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レコンキスタ
PHASE-57
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禍々しく頭部が輝く。
「あれ?」
ピートは視線を感じ、そちらに目を向ければ、捷利嚮導の乙女の目の部分が自分を見ているようだと気付く。
「え……」
禍々しく輝く頭部は間違いなくこちらを狙っていると推測するピートは、
「あの野郎! こっちを狙おうとしてる! なんで!?」
自分の繋がりがヘルムの計画を邪魔している事だとはつゆ知らず、流石に自分に向けられる動きを目にすれば、慌てふためくのが素人。
「ロールさんここから逃げないと」
「逃げるにしても、どうするの?」
直撃すれば一帯が吹き飛ぶ。
ここにいる王軍のトップも消えてしまう。
『君がいけないのだ。ウィザースプーン君』
狂気に口角を上げている姿が目に入る。
どうやら自分が連絡を入れた事で、戦況を変えたきっかけを作ったのが、たいそう気に入らなかったようだとここで気付くピート。
『さようならだ』
強大な光の帯が放たれる。
――――が、
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
大音声と共に、巨大な魔法陣を展開し、それを止めるのは邪神。
「なめよって、あそこには義妹に実妹がおるのだぞ。かすり傷でもつけようものなら、貴様は来世においても邪神の呪いをかけてやる」
「おえ……」
本来なら、救ってもらっているので感謝なのだろうが、実妹という発言が嫌だったのか、魔王は不愉快な表情。
はっきりと耳に届いたようで、救ったあげくにこの態度。邪神の髪から、ツヤとコシが無くなり、パッサパサな髪質に変わってしまうくらいに落ち込んでしまった。
「ちょっと! 救われたんですから、感謝を口にするべきでしょ!」
流石にその応対は酷いと、狙われた張本人であるピートは魔王を叱責する。
唇を尖らせた態度が返ってくるだけ。
『今度こそは』
力ない邪神を目にして、その隙を突くように、第二射目にてピートを抹殺しようと考えるヘルム。それが分かっているから、
「早く! 謝るなり応援を!」
「え~」
「なんでそこまで我が儘なんだ、このちびっ子魔王は! 脅威がすぐそこまで来てるの!」
必死に頼み込むピートの声音は荒々しい。
頭を下げるなど、そんな回りくどいことはこの魔王に対してはしない。
やっても意味がないからだ。
なので、やる事となれば、抵抗する時点で、魔王のこめかみにグリグリをただただ見舞うだけである。
無駄を徹底的に省き、費用をおさえ、物事を遂行する。
公務員とはかくあるべきという手本のようであった。
「い゛ぃぃぃぃやぁぁあぁぁぁっぁああ゛」
激痛に涙を流し、声にならない叫びを発しながら、二射目が早いか、邪神に対するお願いが先かのスピード勝負になっていた。
「はい、言って! また助けてお兄ちゃんって。言えるから。言ってみてください」
「お前、本当にこのままで済むと思うなよ。妾が真に力を取り戻したら、本当に魔王として、この世界に打って出るぞ」
グリグリを止めてお願いしたら、ピートが欲しかったような言葉は出なかった。――――ので、
「いぃぃぃう゛ぁぁぁぁぁいいいいいいいい゛」
「言わなきゃ速度が更に上がるよ」
切羽詰まっている状況なので、一切の手心を加えないスタイル。
「言います。言わせていただきたいと思いましてございますでする」
相変わらずな下手くそな敬語の後に、死ぬほど恥ずかしそうな顔をしながら――――、
「妾たちを助けて……お兄ちゃん」
――――この発言のすぐだった。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
大地に落ちる雷の巨柱。
それは捷利嚮導の乙女を容易く呑み込むほどの巨大な雷の柱。
周囲に衝撃が走れば、魔王幹部、カグラやシズクすらもその衝撃に吹き飛ぶほどであった。
正に御業。
「あれ?」
ピートは視線を感じ、そちらに目を向ければ、捷利嚮導の乙女の目の部分が自分を見ているようだと気付く。
「え……」
禍々しく輝く頭部は間違いなくこちらを狙っていると推測するピートは、
「あの野郎! こっちを狙おうとしてる! なんで!?」
自分の繋がりがヘルムの計画を邪魔している事だとはつゆ知らず、流石に自分に向けられる動きを目にすれば、慌てふためくのが素人。
「ロールさんここから逃げないと」
「逃げるにしても、どうするの?」
直撃すれば一帯が吹き飛ぶ。
ここにいる王軍のトップも消えてしまう。
『君がいけないのだ。ウィザースプーン君』
狂気に口角を上げている姿が目に入る。
どうやら自分が連絡を入れた事で、戦況を変えたきっかけを作ったのが、たいそう気に入らなかったようだとここで気付くピート。
『さようならだ』
強大な光の帯が放たれる。
――――が、
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
大音声と共に、巨大な魔法陣を展開し、それを止めるのは邪神。
「なめよって、あそこには義妹に実妹がおるのだぞ。かすり傷でもつけようものなら、貴様は来世においても邪神の呪いをかけてやる」
「おえ……」
本来なら、救ってもらっているので感謝なのだろうが、実妹という発言が嫌だったのか、魔王は不愉快な表情。
はっきりと耳に届いたようで、救ったあげくにこの態度。邪神の髪から、ツヤとコシが無くなり、パッサパサな髪質に変わってしまうくらいに落ち込んでしまった。
「ちょっと! 救われたんですから、感謝を口にするべきでしょ!」
流石にその応対は酷いと、狙われた張本人であるピートは魔王を叱責する。
唇を尖らせた態度が返ってくるだけ。
『今度こそは』
力ない邪神を目にして、その隙を突くように、第二射目にてピートを抹殺しようと考えるヘルム。それが分かっているから、
「早く! 謝るなり応援を!」
「え~」
「なんでそこまで我が儘なんだ、このちびっ子魔王は! 脅威がすぐそこまで来てるの!」
必死に頼み込むピートの声音は荒々しい。
頭を下げるなど、そんな回りくどいことはこの魔王に対してはしない。
やっても意味がないからだ。
なので、やる事となれば、抵抗する時点で、魔王のこめかみにグリグリをただただ見舞うだけである。
無駄を徹底的に省き、費用をおさえ、物事を遂行する。
公務員とはかくあるべきという手本のようであった。
「い゛ぃぃぃぃやぁぁあぁぁぁっぁああ゛」
激痛に涙を流し、声にならない叫びを発しながら、二射目が早いか、邪神に対するお願いが先かのスピード勝負になっていた。
「はい、言って! また助けてお兄ちゃんって。言えるから。言ってみてください」
「お前、本当にこのままで済むと思うなよ。妾が真に力を取り戻したら、本当に魔王として、この世界に打って出るぞ」
グリグリを止めてお願いしたら、ピートが欲しかったような言葉は出なかった。――――ので、
「いぃぃぃう゛ぁぁぁぁぁいいいいいいいい゛」
「言わなきゃ速度が更に上がるよ」
切羽詰まっている状況なので、一切の手心を加えないスタイル。
「言います。言わせていただきたいと思いましてございますでする」
相変わらずな下手くそな敬語の後に、死ぬほど恥ずかしそうな顔をしながら――――、
「妾たちを助けて……お兄ちゃん」
――――この発言のすぐだった。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!
大地に落ちる雷の巨柱。
それは捷利嚮導の乙女を容易く呑み込むほどの巨大な雷の柱。
周囲に衝撃が走れば、魔王幹部、カグラやシズクすらもその衝撃に吹き飛ぶほどであった。
正に御業。
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