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VS触手の森・特大ローパー
嫌な予感しかしない
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◇ ◇ ◇
「お客さんたち、今から北の森に行くのかい? やめといたほうがいいぞ。あそこは魔物が巣食ってるぞ」
街を経つ前に宿の食堂で朝食を摂っている時、鼻下に髭を蓄えた店主がエルジュたちに「どこへ行くんだい?」と尋ねてきた。人当たりの良いエルジュが愛想よく「北の森へ行くんだ」と答えると、店主は顔をしかめ、小首を振りながら忠告してくれた。
普通なら魔物がいると聞いて青ざめるのだろうが、エルジュはむしろ瞳を嬉々として輝かせた。
「ホント? ねえ、どんな魔物がいるか知ってる?」
「他のお客さんから聞いた話だが、本体は分からないが、木々の至る所にタコみたいな触手が絡んでいて、人が通りかかったら音もなく近づいて――ぎゅるんっ、と巻き付いて森の奥へ引きずり込んでしまうそうだ。そうなった者は二度と森から出られないらしい」
焼き立てのパンを千切って食しながらグリオスは話に耳を傾ける。
北の森は魔王の根城へ向かうための最短の道。迂回すればかなりの日数を要する。
日にちをかければかけるほど、魔物と遭遇する機会が増える。そうなればエルジュが見え透いた魔物のワナにかかりたがり、自分が辱めを受けることになる。
強い魔物と戦うより、弱い魔物と連戦を重ねるほうがグリオスにはしんどかった。
それにエルジュの強さは天井知らず。どれだけの強敵でも、彼の前では最弱のスライムと大差はない。
選ぶ道は一択だとグリオスは結論を崩さない。ただ、
「触手の森かぁー。なんだか楽しそうな響き……行くしかないよねーグリオス」
店主がいることも気にせず、エルジュは頬を赤く染めながら悦楽の笑みを浮かべ、隣のグリオスへ流し目を向ける。
明らかに欲情した気配。艶めかしい視線から溢れる色気に店主が見惚れてしまっている。
エルジュの美しさは男女問わずに色を覚えてしまうほど。そこへ誘うような目を向けられたなら、他の者ならその色香に抗えず関係を持とうとしてしまう。
しかし長年エルジュとともに居続けているグリオスには、まったく効かなかった。
心はビクともせず、呆れた息を吐き出してからエルジュを睨む。
「確かに行くしかないが、余計なことはするなよ? 寄り道せずに森を突っ切るぞ」
「分かってるよ、もちろんそのつもり。だけど……森を出た後にご褒美が欲しいなあ。真面目にやった分だけグリオスからご褒美。どう?」
性的な雰囲気を漂わせながらの台詞。エルジュが行為を強請っていることを察した店主は、「き、気を付けてくれよ」と離れてくれた。
思わずカッと顔を赤くしながら、グリオスは小声で怒鳴る。
「人前で堂々と強請るな……っ。お前には恥じらいというものがないのか? 頼むから人目を気にしてくれ」
「はーい、分かりましたー。で、ご褒美くれるの?」
「……森の魔物のワナにかかろうとしなかったら、考えてやる」
「やったぁ! オレ、良い子に我慢する。さっさと森を抜けていっぱいヤろう!」
もう淫らなことしか頭にないエルジュを目の当たりにしながら、グリオスは目を据わらせながら手元のパンを食べるしかなかった。
「お客さんたち、今から北の森に行くのかい? やめといたほうがいいぞ。あそこは魔物が巣食ってるぞ」
街を経つ前に宿の食堂で朝食を摂っている時、鼻下に髭を蓄えた店主がエルジュたちに「どこへ行くんだい?」と尋ねてきた。人当たりの良いエルジュが愛想よく「北の森へ行くんだ」と答えると、店主は顔をしかめ、小首を振りながら忠告してくれた。
普通なら魔物がいると聞いて青ざめるのだろうが、エルジュはむしろ瞳を嬉々として輝かせた。
「ホント? ねえ、どんな魔物がいるか知ってる?」
「他のお客さんから聞いた話だが、本体は分からないが、木々の至る所にタコみたいな触手が絡んでいて、人が通りかかったら音もなく近づいて――ぎゅるんっ、と巻き付いて森の奥へ引きずり込んでしまうそうだ。そうなった者は二度と森から出られないらしい」
焼き立てのパンを千切って食しながらグリオスは話に耳を傾ける。
北の森は魔王の根城へ向かうための最短の道。迂回すればかなりの日数を要する。
日にちをかければかけるほど、魔物と遭遇する機会が増える。そうなればエルジュが見え透いた魔物のワナにかかりたがり、自分が辱めを受けることになる。
強い魔物と戦うより、弱い魔物と連戦を重ねるほうがグリオスにはしんどかった。
それにエルジュの強さは天井知らず。どれだけの強敵でも、彼の前では最弱のスライムと大差はない。
選ぶ道は一択だとグリオスは結論を崩さない。ただ、
「触手の森かぁー。なんだか楽しそうな響き……行くしかないよねーグリオス」
店主がいることも気にせず、エルジュは頬を赤く染めながら悦楽の笑みを浮かべ、隣のグリオスへ流し目を向ける。
明らかに欲情した気配。艶めかしい視線から溢れる色気に店主が見惚れてしまっている。
エルジュの美しさは男女問わずに色を覚えてしまうほど。そこへ誘うような目を向けられたなら、他の者ならその色香に抗えず関係を持とうとしてしまう。
しかし長年エルジュとともに居続けているグリオスには、まったく効かなかった。
心はビクともせず、呆れた息を吐き出してからエルジュを睨む。
「確かに行くしかないが、余計なことはするなよ? 寄り道せずに森を突っ切るぞ」
「分かってるよ、もちろんそのつもり。だけど……森を出た後にご褒美が欲しいなあ。真面目にやった分だけグリオスからご褒美。どう?」
性的な雰囲気を漂わせながらの台詞。エルジュが行為を強請っていることを察した店主は、「き、気を付けてくれよ」と離れてくれた。
思わずカッと顔を赤くしながら、グリオスは小声で怒鳴る。
「人前で堂々と強請るな……っ。お前には恥じらいというものがないのか? 頼むから人目を気にしてくれ」
「はーい、分かりましたー。で、ご褒美くれるの?」
「……森の魔物のワナにかかろうとしなかったら、考えてやる」
「やったぁ! オレ、良い子に我慢する。さっさと森を抜けていっぱいヤろう!」
もう淫らなことしか頭にないエルジュを目の当たりにしながら、グリオスは目を据わらせながら手元のパンを食べるしかなかった。
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