601 / 604
あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです。
PHASE-09
しおりを挟む
「あ、いた!」
うん?
「お! サージャスさん」
「どうも」
ぺこりと一礼。
体を戻したところで鎧に目をやる。
僕が貸し出していることになっているタイラントデスストーカーの外骨格からなる鎧。
ダイアンよって傷をつけられたけど、その部分はタモンさんによって修復されて、ついでに細かな傷も綺麗に消えて新品同様になっていた。
「王都にはまだ滞在するんですか?」
「当分の間、留まります。王様より王都の守護をクエストとして受けたので」
王様自らか。すごいな。流石はこの戦いを終わらせた本物の英雄である。
どこぞの自称英雄である、煙草臭い素人とは天壌の差だ。
「離れると不安になるもんな」
いたずらじみた笑みでそう言いながら、手ぬぐいを首にかけたドレークさんが登場。
どうやら別の区画で肉体労働に従事していたご様子。どっからどう見ても労働者にしか見えません。
そんなドレークさんの発言に、サージャスさんは赤面だ。
可愛い。チラチラとこちらを見る姿が英雄とはかけ離れた、小動物的な動きで凄く可愛い。
「ありがたく食せ」
ザイオン氏が僕を睨みつつ言ってくる。
サージャスさんが好きだからね~。とられると思ってるのかな。
――――ほほう、トマトスープを鍋で持ってくるとは、作業が始まってからは、各所に露天で石窯なんかが作られている。
この時間帯になると、方々から炊煙が上がってくるけど、そのどれかをお借りしたようだ。
「さあ、勇者が作ったのです。堪能を!」
ズイッと至近。
顔と顔が触れそうで困る……。
目力も凄い。
暑苦しい。ムツ氏ってこんなんだったっけ?
「サンドイッチにスープ。いい組み合わせだ」
よそっていただいたスープをありがたく受け取れば、
「スープにサンドイッチ。ならば、メインの肉もいかがでしょう?」
突如として火の玉が空から一つ降ってくれば、地に触れると火柱となり、中からカグラさんが現れた。
派手な登場である。
王都の行政が現状では整っていないからいいものの、本来だったら完全にアウトですよ。その登場。
違反金を支払ってもらうレベルだ。
「昨晩ケルプト山でとれた、キングボアで作りましたアイスバインです。どうですか?」
「おお、豪快なすね肉」
見るだけで美味いと分かるやつだ。
「急な登場で」
「私もロール殿と同じように食事を食べていただきたくて」
キタコレ! これは完全に僕の天下ですよ。
ごめんなさいね、周囲で男爵様の差し入れ肉を幸せそうに食べてたのに、急に冷めた目で僕を見る皆々様。
「ちょっと! だから勘違いだから姉さん!」
と、ここでシズクさんまで登場だ。
焦っているご様子。どこかでこの状況を見ていたのだろうか?
王都内での空間魔法は原則禁止ですよ。先の戦いでは仕方なかったですけど、今は平時。これは姉妹に違反金をしっかりと払ってもらわないといけないな。
妹さんの場合は、億単位のお金を少額とか思ってるヴィン海域の方だから、痛くもかゆくもないと、容易く反省もせずに支払うんだろうな。
「ピート様。ここは肉より魚介でしょう。今すぐに用意させますから」
いいです……。半漁人の方々が鉄板と思い込んでいる、魚を切ったり食べたりする時の断末魔の後のしてやったりな笑みが凄く不快なので。
本人は違反していることなどまったくもって気にしておらず、僕に新鮮な海鮮を提供しようと躍起になっている。
「ええい、頭が高いわ! 妾のターンじゃ」
人垣をかき分け、倹飩箱を片手に持った魔王さんが登場。
あれ魔王なんだぜ。と言って、誰が信じるだろうか……。
頭には白い三角巾。エプロンも白。
超絶美人が大衆食堂の料理人スタイルで僕の前にて足を止める。
まったくもって魔王の威厳がないよ……。
あるのは態度だけだ。
うん?
