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あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです。
PHASE-07
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「はい、そこまで! 整備長もちゃんと現場指揮を行ってください」
ロールさんに言われて渋々と仕事を始める。
でも、指示って、あのおっさんに出来るんでしょうか?
「ピート君も馬鹿にしたような視線を送らないの。整備長になるだけの力がちゃんとあるから整備長なんだから」
へ~。そういう所はちゃんと評価してるんだな。
眺めてみれば――――、
おお! 確かに王都にお住まいの労働者と、遠方からの労働者の方々に指示を出してる。
しかもお互いの出身が違うから、お互いのルールを尊重させるように、王都組と遠方組にちゃんと分けて、土地勘のある王都組には区画を決めての道の修復。
土地勘がない遠方組には城壁の修繕を頼んでる。
驚きだ。ちゃんとしてる。
初めて整備長らしいところを見たと思う。
――……そんな思いもすぐに打ち消されたけどな。
あのおっさん、結局のところ、自分が楽したいから整備長になるために頑張ってきたってのが分かる。
指示したら、人目に付かないところに移動して、横になりながら煙草を楽しみ始めた。
現場責任者になるまでは努力し、その後の楽を考える。
苦は楽の種ってのを地で行ってるな。
まあ、整備長止まりっていう志の低さがしょっぱいけども。
ああいう風にはなるまいよ。
――――ふぃ~。
肉体労働が当たり前になってきたな……。
そんな労働を回避したいと思って入ったつもりだったのに……。
指示だけを出して楽する。そんな仕事だと思ってたのに……。
そう考えると、整備長は正しいのかもしれないな。見習おうとは思わないけど。
局長を見てくださいよ。
玉のような汗を流して、軽作業用の手袋をして木材を運んでますよ。偉いもんだ。
あの汗はもはや宝石ですな。
「銀髪ガール。冷たい水でもどうだい」
「いただこうかな」
そして聞こえる、吐き出してるかのような音。
慣れとは恐ろしいもので、ロールさんは何の躊躇もなく、シュパーブ君の水を飲み干している。
今日は陽射しが照りつけてとても暑い。だからか、シュパーブ君に対して群がる方々。
だけども、
「俺ちゃんは、俺ちゃんが認めた者にしか提供しない」
なんて格好つけてケチっている。
ブーブーとヤジが飛べば、ブーっと冷たい水を周囲にまき散らしていた。
これはこれで感謝されている。
「まだ一週間だけども――――」
独白する僕。
城壁を沿うように見ていけば、修復から日は浅いが、着実に王都の立て直しが進んでいるのが分かる。
城壁の進捗がこうだからね。他の場所も同様に進んで行っているはずだ。
何より、王都の人々に、そんな方々を手伝おうと、王都を訪れてくれている方々の悲観さを感じさせない笑みが周囲に力を与えてくれる。そしてそこでも笑みが生まれる。
連鎖していく笑み。これが王様に兵士の方々、そして冒険者の方々が守ったものだ。
ヘルムが悲観した歪んだ世界。
でも、この歪んだ世界で問題ないと僕は思っている。
変わらないことが悪いというわけではないのだ。
「満足そうに笑ってんじゃねえよ! 気持ち悪い」
「サボってる方が偉そうに言ってんじゃねえよ! 腹立たしい」
このおっさんとの関係も変わらないのだろう。すこぶる最悪だけども。
バチバチと、おっさんと僕の間には見えない電撃が走ってますよ。
「はい、二人ともちゃんとしましょう!」
怒られたじゃないか。おっさんのせいで僕までロールさんに怒られてしまった。
おっさんが悪いのに、僕に対しておっさんが舌打ちしてくる。
城壁の中に埋め込んで、東門の守り手としての人身御供にしてあげようか。
――――いや、駄目だ。こんなおっさんじゃ、御利益どころか、厄災しか招かないね。
小馬鹿にした笑みを向けてあげると、なぜか顔を真っ赤にして僕に襲いかかってきた。
「二人とも!」
普段は優しいロールさんが本気でお怒りなので、おっさんなんか相手にせず、真面目に仕事をしよう。
ロールさんに言われて渋々と仕事を始める。
でも、指示って、あのおっさんに出来るんでしょうか?
「ピート君も馬鹿にしたような視線を送らないの。整備長になるだけの力がちゃんとあるから整備長なんだから」
へ~。そういう所はちゃんと評価してるんだな。
眺めてみれば――――、
おお! 確かに王都にお住まいの労働者と、遠方からの労働者の方々に指示を出してる。
しかもお互いの出身が違うから、お互いのルールを尊重させるように、王都組と遠方組にちゃんと分けて、土地勘のある王都組には区画を決めての道の修復。
土地勘がない遠方組には城壁の修繕を頼んでる。
驚きだ。ちゃんとしてる。
初めて整備長らしいところを見たと思う。
――……そんな思いもすぐに打ち消されたけどな。
あのおっさん、結局のところ、自分が楽したいから整備長になるために頑張ってきたってのが分かる。
指示したら、人目に付かないところに移動して、横になりながら煙草を楽しみ始めた。
現場責任者になるまでは努力し、その後の楽を考える。
苦は楽の種ってのを地で行ってるな。
まあ、整備長止まりっていう志の低さがしょっぱいけども。
ああいう風にはなるまいよ。
――――ふぃ~。
肉体労働が当たり前になってきたな……。
そんな労働を回避したいと思って入ったつもりだったのに……。
指示だけを出して楽する。そんな仕事だと思ってたのに……。
そう考えると、整備長は正しいのかもしれないな。見習おうとは思わないけど。
局長を見てくださいよ。
玉のような汗を流して、軽作業用の手袋をして木材を運んでますよ。偉いもんだ。
あの汗はもはや宝石ですな。
「銀髪ガール。冷たい水でもどうだい」
「いただこうかな」
そして聞こえる、吐き出してるかのような音。
慣れとは恐ろしいもので、ロールさんは何の躊躇もなく、シュパーブ君の水を飲み干している。
今日は陽射しが照りつけてとても暑い。だからか、シュパーブ君に対して群がる方々。
だけども、
「俺ちゃんは、俺ちゃんが認めた者にしか提供しない」
なんて格好つけてケチっている。
ブーブーとヤジが飛べば、ブーっと冷たい水を周囲にまき散らしていた。
これはこれで感謝されている。
「まだ一週間だけども――――」
独白する僕。
城壁を沿うように見ていけば、修復から日は浅いが、着実に王都の立て直しが進んでいるのが分かる。
城壁の進捗がこうだからね。他の場所も同様に進んで行っているはずだ。
何より、王都の人々に、そんな方々を手伝おうと、王都を訪れてくれている方々の悲観さを感じさせない笑みが周囲に力を与えてくれる。そしてそこでも笑みが生まれる。
連鎖していく笑み。これが王様に兵士の方々、そして冒険者の方々が守ったものだ。
ヘルムが悲観した歪んだ世界。
でも、この歪んだ世界で問題ないと僕は思っている。
変わらないことが悪いというわけではないのだ。
「満足そうに笑ってんじゃねえよ! 気持ち悪い」
「サボってる方が偉そうに言ってんじゃねえよ! 腹立たしい」
このおっさんとの関係も変わらないのだろう。すこぶる最悪だけども。
バチバチと、おっさんと僕の間には見えない電撃が走ってますよ。
「はい、二人ともちゃんとしましょう!」
怒られたじゃないか。おっさんのせいで僕までロールさんに怒られてしまった。
おっさんが悪いのに、僕に対しておっさんが舌打ちしてくる。
城壁の中に埋め込んで、東門の守り手としての人身御供にしてあげようか。
――――いや、駄目だ。こんなおっさんじゃ、御利益どころか、厄災しか招かないね。
小馬鹿にした笑みを向けてあげると、なぜか顔を真っ赤にして僕に襲いかかってきた。
「二人とも!」
普段は優しいロールさんが本気でお怒りなので、おっさんなんか相手にせず、真面目に仕事をしよう。
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