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レコンキスタ
PHASE-89
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「いくよ!」
内部からはヘルムを除く、敗戦を受け入れる者たちが巨神から脱出して投降する。
そんな中で、
「いけぇぇぇぇ! サージャス!」
と、ザイオンが大きく口を開けば、
「そうだ! とどめはお前だサージャス!」
ドレークが続き、
「この戦いの英雄とナラレヨ!」
人生で一番の大声を出すムツ。
慣れていないからか、語末は声が裏返り甲高くなった。
パーティーが声援を送れば、ノリのいい冒険者たちはサージャスに向けて、パーティーメンバーに負けじと声援を送る。
中には〝いい女〟や、〝結婚してくれ〟という邪なものも含まれていた。
「よし、ピート」
「何でしょうケーシーさん」
「最後はお前が言葉を贈ってやれ」
「僕がですか?」
「そうだ。鈍感」
鈍感という発言にムッとしてしまうピートであるが、声援は始めから送るつもりであり、
「サージャスさん! 一発きついのお願いしまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!」
この言葉を耳朶にした瞬間にサージャスが動く。
諸手を上下へと広げる所作。
これを知っている者たちは即座に耳を塞ぎ始める。
知らない者たちは今から何をするのか? と、期待を持って歓声を上げつつ、耳を塞ぐ者を目の入れると何をしているのか? と、怪訝な表情だけを向けていた。
「王よ、耳を塞ぐ事を勧める」
「何を言います叔父上。この戦いを見届けるためには、歓声を耳朶に入れねばなりません」
何も知らないのは酷だなと思うラゼン。
ならばこれから起こる事を伝えればいいのだろうが、悪そうに口角を上げるところが、この大公の腹黒いところである。
サージャスの諸手が半月を描きつつ上下が逆になる。
「全霊をかけての一撃。これだけの規模はボクも初めてだ」
『何がしたい』
弱々しく返すヘルム。
出来る事は変わらず、懸命に睨むだけ。
「とどめの一撃だよ――――」
赤いチャクラがサージャスだけでなく、捷利嚮導の乙女の額部分にまで触れるほどに膨張する。
――――次には、膨張したチャクラが圧縮されるようにして、諸手へと集束していく。
「神獣に育まれ、恩恵を受けるも、三星により、巨星堕つ」
『なんだ? その詠唱は?』
「気にしないでいいよ。ただ格好つけてるだけだから」
にんまりとすれば、
「これにて終幕。断末魔をあげればいい、我が一撃で! 巨神狂叫!!」
集束した赤いチャクラが放射状に勢いよく広がりつつ、赤い帯となって巨神の額に直撃。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!」
今までを遙かに超越する、叫び狂ったような巨神狂叫発動時の独特な金切り音に、ピートはそれに負けないくらいの悲鳴を上げて、地面に転がり悶える。
耳を塞いでいなかった屈強な戦士たちの中には、音に絶えられず、口から泡を吹いて倒れる者もいた。
内部からはヘルムを除く、敗戦を受け入れる者たちが巨神から脱出して投降する。
そんな中で、
「いけぇぇぇぇ! サージャス!」
と、ザイオンが大きく口を開けば、
「そうだ! とどめはお前だサージャス!」
ドレークが続き、
「この戦いの英雄とナラレヨ!」
人生で一番の大声を出すムツ。
慣れていないからか、語末は声が裏返り甲高くなった。
パーティーが声援を送れば、ノリのいい冒険者たちはサージャスに向けて、パーティーメンバーに負けじと声援を送る。
中には〝いい女〟や、〝結婚してくれ〟という邪なものも含まれていた。
「よし、ピート」
「何でしょうケーシーさん」
「最後はお前が言葉を贈ってやれ」
「僕がですか?」
「そうだ。鈍感」
鈍感という発言にムッとしてしまうピートであるが、声援は始めから送るつもりであり、
「サージャスさん! 一発きついのお願いしまぁぁぁぁぁぁぁぁす!!」
この言葉を耳朶にした瞬間にサージャスが動く。
諸手を上下へと広げる所作。
これを知っている者たちは即座に耳を塞ぎ始める。
知らない者たちは今から何をするのか? と、期待を持って歓声を上げつつ、耳を塞ぐ者を目の入れると何をしているのか? と、怪訝な表情だけを向けていた。
「王よ、耳を塞ぐ事を勧める」
「何を言います叔父上。この戦いを見届けるためには、歓声を耳朶に入れねばなりません」
何も知らないのは酷だなと思うラゼン。
ならばこれから起こる事を伝えればいいのだろうが、悪そうに口角を上げるところが、この大公の腹黒いところである。
サージャスの諸手が半月を描きつつ上下が逆になる。
「全霊をかけての一撃。これだけの規模はボクも初めてだ」
『何がしたい』
弱々しく返すヘルム。
出来る事は変わらず、懸命に睨むだけ。
「とどめの一撃だよ――――」
赤いチャクラがサージャスだけでなく、捷利嚮導の乙女の額部分にまで触れるほどに膨張する。
――――次には、膨張したチャクラが圧縮されるようにして、諸手へと集束していく。
「神獣に育まれ、恩恵を受けるも、三星により、巨星堕つ」
『なんだ? その詠唱は?』
「気にしないでいいよ。ただ格好つけてるだけだから」
にんまりとすれば、
「これにて終幕。断末魔をあげればいい、我が一撃で! 巨神狂叫!!」
集束した赤いチャクラが放射状に勢いよく広がりつつ、赤い帯となって巨神の額に直撃。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!」
今までを遙かに超越する、叫び狂ったような巨神狂叫発動時の独特な金切り音に、ピートはそれに負けないくらいの悲鳴を上げて、地面に転がり悶える。
耳を塞いでいなかった屈強な戦士たちの中には、音に絶えられず、口から泡を吹いて倒れる者もいた。
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