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レコンキスタ
PHASE-56
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『ヴィン海域の悪鬼ども。我が同志達を凄惨な行為で命を奪う所行。許すわけにはいかん!!』
『ではどうする』
代表としてナイゼルがヘルムに応えれば、
『無論、その命で償え!』
軍馬のように、無軌道な光の帯が、捷利嚮導の乙女の肩の部分から大量に放たれる。
「ええい! 数が多いな」
器用に邪神が無数の魔法陣を展開するが、それでもそれをかいくぐり、いくつかの光がナイゼル達のところに着弾する。
半球状の爆発が数カ所で発生。
「やられたか?」
無事だったナイゼルが確認をとれば、
「けっこうな。ロッケンジーのやつ、目立とうと思って、今の攻撃を防ごうとしたみたいだが、無理に突っ込んで消し炭になったぞ。ハハハ――――」
哄笑にて返すバロニアを目にして、
「やはり病んでいるな。仲間の死で笑えるのだから」
一人、捷利嚮導の乙女の内部で怒りを覚えつつ、ヘルムが狂った集団に目を向け、同胞を奪ったことと、戦いに愉悦を求める者たちは看過できないという正義感から、ターゲットをそこへと絞り始める。
「しかし、ラゴットからの増援が少なくなってきている気がするが……」
プールに指導権を奪われたとはいえ、こちらではまだ機能している空間魔法もある。
だが、その空間魔法より現れる数が徐々に少なくなってきているように思えた。
後詰めの部隊はまだ数に余裕があるはず、しかし、余裕とは裏腹に少なかった。
臆して逃げているのか? それとも向こうで何かあったのか?
と、考えを巡らせている矢先であった。
「報告します!」
血相を変えてヘルムのいる部屋へと入り込んできたのは、ダイアンの部下の一人だった。
ノックもせずに急に入ってきたことに不快さを覚えたが、
「どうした?」
問うと、
「グルガルのラゴットが襲撃を受けているとのことです」
「なんだと!? 誰だ! ここに集まっている者たち以外に、ラゴットの軍勢を押さえ込めるだけの戦力など。敵の数は?」
「……三人です」
「は?」
聞き間違えたのかと、もう一度、人数を確認するも、やはり三人と返ってきた。
「たったの三人……」
「報告によれば、三人の内一人は、右手に禍々しい光を帯びた剣を手にしているとの事」
追加の報告で、三人が何者か理解できた。
クシュリナ・パラシュラの一行。
呪剣ダーインスレイヴを手にする者。魔剣士、カルタ・リター。
「なぜだ。彼女たちは魔王討伐を志す者だろう。なぜ我らを攻撃する」
「リター氏より言づてがあります――――」
「言ってくれ」
「整備局の若い二人と、炎竜王には世話になった。剣はまだ手から外れてないが、恩がある」
またも自分の部下がここで出てきたと、歯を軋らせる。
サージャス・バレンタインといい。猛威を振るう地獄の集団であるヴィン海域の面々に続いて、カルタ・リターまで。
ピートと関係を持つ者たちが、悉く自分の邪魔をしてくる。
「追加で、パラシュラ氏からも……」
言いにくそうにしているので、いい内容ではないとは理解したが、構わないと伝えれば、
「小者の素人が、変な夢を見るのはよしなさい。しかもいい歳をして、いつまでも叶わない夢を追い続けないように。とのことです……」
「そうか、分かった……。下がっていい」
ピリついた空気を察知したのか、足早に退出するダイアンの部下。
――――室内が森閑だったのも束の間。
「おのれ! 小娘共が!」
一人になったところで大いに吠えた。
肩を大きく動かし、荒れた呼吸のまま、ヴィン海域の面々に向けていた視線を王軍後陣にいるピートへと変えるヘルム。
「まったく! 進捗の遅れは全て君だよ! ウィザースプーン君」