「お! サージャスさん」
「どうも」
ぺこりと一礼。
体を戻したところで鎧に目をやる。
僕が貸し出していることになっているタイラントデスストーカーの外骨格からなる鎧。
ダイアンよって傷をつけられたけど、その部分はタモンさんによって修復されて、ついでに細かな傷も綺麗に消えて新品同様になっていた。
「王都にはまだ滞在するんですか?」
「当分の間、留まります。王様より王都の守護をクエストとして受けたので」
王様自らか。すごいな。流石はこの戦いを終わらせた本物の英雄である。
どこぞの自称英雄である、煙草臭い素人とは天壌の差だ。
「離れると不安になるもんな」
いたずらじみた笑みでそう言いながら、手ぬぐいを首にかけたドレークさんが登場。
どうやら別の区画で肉体労働に従事していたご様子。どっからどう見ても労働者にしか見えません。
そんなドレークさんの発言に、サージャスさんは赤面だ。
可愛い。チラチラとこちらを見る姿が英雄とはかけ離れた、小動物的な動きで凄く可愛い。
「ありがたく食せ」
ザイオン氏が僕を睨みつつ言ってくる。
サージャスさんが好きだからね~。とられると思ってるのかな。
――――ほほう、トマトスープを鍋で持ってくるとは、作業が始まってからは、各所に露天で石窯なんかが作られている。
この時間帯になると、方々から炊煙が上がってくるけど、そのどれかをお借りしたようだ。
「さあ、勇者が作ったのです。堪能を!」
ズイッと至近。
顔と顔が触れそうで困る……。
目力も凄い。
暑苦しい。ムツ氏ってこんなんだったっけ?
「サンドイッチにスープ。いい組み合わせだ」
よそっていただいたスープをありがたく受け取れば、
「スープにサンドイッチ。ならば、メインの肉もいかがでしょう?」
突如として火の玉が空から一つ降ってくれば、地に触れると火柱となり、中からカグラさんが現れた。
派手な登場である。
王都の行政が現状では整っていないからいいものの、本来だったら完全にアウトですよ。その登場。
違反金を支払ってもらうレベルだ。
「昨晩ケルプト山でとれた、キングボアで作りましたアイスバインです。どうですか?」
「おお、豪快なすね肉」
見るだけで美味いと分かるやつだ。
「急な登場で」
「私もロール殿と同じように食事を食べていただきたくて」
キタコレ! これは完全に僕の天下ですよ。
ごめんなさいね、周囲で男爵様の差し入れ肉を幸せそうに食べてたのに、急に冷めた目で僕を見る皆々様。
「ちょっと! だから勘違いだから姉さん!」
と、ここでシズクさんまで登場だ。
焦っているご様子。どこかでこの状況を見ていたのだろうか?
王都内での空間魔法は原則禁止ですよ。先の戦いでは仕方なかったですけど、今は平時。これは姉妹に違反金をしっかりと払ってもらわないといけないな。
妹さんの場合は、億単位のお金を少額とか思ってるヴィン海域の方だから、痛くもかゆくもないと、容易く反省もせずに支払うんだろうな。
「ピート様。ここは肉より魚介でしょう。今すぐに用意させますから」
いいです……。半漁人の方々が鉄板と思い込んでいる、魚を切ったり食べたりする時の断末魔の後のしてやったりな笑みが凄く不快なので。
本人は違反していることなどまったくもって気にしておらず、僕に新鮮な海鮮を提供しようと躍起になっている。
「ええい、頭が高いわ! 妾のターンじゃ」
人垣をかき分け、倹飩箱を片手に持った魔王さんが登場。
あれ魔王なんだぜ。と言って、誰が信じるだろうか……。
頭には白い三角巾。エプロンも白。
超絶美人が大衆食堂の料理人スタイルで僕の前にて足を止める。
まったくもって魔王の威厳がないよ……。
あるのは態度だけだ。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
【完結】魔王と間違われて首を落とされた。側近が激おこだけど、どうしたらいい?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
旧題【竜王殺しの勇者は英雄か(仮)】
強大な魔法を操り、人族の領地を奪おうと戦いを挑んだ魔族。彼らの戦いは数十年に及び、ついに人族は聖剣の力を引き出せる勇者を生み出した。人族は決戦兵器として、魔王退治のために勇者を送り込む。勇者は仲間と共に巨大な銀竜を倒すが……彼は魔王ではなかった。
人族と魔族の争いに関わらなかった、圧倒的強者である竜族の王の首を落としてしまったのだ。目覚めたばかりで寝ぼけていた竜王は、配下に復活の予言を残して事切れる。
