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レコンキスタ
PHASE-37
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「まいったの……」
本気の声だよ……。魔王さん……。
捷利嚮導の乙女が真の力を発揮すれば、本当にまずいみたいだというのが、表情で理解できた。
『説明は済んだかな、ウィザースプーン君。助かるよ、代弁してくれて』
どうも……。こっちは全くもって笑えないけどね。
『さあ、始めよう』
くそ! 余裕まる出しな語気だな。こっちは心の準備が整ってないよ!
格子状のカバーが輝き始めれば、大気中の魔力は無色であるはずなのに、集約の乙女付近で、色とりどりの魔力が、渦を作って吸い込まれていく。
「でも、大気中のでしょ。大陸中の魔力って……」
『可能だよ。時間を有するが、王都まで魔力を集めることも、集約の乙女はできる。郭大の乙女との併用で更に能率も上がっているがね』
時間を有するか……。
王都での作業に遅延があるように見えたのは、その事が原因だったんだ。
遅延ではなく、魔力を集めている作業途中だったって事か。
『集約の乙女あらため、魔力粒子コンバーターの稼働は順調。見ろ! この神々しい輝きを』
光り輝く捷利嚮導の乙女が、立ち上がる……。
立ち……、上がる……?
「……は? 二足歩行!?」
四脚の部分から足が出てきた。
人間で例えるなら、正座をしていた感じだ。
「元々、捷利嚮導の乙女は二足歩行型じゃ。四脚部分は、捷利嚮導の乙女専用補助ゴーレムである、軍馬じゃ。あれ単独でも強力な存在よ」
「あれも兵仗としてカウントしなさいよ!」
「いやいや、合体と分離こそ浪漫ではないか。あれは補助であって兵仗ではない」
なんだよその阿呆なこだわりは! 本当に……、こめかみにまた見舞ってやろうか! この馬鹿な元戦女神の魔王さんよ!!
『素晴らしい! 人々の力によって動き出すこの姿こそ、捷利嚮導の乙女が真に悪を駆逐する姿だ。さあ、滅びるがいい! 根源ども!!』
頭部がまたも光る。
全体も輝いているけど、頭部が特に輝きを放っている。
『まずは……魔王に後悔を与えたい』
そう言うと、食指を向ける先は……、
不死王さん達が進軍する位置だ。
「ふざけるなよ! あそこにはお前の同志がいるだろうに!」
仲間ごと撃つきだ。ヘルムの底が知れた。
『撃て。我らを勝利に導く、白亜の乙女よ』
強く輝く頭部から、禍々しい光の帯が放たれる。
帯に黒い雷を纏いながら……。
数回目にした光の帯だが、今回のは見ただけで理解できる。威力が桁外れだ。
帯の幅が違う。捷利嚮導の乙女の上半身ほどはある光の帯。
発射されると同時に、僕たちを襲う衝撃波。
素人の体は、簡単に倒れてしまう。
――……。
「ああ……」
倒れながらも光を目で追えば、横一文でなぎ払われる市街地。
光の後を追うように、炎の壁が現れる。
地表にマグマが吹き出したかのような光景。
火傷しそうなくらいの熱がここまで届き、ジリジリと肌を焦がしてくる。
「無茶苦茶じゃないか……」
こっちは破壊に対して最小限に努力してきたのに、容易く市街を破壊しやがって!
あの場にいた人たちは絶望的だ……。
「結局は味方も捨て石かよ」
『そんな訳ないだろう』
言えば、黒い空間が現出。
空間魔法ですでに撤退させていたようだ。
その戦力は丸々こちらに向けられる。
あの一撃で不死王さん達に大打撃を与えたから、向こうに傾ける戦力が必要じゃなくなったからだろう。
『更に力を見せてやろう。後詰めをグルガルから送り込んでくれ』
まだいんのかよ……。
――――続々と、各所に現出する空間魔法の黒い穴や扉。
そこから不敵に笑いながら現れるラゴット勢。
数によって圧倒してくる。
気圧されていたのに勢いがつき、逆にこちらが気圧されはじめる。
「まだです!」
と、高らかに発するのは、グライフ君に跨がり、捷利嚮導の乙女と対峙しながらも、前線を鼓舞し続けるサージャスさんだった。
僕が侵入した後もずっと最前線で戦ってくれていたんだ。
「そうじゃ! まだじゃ!!」
遅れて魔王さんも周囲に伝える。
本気の声だよ……。魔王さん……。
捷利嚮導の乙女が真の力を発揮すれば、本当にまずいみたいだというのが、表情で理解できた。
『説明は済んだかな、ウィザースプーン君。助かるよ、代弁してくれて』
どうも……。こっちは全くもって笑えないけどね。
『さあ、始めよう』
くそ! 余裕まる出しな語気だな。こっちは心の準備が整ってないよ!
格子状のカバーが輝き始めれば、大気中の魔力は無色であるはずなのに、集約の乙女付近で、色とりどりの魔力が、渦を作って吸い込まれていく。
「でも、大気中のでしょ。大陸中の魔力って……」
『可能だよ。時間を有するが、王都まで魔力を集めることも、集約の乙女はできる。郭大の乙女との併用で更に能率も上がっているがね』
時間を有するか……。
王都での作業に遅延があるように見えたのは、その事が原因だったんだ。
遅延ではなく、魔力を集めている作業途中だったって事か。
『集約の乙女あらため、魔力粒子コンバーターの稼働は順調。見ろ! この神々しい輝きを』
光り輝く捷利嚮導の乙女が、立ち上がる……。
立ち……、上がる……?
「……は? 二足歩行!?」
四脚の部分から足が出てきた。
人間で例えるなら、正座をしていた感じだ。
「元々、捷利嚮導の乙女は二足歩行型じゃ。四脚部分は、捷利嚮導の乙女専用補助ゴーレムである、軍馬じゃ。あれ単独でも強力な存在よ」
「あれも兵仗としてカウントしなさいよ!」
「いやいや、合体と分離こそ浪漫ではないか。あれは補助であって兵仗ではない」
なんだよその阿呆なこだわりは! 本当に……、こめかみにまた見舞ってやろうか! この馬鹿な元戦女神の魔王さんよ!!
『素晴らしい! 人々の力によって動き出すこの姿こそ、捷利嚮導の乙女が真に悪を駆逐する姿だ。さあ、滅びるがいい! 根源ども!!』
頭部がまたも光る。
全体も輝いているけど、頭部が特に輝きを放っている。
『まずは……魔王に後悔を与えたい』
そう言うと、食指を向ける先は……、
不死王さん達が進軍する位置だ。
「ふざけるなよ! あそこにはお前の同志がいるだろうに!」
仲間ごと撃つきだ。ヘルムの底が知れた。
『撃て。我らを勝利に導く、白亜の乙女よ』
強く輝く頭部から、禍々しい光の帯が放たれる。
帯に黒い雷を纏いながら……。
数回目にした光の帯だが、今回のは見ただけで理解できる。威力が桁外れだ。
帯の幅が違う。捷利嚮導の乙女の上半身ほどはある光の帯。
発射されると同時に、僕たちを襲う衝撃波。
素人の体は、簡単に倒れてしまう。
――……。
「ああ……」
倒れながらも光を目で追えば、横一文でなぎ払われる市街地。
光の後を追うように、炎の壁が現れる。
地表にマグマが吹き出したかのような光景。
火傷しそうなくらいの熱がここまで届き、ジリジリと肌を焦がしてくる。
「無茶苦茶じゃないか……」
こっちは破壊に対して最小限に努力してきたのに、容易く市街を破壊しやがって!
あの場にいた人たちは絶望的だ……。
「結局は味方も捨て石かよ」
『そんな訳ないだろう』
言えば、黒い空間が現出。
空間魔法ですでに撤退させていたようだ。
その戦力は丸々こちらに向けられる。
あの一撃で不死王さん達に大打撃を与えたから、向こうに傾ける戦力が必要じゃなくなったからだろう。
『更に力を見せてやろう。後詰めをグルガルから送り込んでくれ』
まだいんのかよ……。
――――続々と、各所に現出する空間魔法の黒い穴や扉。
そこから不敵に笑いながら現れるラゴット勢。
数によって圧倒してくる。
気圧されていたのに勢いがつき、逆にこちらが気圧されはじめる。
「まだです!」
と、高らかに発するのは、グライフ君に跨がり、捷利嚮導の乙女と対峙しながらも、前線を鼓舞し続けるサージャスさんだった。
僕が侵入した後もずっと最前線で戦ってくれていたんだ。
「そうじゃ! まだじゃ!!」
遅れて魔王さんも周囲に伝える。
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