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レコンキスタ
PHASE-84
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「今はボクを見るべきだ!」
「その通り! 今を生きて、今を戦う勇者を見なさい」
『なめるなよ』
ヘルムは口では抗って見せるも、完全に心は取り乱しており、どうするべきかと、目だけが激しく動き回っていた。
ここで場数を知らない素人の弱さが姿を見せる。
荒くなる呼吸。どっとわき出る汗が目に入り、それがしみるようで、強く閉じながら目を擦っていた。
「これで――――」
『フサルク!!』
指示で動き出す、人サイズのゴーレムたち。
幹部たちを無視し、全てをサージャスへと差し向ける。
「これは中々」
穂先を当てれば行動不能に出来るのだろうが、敏捷ゆえにそれが難しい存在たち。
先ほど受け止めた一撃の重さが、未だ諸手に残っている。
「往生際が悪い」
カグラがサージャスの前に立つ。
凛とした姿勢から、腕を横に薙ぎるだけで灰燼と化すフサルク。
倒せば、捷利嚮導の乙女越しにヘルムを睨むような炯眼。
焦燥に襲われる中で炎竜王に睨まれれば、焦りに拍車がかかる。
「動いてくれ!」
内部では巨神に念じるが、最大出力を使用した反動は大きかった。
「フサルクが駄目なら!」
と、軍馬ならば! と、そちらに目を向ければ、巨体に物を言わせた炎竜王、氷竜王の配下に、人が造りだした金色のゴーレムによって身動きがとれないでいた。
「くそ!」
悔しさがこぼれる。
窮地に追い込まれ、
「誰か! 誰か何とか止めるのだ! ヘイター!!!!」
最も頼りにしていた者の名を出しても意味は無い。
「任せる」
「分かりました」
フサルクに立ちふさがるカグラが背中越しに語れば、サージャスは一礼。
全身に纏った赤いチャクラは更に強さを増し、願望破壊の乙女の穂先は巨神の頭部に向けられる。
「決着をつけよう!」
気迫漲る言とともに、ただ真っ直ぐに定めた所へと飛翔するサージャス。
「いってらっしゃい」
と、パルティナ。
『寄るな!』
ようやく動き出す捷利嚮導の乙女。
だが、その動きは鈍く、迫ってくるサージャスに対して、腕を伸ばすだけが精一杯であった。
「観念せよ土塊」
ここで伸びる腕に対して、
「我だけを見ろ」
と、継ぎ、右ストレートを見舞えば、重々しく鈍い巨神の腕ががくんと下りる。
「がら空きにしてやったぞ」
「どうも」
軽く会釈しながら返しつつも、捷利嚮導の乙女へと接近する速度は落ちない。
――――ついにサージャスが頭部まで到達すれば、
『よせぇぇぇぇぇぇぇ!』
叫ぶヘルムの声を耳朶にしながら、アメジストカラーの瞳に力がこもった勇者が、諸手で握る槍を突く構えと移行――――、
「せい!」
何とか止めようと、下りた腕をもう一度サージャスへと向かって伸ばすが、時すでに遅く、穂先は頭部へと触れる。
今までは弾かれていた槍であったが、触れると同時に小気味のいい音を響かせると、穂先はいとも容易く頭部へと深く入り込む。
『あ、ああ……』
今までの計画が音を出して崩れ落ちるのが頭内に響く。
嗚咽に似た力ない声を漏らし、半球の操縦桿から手を離し、背もたれに体重をあずければ、腕をだらりと力なく垂らすヘルム。
「その通り! 今を生きて、今を戦う勇者を見なさい」
『なめるなよ』
ヘルムは口では抗って見せるも、完全に心は取り乱しており、どうするべきかと、目だけが激しく動き回っていた。
ここで場数を知らない素人の弱さが姿を見せる。
荒くなる呼吸。どっとわき出る汗が目に入り、それがしみるようで、強く閉じながら目を擦っていた。
「これで――――」
『フサルク!!』
指示で動き出す、人サイズのゴーレムたち。
幹部たちを無視し、全てをサージャスへと差し向ける。
「これは中々」
穂先を当てれば行動不能に出来るのだろうが、敏捷ゆえにそれが難しい存在たち。
先ほど受け止めた一撃の重さが、未だ諸手に残っている。
「往生際が悪い」
カグラがサージャスの前に立つ。
凛とした姿勢から、腕を横に薙ぎるだけで灰燼と化すフサルク。
倒せば、捷利嚮導の乙女越しにヘルムを睨むような炯眼。
焦燥に襲われる中で炎竜王に睨まれれば、焦りに拍車がかかる。
「動いてくれ!」
内部では巨神に念じるが、最大出力を使用した反動は大きかった。
「フサルクが駄目なら!」
と、軍馬ならば! と、そちらに目を向ければ、巨体に物を言わせた炎竜王、氷竜王の配下に、人が造りだした金色のゴーレムによって身動きがとれないでいた。
「くそ!」
悔しさがこぼれる。
窮地に追い込まれ、
「誰か! 誰か何とか止めるのだ! ヘイター!!!!」
最も頼りにしていた者の名を出しても意味は無い。
「任せる」
「分かりました」
フサルクに立ちふさがるカグラが背中越しに語れば、サージャスは一礼。
全身に纏った赤いチャクラは更に強さを増し、願望破壊の乙女の穂先は巨神の頭部に向けられる。
「決着をつけよう!」
気迫漲る言とともに、ただ真っ直ぐに定めた所へと飛翔するサージャス。
「いってらっしゃい」
と、パルティナ。
『寄るな!』
ようやく動き出す捷利嚮導の乙女。
だが、その動きは鈍く、迫ってくるサージャスに対して、腕を伸ばすだけが精一杯であった。
「観念せよ土塊」
ここで伸びる腕に対して、
「我だけを見ろ」
と、継ぎ、右ストレートを見舞えば、重々しく鈍い巨神の腕ががくんと下りる。
「がら空きにしてやったぞ」
「どうも」
軽く会釈しながら返しつつも、捷利嚮導の乙女へと接近する速度は落ちない。
――――ついにサージャスが頭部まで到達すれば、
『よせぇぇぇぇぇぇぇ!』
叫ぶヘルムの声を耳朶にしながら、アメジストカラーの瞳に力がこもった勇者が、諸手で握る槍を突く構えと移行――――、
「せい!」
何とか止めようと、下りた腕をもう一度サージャスへと向かって伸ばすが、時すでに遅く、穂先は頭部へと触れる。
今までは弾かれていた槍であったが、触れると同時に小気味のいい音を響かせると、穂先はいとも容易く頭部へと深く入り込む。
『あ、ああ……』
今までの計画が音を出して崩れ落ちるのが頭内に響く。
嗚咽に似た力ない声を漏らし、半球の操縦桿から手を離し、背もたれに体重をあずければ、腕をだらりと力なく垂らすヘルム。
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