気づいていて言わないだけなのか……ズルいもんねーグリオスは」
ゆっくり顔を近づけながら、エルジュはそっと囁く。
「大好き、グリオス。ずっとオレだけのために居てよ」
力があると分かっても、勇者と崇められても、魔物のワナに惹かれるフリをしても、危なっかしいからと手を伸ばし、全力で守ってくれるのはグリオスだけ。
この世界の誰もが「エルジュは大丈夫だ」と過信し、縋ろうとする中、グリオスだけがずっと変わらずに人として見てくれる。
好きにならないはずがなかった。
勇者となって旅立った目的も、グリオスの気を引き、仲を深めながら隣を誰かに奪われないため。
湧き上がる性欲もすべてグリオスに向き、身も心もすべて奪いたくてたまらなかった。
だからこそ本音を晒したせいで、グリオスに拒まれて逃げられてしまう可能性が怖くて仕方がない。
誰もグリオスの代わりにはならない。
心から欲しているのは彼だけ。他は何もいらない。どんな富も地位も名誉も興味はない。光の祝福を受けたこの力ですら、グリオスが手に入らないなら不要だと捨てられる。
このままグリオスと真に結ばれたらいいのに――。
未だに勇気が持てず、起きている時に気持ちを伝えられない自分の臆病さを嘲笑してから、エルジュはグリオスの頬を撫でながら呟く。
「ねぇ、グリオス……オレのこと、好き? ちょっとでいいから教えてよ」
まったく期待せず口にした、戯れに切実を紛れ込ませた問いかけ。
かすかにグリオスの唇が動いた。
「……エルジュじゃなきゃ、駄目だ……愛してる……アイツを、裏切れない……」
「もう起きてるかなーグリオス……あ、まだ寝てる」
外出から戻ってきたエルジュは、部屋へ入って真っ先にグリオスの様子をうかがう。
仰向いて目を閉じたまま。身じろぎすらしない。
ベッドに腰かけて完全に寝入っているグリオスを見下ろし、エルジュは小さく息をつく。
「さすがに今回は無理させちゃったなあ。でもさ、仕方ないよ……素のままのグリオスを抱けるなんて、初めてだったんだし……」
ボソボソと小声で呟きながら、グリオスの頬を軽くつつく。
巨大ローバーを倒した後、応急処置で森の中で淫らに交わり、宿についた後は本格的にたっぷりと体を繋げて――一度気絶して、目覚めた後からは素のグリオスに戻っていた。
しかし気だるげに見上げてくる顔がいやらしいままで、引き寄せられるように手を伸ばせば、恥じらいを見せながらもよがってくれて、エルジュは嬉々としてグリオスを貪り続けた。
ほんの少しだけ手応えが得られた。村を旅立って四年経ってようやく――。
エルジュの顔に苦笑が浮かぶ。
「……気づいてよ、グリオス。オレがどうして魔物のワナにかかりたがってるか……もうハッキリと言っちゃおうか。こんなにヤってるんだもの。オレから離れられなくなってるだろうし」
自分でも自覚できるほどの容姿と力を授かり、その気になればどんな美男美女でも手に入れられるという確信はある。
だが自分から本気で誰かを求めたいとは思わない――たった一人を除いては。
「鈍感なのか、気づいていて言わないだけなのか……ズルいもんねーグリオスは」
ゆっくり顔を近づけながら、エルジュはそっと囁く。
「大好き、グリオス。ずっとオレだけのために居てよ」
力があると分かっても、勇者と崇められても、魔物のワナに惹かれるフリをしても、危なっかしいからと手を伸ばし、全力で守ってくれるのはグリオスだけ。
この世界の誰もが「エルジュは大丈夫だ」と過信し、縋ろうとする中、グリオスだけがずっと変わらずに人として見てくれる。
好きにならないはずがなかった。
勇者となって旅立った目的も、グリオスの気を引き、仲を深めながら隣を誰かに奪われないため。
湧き上がる性欲もすべてグリオスに向き、身も心もすべて奪いたくてたまらなかった。
だからこそ本音を晒したせいで、グリオスに拒まれて逃げられてしまう可能性が怖くて仕方がない。
誰もグリオスの代わりにはならない。
心から欲しているのは彼だけ。他は何もいらない。どんな富も地位も名誉も興味はない。光の祝福を受けたこの力ですら、グリオスが手に入らないなら不要だと捨てられる。
このままグリオスと真に結ばれたらいいのに――。
未だに勇気が持てず、起きている時に気持ちを伝えられない自分の臆病さを嘲笑してから、エルジュはグリオスの頬を撫でながら呟く。
「ねぇ、グリオス……オレのこと、好き? ちょっとでいいから教えてよ」
まったく期待せず口にした、戯れに切実を紛れ込ませた問いかけ。
かすかにグリオスの唇が動いた。
「……エルジュじゃなきゃ、駄目だ……愛してる……アイツを、裏切れない……」
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