566 / 604
レコンキスタ
PHASE-79
しおりを挟む
「レオニアさん」
アレインの助け船とばかりに、ピートが名を小声にて口にすれば――――、
「お前……殺すよ」
ニーズィーの耳元で告げられる女性の名。
それを聞けば、アレインの肩から手をどかし、体を百八十度回頭。ピートを炯眼にて睨む。
「あまり怖い事を言わないでくださいよ。弱く見える」
「マジでこの戦いが終わったら、お前とは決着をつけないとな」
「ワギョウのITADAKI-頂-の時もそうでしたが、最終戦は素人二人による戦いで幕を下ろしましょうかね」
ヘラヘラとして余裕を見せるピートに、こめかみに血管を浮かばせてから、睨みを更に強めるニーズィー。
「いまはその様な漫談はよい。早う、持って来たのであろう?」
「はい、ここに」
魔王に手渡されるのは、小さな掌には収まりきれない輝く八角錐の宝石。
「ダイヤですか?」
「いや、クリスタルじゃ」
ピートの質問に返せば、
「誰ぞこのクリスタルをゲイアードの元へ。あやつなら渡せばすぐに対応する」
周囲を見渡す魔王。
まかせとけ! と、ドレークたちがクリスタルを手にしようとすれば、
「ピート」
「へ?」
まさかの隣に立つ素人に手渡す。
勢い勇んでクリスタルを受け取ろうとしたのに、空振りになってしまったドレークはばつが悪いと、下手くそな口笛を吹いて誤魔化せば、後ろをついてきていたムツとザイオンも明後日の方向に顔を向ける。
「なんで僕?」
いま正に屈強な男が手にしようとしたのになぜ自分なのか、訳が分からないと渋面に変われば、
「切り札が揃ったわけじゃ。ここで動かねばならんのは、やはり整備局の人間」
整備局のトップがやらかしているのだから、そこは整備局が行動する事で、今後、局員たちが白い目で見られないためにもここで活躍するべきだ。と、それらしい理由をつける魔王。
実際は、グリグリの意趣返しだと思われる。
ニヤニヤと、悪そうな顔でピートを見ているのがいい証拠だろう。何とか主従の関係を覆したいようである。
ならばここは整備長と、ピートは目をニーズィーに向ければ――――、四十代の動きは脱兎の如し。
いつの間にかテントの中に入り込み、頭だけを出していた。
先ほどピートに対し、殺す発言をしていた男と同一人物とは思えない腰抜けっぷりである。
「分かりましたよ。行きますよ。ドレークさん達はついてきてください」
「ひゅしゅ~……!? お、おう任せとけ!」
下手くそな口笛をやめれば、胸に拳を当てて頼っていいとアピールしてくる。
「私も――――」
「はい、魔王さん。シュパーブ君」
「任せよ」
「任せろい」
ロールの動きを制するように、魔王とシュパーブが後ろから羽交い締め。
その間にピートはドレークたちを伴って前線へと向かう。
「また無茶して……」
「無茶と分かっておるから、お前に無茶はさせられんというピートの優しさよ」
遠くなっていく背中に、寂しげに口を開いたロールを説く魔王。
「本来、俺ちゃんはボーイの護衛だが、ここは我らの王を守らせてもらう」
優先すべきは魔王軍の最高権力者。
役目を一時放棄した事を後でシズクに怒られるかもしれないと、ハラハラなのか、シュパーブの声は若干上擦っていた。
――――。
「動けるのか?」
「ええ、問題なく」
大きな戦闘を終えたケーシーとゲイアードが合流。
卓抜した者同士ならば、見ただけでお互いの状況を理解できるのか、多くは語らない。
弟を亡くしたゲイアードの事を考えての事でもあるのだろうが。
「しかし、ラゴットの勢力は大人しくなってきてるが、デカいのには苦労しているな」
「願望破壊の乙女であっても、ああも大きいと決定打にかけるのでしょう。それでもヒビを走らせた事は大きいですが」
「な、あんなに小柄な女の子がよく頑張ってくれてる。違反金なんとかしてやれよ」
「駄目ですね。規則なんで」
返答する者は規則と口にはするが、違令管理課の時とは違い、柔和な物腰。
アレインの助け船とばかりに、ピートが名を小声にて口にすれば――――、
「お前……殺すよ」
ニーズィーの耳元で告げられる女性の名。
それを聞けば、アレインの肩から手をどかし、体を百八十度回頭。ピートを炯眼にて睨む。
「あまり怖い事を言わないでくださいよ。弱く見える」
「マジでこの戦いが終わったら、お前とは決着をつけないとな」
「ワギョウのITADAKI-頂-の時もそうでしたが、最終戦は素人二人による戦いで幕を下ろしましょうかね」
ヘラヘラとして余裕を見せるピートに、こめかみに血管を浮かばせてから、睨みを更に強めるニーズィー。
「いまはその様な漫談はよい。早う、持って来たのであろう?」
「はい、ここに」
魔王に手渡されるのは、小さな掌には収まりきれない輝く八角錐の宝石。
「ダイヤですか?」
「いや、クリスタルじゃ」
ピートの質問に返せば、
「誰ぞこのクリスタルをゲイアードの元へ。あやつなら渡せばすぐに対応する」
周囲を見渡す魔王。
まかせとけ! と、ドレークたちがクリスタルを手にしようとすれば、
