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レコンキスタ

PHASE-38

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『なにがまだなのか』
 呆れてやがる。

「おい、アレをなめるなよ。アレは古の時代に、妾の生み出した兵仗すべてを相手にしてたのじゃ」
 言うと、その台詞を待っていたとばかりに、市街に現出した炎の巨壁がかき消される。
 光の帯の威力は、大魔法だと、戦略規模に近いクラス。
 それを容易くかき消したのは、魔王さんが言うアレだろう。
 つまりは、邪神。
 ようやくここに来て本領発揮か。
 
 なんて思っていたら、
「我参上」
 いつもの常套句で登場だ。

「遅い!」
 相も変わらず、邪神には対応が冷たすぎる魔王さん。
 どや顔で快活良く登場したのに、木で鼻を括られて、一瞬にして肩を縮める邪神のその姿は、神とはほど遠い……。

「相変わらず趣味の悪い服」

「目にうるさいな」
 と、ここでシズクさんとカグラさんが、今回のために新調したのか、髪に合わせた紫色のスーツに対して、辛口な評価。
 確かに、紫はない……。
 カグラさんの、目にうるさいという感想が、以前、僕が、邪神のスーツに下した評価と同じだったので、感性が似ているなと、嬉しかったりする。

「おお……。無事に救い出されたようで何よりだなカグラ。それにシズクまでいるとは……」

「ご心配ありがとうございます。と、言っておけばいいかな?」

「シズクとか、名前で呼ばないでくれる。気持ち悪い」
 ますます肩身が狭くなっていく邪神。
 ここまでくると不憫でしかない。

「あの炎をかき消してここに来たという事は、直撃した場にいた皆さんは無事ですか?」

「男が話しかけるな。と、言いたいが、答えてやる。無事だ」
 不憫と思っていた気持ちを返していただきたい。
 普段なら、話しかけるな! というだけで終わるんだろうけども、自分の肩身の狭さから、僕に救いを求めてきたな。小心者め!
 まあいい、それ以上に、無事との発言に、僕も皆さんも胸をなで下ろした。

「戦え」
 素っ気なく言うね……。
 目も合わせないで、皆さんが無事な事が分かれば、兄に対して酷に言い放った。
 邪神の寂しそうな顔たるや……。
 普段は優しいカグラさんですら、魔王さんと同じ態度。
 本当に嫌われてるな~。
 大昔、どれだけ調子に乗ってたかってのが分かるよ。

「簡単に言うけどな、我はアレが苦手だぞ。我用に造られているから、我、ここにいるだけで本来の力が発揮出来ないのだからな」

「しるか! アレの分際で、妾の傑作をアレと言うな!!」

「………………」
 僕が邪神と同じ立ち位置なら、大泣きしてるよ……。

『酷い妹だな』
「うるさい」
『ならば静かにさせてやる』
「ふぁ!?」
 今までゆっくりとしていた動きだったのに、捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデが一瞬にして僕たちの目の前に現れる。
 対峙していたサージャスさんが取り残された。
 
 現れると同時に生まれる一陣の風。
 というか、颶風だ。
 今度は倒れるどころか、体が吹き飛ばされそうになる。
 先ほどまでとは動きが違いすぎるし、二足歩行になってから、全長が高くなっているから、目から入ってくる圧力が更に増している。

『見せてやれ、本物の豪腕を!』
 さっきまでとは違うフットワークからの腕の可動。ゴーレムの力強さに、人間のしなやかさが織り交ざった動き。
 見舞われたらぺちゃんこ待ったなしだよ。

「なめるな!」
 ここで邪神が魔法陣を出して拳を防ぐ。

「おお!」
 凄い! 流石は腐っても邪神シスコンだな。

 ――――シスコンって褒め言葉だっけ?
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