――これは魔王を退治にしに来た勇者が、間違えて竜王を退治した人違いから始まる物語である。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2023/10/30……完結
※2023/09/29……エブリスタ、ファンタジートレンド 1位
※2023/09/25……タイトル変更
※2023/09/13……連載開始
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
「十種神宝異聞」~天に叢雲、地上の空華~
大和撫子
ファンタジー
その八つの階層は、神が支配する元、互いの領域を侵さぬように過ごしております。ですが精霊界や人の間や、幽界と妖界など、階層と階層の境界線に存在するものはあちこちに移動して悪戯をする傾向がございました。
よって、各階層では小競り合いなどが起こりがちでございます。特に、全てを手に入れたものはあらゆる願いが叶うと言われております「十種神宝」については、我が手にしようと、人間に限らずあらゆる階層の者達の欲望が蠢いていました。
ここに、自らがこの世とあの世の全てを統べる神になろうと企む人間がおりました。その為にはまず、人柱を捧げて荒ぶる神、妖魔などを鎮めようとします。そう、その為には極上の人柱が必要なのでございました。
これは、生まれながらにして極上の「人柱」として育てられた者が、それに抗って生きた場合……そんなお話にございます。
主人公は旅をする中で、色々な出会いと別れを繰り返し、成長していきます。最初に出会うのは半妖の子供です。果たして仲間となるか? それとも……。そして恋の出会いも待っています。さてさて、彼は宿命を変える事が出来るのでしょうか?
それでは、どうぞお楽しみ下さいませ。
※作中の年齢は数え年を。月日は陰暦を使用しております。
※当時の美的感覚と言葉遣いは、現代とではズレがある為、現代よりの美形と言葉遣いを取り入れております。
※この時代はまだ本名には魂がこもっているとされており、本名を呼ぶのは両親か伴侶のみとされていましたが、物語の便宜上、作中の人物は本名で呼び合っております。
※史実(諸説ございます)を元に創作、ファンタジーを加えております。
以上、何卒予めご了承くださいませ。
スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。
王宮の幻花 ~婚約破棄された上に毒殺されました~
玄未マオ
ファンタジー
婚約破棄からの毒殺、霊体になってからが勝負です!
婚約者であった王太子から婚約破棄を宣言されたロゼライン公爵令嬢。
その後、毒物による死は自殺と判断されたが、実は違っていた。
幽霊になったロゼライン。
自分を殺した人間たちに復讐のつもりが、結果として世直しになっちゃうのか?
ここから先は若干ネタバレ。
第一章は毒殺されたロゼラインが生前親しかった人たちとともに罪をあばいていきます。
第二章は第二部では、精霊の世界でロゼラインの身(魂)のふりかたを考えます。
冒頭は今までとガラッと変わって猫々しく重い話から入ります。
第三章は第一章の約五十年後の話で、同じく婚約破棄からの逆転劇。
これまでのヒロインも出てきますが、サフィニアやヴィオレッタという新キャラが中心に物語が動き、第三章だけでも独立した物語として読めるようになっております。
重ね重ねよろしくお願い申し上げます<(_ _)>。
第一章と第二章半ばまでを短くまとめた
『黒猫ですが精霊王の眷属をやっています、死んだ公爵令嬢とタッグを組んで王国の危機を救います』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/886367481/338881929
を、現在連載しております。
こちらをサクッと呼んでから三章読んでも理解できるようまとめております。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。
トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。
謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。
「え?ここどこ?」
コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。
――え? どうして
カクヨムにて先行しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる