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レコンキスタ

PHASE-79

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「レオニアさん」
 アレインの助け船とばかりに、ピートが名を小声にて口にすれば――――、
「お前……殺すよ」
 ニーズィーの耳元で告げられる女性の名。
 それを聞けば、アレインの肩から手をどかし、体を百八十度回頭。ピートを炯眼にて睨む。

「あまり怖い事を言わないでくださいよ。弱く見える」

「マジでこの戦いが終わったら、お前とは決着をつけないとな」

「ワギョウのITADAKI-頂-の時もそうでしたが、最終戦は素人二人による戦いで幕を下ろしましょうかね」
 ヘラヘラとして余裕を見せるピートに、こめかみに血管を浮かばせてから、睨みを更に強めるニーズィー。

「いまはその様な漫談はよい。早う、持って来たのであろう?」

「はい、ここに」
 魔王に手渡されるのは、小さな掌には収まりきれない輝く八角錐の宝石。

「ダイヤですか?」

「いや、クリスタルじゃ」
 ピートの質問に返せば、
「誰ぞこのクリスタルをゲイアードの元へ。あやつなら渡せばすぐに対応する」
 周囲を見渡す魔王。
 まかせとけ! と、ドレークたちがクリスタルを手にしようとすれば、
「ピート」

「へ?」
 まさかの隣に立つ素人に手渡す。
 勢い勇んでクリスタルを受け取ろうとしたのに、空振りになってしまったドレークはばつが悪いと、下手くそな口笛を吹いて誤魔化せば、後ろをついてきていたムツとザイオンも明後日の方向に顔を向ける。

「なんで僕?」
 いま正に屈強な男が手にしようとしたのになぜ自分なのか、訳が分からないと渋面に変われば、
「切り札が揃ったわけじゃ。ここで動かねばならんのは、やはり整備局の人間」
 整備局のトップがやらかしているのだから、そこは整備局が行動する事で、今後、局員たちが白い目で見られないためにもここで活躍するべきだ。と、それらしい理由をつける魔王。
 実際は、グリグリの意趣返しだと思われる。
 ニヤニヤと、悪そうな顔でピートを見ているのがいい証拠だろう。何とか主従の関係を覆したいようである。
 ならばここは整備長と、ピートは目をニーズィーに向ければ――――、四十代の動きは脱兎の如し。
 いつの間にかテントの中に入り込み、頭だけを出していた。
 先ほどピートに対し、殺す発言をしていた男と同一人物とは思えない腰抜けっぷりである。

「分かりましたよ。行きますよ。ドレークさん達はついてきてください」

「ひゅしゅ~……!? お、おう任せとけ!」
 下手くそな口笛をやめれば、胸に拳を当てて頼っていいとアピールしてくる。

「私も――――」
「はい、魔王さん。シュパーブ君」
「任せよ」
「任せろい」
 ロールの動きを制するように、魔王とシュパーブが後ろから羽交い締め。
 その間にピートはドレークたちを伴って前線へと向かう。

「また無茶して……」

「無茶と分かっておるから、お前に無茶はさせられんというピートの優しさよ」
 遠くなっていく背中に、寂しげに口を開いたロールを説く魔王。

「本来、俺ちゃんはボーイの護衛だが、ここは我らの王を守らせてもらう」
 優先すべきは魔王軍の最高権力者。
 役目を一時放棄した事を後でシズクに怒られるかもしれないと、ハラハラなのか、シュパーブの声は若干上擦っていた。
 
 ――――。

「動けるのか?」

「ええ、問題なく」
 大きな戦闘を終えたケーシーとゲイアードが合流。
 卓抜した者同士ならば、見ただけでお互いの状況を理解できるのか、多くは語らない。
 弟を亡くしたゲイアードの事を考えての事でもあるのだろうが。

「しかし、ラゴットの勢力は大人しくなってきてるが、デカいのには苦労しているな」
願望破壊の乙女ラーズグリーズであっても、ああも大きいと決定打にかけるのでしょう。それでもヒビを走らせた事は大きいですが」
「な、あんなに小柄な女の子がよく頑張ってくれてる。違反金なんとかしてやれよ」
「駄目ですね。規則なんで」
 返答する者は規則と口にはするが、違令管理課の時とは違い、柔和な物腰。
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