「ピート」
「へ?」
まさかの隣に立つ素人に手渡す。
勢い勇んでクリスタルを受け取ろうとしたのに、空振りになってしまったドレークはばつが悪いと、下手くそな口笛を吹いて誤魔化せば、後ろをついてきていたムツとザイオンも明後日の方向に顔を向ける。
「なんで僕?」
いま正に屈強な男が手にしようとしたのになぜ自分なのか、訳が分からないと渋面に変われば、
「切り札が揃ったわけじゃ。ここで動かねばならんのは、やはり整備局の人間」
整備局のトップがやらかしているのだから、そこは整備局が行動する事で、今後、局員たちが白い目で見られないためにもここで活躍するべきだ。と、それらしい理由をつける魔王。
実際は、グリグリの意趣返しだと思われる。
ニヤニヤと、悪そうな顔でピートを見ているのがいい証拠だろう。何とか主従の関係を覆したいようである。
ならばここは整備長と、ピートは目をニーズィーに向ければ――――、四十代の動きは脱兎の如し。
いつの間にかテントの中に入り込み、頭だけを出していた。
先ほどピートに対し、殺す発言をしていた男と同一人物とは思えない腰抜けっぷりである。
「分かりましたよ。行きますよ。ドレークさん達はついてきてください」
「ひゅしゅ~……!? お、おう任せとけ!」
下手くそな口笛をやめれば、胸に拳を当てて頼っていいとアピールしてくる。
「私も――――」
「はい、魔王さん。シュパーブ君」
「任せよ」
「任せろい」
ロールの動きを制するように、魔王とシュパーブが後ろから羽交い締め。
その間にピートはドレークたちを伴って前線へと向かう。
「また無茶して……」
「無茶と分かっておるから、お前に無茶はさせられんというピートの優しさよ」
遠くなっていく背中に、寂しげに口を開いたロールを説く魔王。
「本来、俺ちゃんはボーイの護衛だが、ここは我らの王を守らせてもらう」
優先すべきは魔王軍の最高権力者。
役目を一時放棄した事を後でシズクに怒られるかもしれないと、ハラハラなのか、シュパーブの声は若干上擦っていた。
――――。
「動けるのか?」
「ええ、問題なく」
大きな戦闘を終えたケーシーとゲイアードが合流。
卓抜した者同士ならば、見ただけでお互いの状況を理解できるのか、多くは語らない。
弟を亡くしたゲイアードの事を考えての事でもあるのだろうが。
「しかし、ラゴットの勢力は大人しくなってきてるが、デカいのには苦労しているな」
「願望破壊の乙女であっても、ああも大きいと決定打にかけるのでしょう。それでもヒビを走らせた事は大きいですが」
「な、あんなに小柄な女の子がよく頑張ってくれてる。違反金なんとかしてやれよ」
「駄目ですね。規則なんで」
返答する者は規則と口にはするが、違令管理課の時とは違い、柔和な物腰。
0
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
転生キッズの魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜
西園寺わかばEX
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。
辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。
無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ
桜井正宗
ファンタジー
帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。
ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~
海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。
地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。
俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。
だけど悔しくはない。
何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。
そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。
ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。
アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。
フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。
※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる