523 / 604
レコンキスタ
PHASE-36
しおりを挟む
『ここには郭大の乙女があると思っていたかな? あれは背の外部ではなく、内部に埋め込まれている。ここを改修していたことと、この位置より気配を感知したから、ここには郭大の乙女があるとだけ思い込んだな』
「うるさいの!」
お! 魔王さんの声音が荒ぶる。
シーツみたいなのを目にしてから、気分を害しているようだ。
『戒律の乙女の効果は強大。だからこそ、そこを主目標として狙ってくれるのを願っていたよ。ここは感知されてほしくなかったからね。徹底したよ。郭大の乙女を囮にし、更に隠匿の乙女まで使用したのだから』
「隠匿の乙女――――」
って、なんぞや?
魔王さんを見れば、兵仗の効果を説明してくれるだろう。
「あの外套じゃ。纏った全てを隠し通すことが出来る。視覚、感覚、魔力。全てから隠せる。作り手の妾も感知できん」
何それ! 欲しいんですけど。のぞきとか好き放題出来るよね。
「邪なことは考えるなよ」
「あ、はい……」
ノゾキ、ヨクナイ。
『では、ここにあるものをお披露目しよう』
なんかいちいち演出くさい初老だな。
取り巻きが隠匿の乙女を取れば、出てきたのは横格子状の金属カバー。
広さは畳二畳といったところ。
あのカバーの下にとっておきが隠されているわけだ。
「魔王さん」
顔を見れば、荒ぶっていた声の時と打って変わって、しらけたものになっていた。
「なんじゃ、集約の乙女ではないか」
またも新しい兵仗。
でも、リアクションからして、大して脅威がないみたいだけども。
『なんだ、驚嘆にはほど遠いな。魔王』
「集約の乙女をどう活用するのか知っておるのか?」
――――集約の乙女なる兵仗は、大気中にある魔力を集めて、術者の魔力を補う兵仗だそうだ。
間断なく魔力を取り入れることで、魔法を永続的にしようできるのが、この兵仗の特徴。
大魔法を連続して使えるので、壊滅的な攻撃力を有するらしいけども、それでもこの状況で、大仰に見せつけるものではないとのこと。
そもそもが、それを捷利嚮導の乙女に取り付けている意図が理解できないそうだ。
『ふ、製作者であるのに、利用方法が単純だな。阿呆め』
「あ?」
うわ~。すっごく怒ってらっしゃるよ。
ストレートに阿呆とか言われると、プライド高いから、相当頭に来るみたいだね。
体に紫色の光を纏ってる。
同色の髪が逆立って、魔力を迸らせてる。
戒律の乙女を取り込んだからか、願望破壊の乙女がなくても多少は大丈夫だというのが分かる。
『凄んでも所詮は小兵の威嚇。畏れなど毛ほどもない』
おうおう、随分と強気に挑発だな。
「わからんの~。大気中の魔力など言うほど脅威ではない。なのにその強気」
『脅威ではないか――――。そんな事だから殆どの兵仗が手元に戻ってこないのだ。節穴め!』
「あ!」
ますます紫色の光が強味を帯びる。
『先ほども言ったぞ。決着は人の手でつけるとな。人の結束力を見せてやる!』
魔王さんは未だに理解できていないご様子。
でも、ヘルムは強気だよ。
なんであんなに強気なんだ?
集約の乙女の効果は大気中の魔力を集めること――――。
――……集める……。
ちょっと待て……。大気中の魔力を集める…………。
ヘルムの元にはラゴットの勢力がいる……。
ラゴット……。
タリスマン……。
不祥事……。
不祥事後、欠陥のタリスマンをエクスペンダブルズと名を変えて、消費アイテムとして売り出せば、人気爆発。
大陸中の冒険者は、駆け出しから、ヴィン海域のガチ勢までこぞって使用していた。
――……チャントカウンターでヴィン海域の空を調べた時の、魔力濃度の異常な数値たるや……。
あ――、この事、ヘルムが局長の時に報告したっけ?
まあ、報告しても意味なかったか。うん……。だって、大気中に魔力粒子を飛散させたかったって事だろう。報告しても、もみ消してたな。
――……この時のために……。
『この中で真っ先に理解したのは、やはりウィザースプーン君か。流石だ』
「なんじゃピート?」
教えろと、僕の傍らに来る魔王さん。
「捷利嚮導の乙女って、現状は全力じゃないんですよね? 魔力不足で」
「そうじゃ」
「その部分は解決すると思います」
――――お偉い方々に説明すれば、兵仗を生み出した魔王さんを含め、皆さんそろって頬に汗が伝う。
戒律の乙女を奪還されても、ヘルムの余裕は変わらない。変わるわけもないか……。
魔力不足が解消されれば、それ以上の力を得るからな……。
映像に映る表情は、相も変わらず見下した笑みだ。
「うるさいの!」
お! 魔王さんの声音が荒ぶる。
シーツみたいなのを目にしてから、気分を害しているようだ。
『戒律の乙女の効果は強大。だからこそ、そこを主目標として狙ってくれるのを願っていたよ。ここは感知されてほしくなかったからね。徹底したよ。郭大の乙女を囮にし、更に隠匿の乙女まで使用したのだから』
「隠匿の乙女――――」
って、なんぞや?