苦々しい表情で睨めば、連動するように、捷利嚮導の乙女の頭部がピートの方向に可動する。
『ではどうする』
代表としてナイゼルがヘルムに応えれば、
『無論、その命で償え!』
軍馬のように、無軌道な光の帯が、捷利嚮導の乙女の肩の部分から大量に放たれる。
「ええい! 数が多いな」
器用に邪神が無数の魔法陣を展開するが、それでもそれをかいくぐり、いくつかの光がナイゼル達のところに着弾する。
半球状の爆発が数カ所で発生。
「やられたか?」
無事だったナイゼルが確認をとれば、
「けっこうな。ロッケンジーのやつ、目立とうと思って、今の攻撃を防ごうとしたみたいだが、無理に突っ込んで消し炭になったぞ。ハハハ――――」
哄笑にて返すバロニアを目にして、
「やはり病んでいるな。仲間の死で笑えるのだから」
一人、捷利嚮導の乙女の内部で怒りを覚えつつ、ヘルムが狂った集団に目を向け、同胞を奪ったことと、戦いに愉悦を求める者たちは看過できないという正義感から、ターゲットをそこへと絞り始める。
「しかし、ラゴットからの増援が少なくなってきている気がするが……」
プールに指導権を奪われたとはいえ、こちらではまだ機能している空間魔法もある。
だが、その空間魔法より現れる数が徐々に少なくなってきているように思えた。
後詰めの部隊はまだ数に余裕があるはず、しかし、余裕とは裏腹に少なかった。
臆して逃げているのか? それとも向こうで何かあったのか?
と、考えを巡らせている矢先であった。
「報告します!」
血相を変えてヘルムのいる部屋へと入り込んできたのは、ダイアンの部下の一人だった。
ノックもせずに急に入ってきたことに不快さを覚えたが、
「どうした?」
問うと、
「グルガルのラゴットが襲撃を受けているとのことです」
「なんだと!? 誰だ! ここに集まっている者たち以外に、ラゴットの軍勢を押さえ込めるだけの戦力など。敵の数は?」
「……三人です」
「は?」
聞き間違えたのかと、もう一度、人数を確認するも、やはり三人と返ってきた。
「たったの三人……」
「報告によれば、三人の内一人は、右手に禍々しい光を帯びた剣を手にしているとの事」
追加の報告で、三人が何者か理解できた。
クシュリナ・パラシュラの一行。
呪剣ダーインスレイヴを手にする者。魔剣士、カルタ・リター。
「なぜだ。彼女たちは魔王討伐を志す者だろう。なぜ我らを攻撃する」
「リター氏より言づてがあります――――」
「言ってくれ」
「整備局の若い二人と、炎竜王には世話になった。剣はまだ手から外れてないが、恩がある」
またも自分の部下がここで出てきたと、歯を軋らせる。
サージャス・バレンタインといい。猛威を振るう地獄の集団であるヴィン海域の面々に続いて、カルタ・リターまで。
ピートと関係を持つ者たちが、悉く自分の邪魔をしてくる。
「追加で、パラシュラ氏からも……」
言いにくそうにしているので、いい内容ではないとは理解したが、構わないと伝えれば、
「小者の素人が、変な夢を見るのはよしなさい。しかもいい歳をして、いつまでも叶わない夢を追い続けないように。とのことです……」
「そうか、分かった……。下がっていい」
ピリついた空気を察知したのか、足早に退出するダイアンの部下。
――――室内が森閑だったのも束の間。
「おのれ! 小娘共が!」
一人になったところで大いに吠えた。
肩を大きく動かし、荒れた呼吸のまま、ヴィン海域の面々に向けていた視線を王軍後陣にいるピートへと変えるヘルム。
「まったく! 進捗の遅れは全て君だよ! ウィザースプーン君」
苦々しい表情で睨めば、連動するように、捷利嚮導の乙女の頭部がピートの方向に可動する。
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