魔王さんを見れば、兵仗の効果を説明してくれるだろう。
「あの外套じゃ。纏った全てを隠し通すことが出来る。視覚、感覚、魔力。全てから隠せる。作り手の妾も感知できん」
何それ! 欲しいんですけど。のぞきとか好き放題出来るよね。
「邪なことは考えるなよ」
「あ、はい……」
ノゾキ、ヨクナイ。
『では、ここにあるものをお披露目しよう』
なんかいちいち演出くさい初老だな。
取り巻きが隠匿の乙女を取れば、出てきたのは横格子状の金属カバー。
広さは畳二畳といったところ。
あのカバーの下にとっておきが隠されているわけだ。
「魔王さん」
顔を見れば、荒ぶっていた声の時と打って変わって、しらけたものになっていた。
「なんじゃ、集約の乙女ではないか」
またも新しい兵仗。
でも、リアクションからして、大して脅威がないみたいだけども。
『なんだ、驚嘆にはほど遠いな。魔王』
「集約の乙女をどう活用するのか知っておるのか?」
――――集約の乙女なる兵仗は、大気中にある魔力を集めて、術者の魔力を補う兵仗だそうだ。
間断なく魔力を取り入れることで、魔法を永続的にしようできるのが、この兵仗の特徴。
大魔法を連続して使えるので、壊滅的な攻撃力を有するらしいけども、それでもこの状況で、大仰に見せつけるものではないとのこと。
そもそもが、それを捷利嚮導の乙女に取り付けている意図が理解できないそうだ。
『ふ、製作者であるのに、利用方法が単純だな。阿呆め』
「あ?」
うわ~。すっごく怒ってらっしゃるよ。
ストレートに阿呆とか言われると、プライド高いから、相当頭に来るみたいだね。
体に紫色の光を纏ってる。
同色の髪が逆立って、魔力を迸らせてる。
戒律の乙女を取り込んだからか、願望破壊の乙女がなくても多少は大丈夫だというのが分かる。
『凄んでも所詮は小兵の威嚇。畏れなど毛ほどもない』
おうおう、随分と強気に挑発だな。
「わからんの~。大気中の魔力など言うほど脅威ではない。なのにその強気」
『脅威ではないか――――。そんな事だから殆どの兵仗が手元に戻ってこないのだ。節穴め!』
「あ!」
ますます紫色の光が強味を帯びる。
『先ほども言ったぞ。決着は人の手でつけるとな。人の結束力を見せてやる!』
魔王さんは未だに理解できていないご様子。
でも、ヘルムは強気だよ。
なんであんなに強気なんだ?
集約の乙女の効果は大気中の魔力を集めること――――。
――……集める……。
ちょっと待て……。大気中の魔力を集める…………。
ヘルムの元にはラゴットの勢力がいる……。
ラゴット……。
タリスマン……。
不祥事……。
不祥事後、欠陥のタリスマンをエクスペンダブルズと名を変えて、消費アイテムとして売り出せば、人気爆発。
大陸中の冒険者は、駆け出しから、ヴィン海域のガチ勢までこぞって使用していた。
――……チャントカウンターでヴィン海域の空を調べた時の、魔力濃度の異常な数値たるや……。
あ――、この事、ヘルムが局長の時に報告したっけ?
まあ、報告しても意味なかったか。うん……。だって、大気中に魔力粒子を飛散させたかったって事だろう。報告しても、もみ消してたな。
――……この時のために……。
『この中で真っ先に理解したのは、やはりウィザースプーン君か。流石だ』
「なんじゃピート?」
教えろと、僕の傍らに来る魔王さん。
「捷利嚮導の乙女って、現状は全力じゃないんですよね? 魔力不足で」
「そうじゃ」
「その部分は解決すると思います」
――――お偉い方々に説明すれば、兵仗を生み出した魔王さんを含め、皆さんそろって頬に汗が伝う。
戒律の乙女を奪還されても、ヘルムの余裕は変わらない。変わるわけもないか……。
魔力不足が解消されれば、それ以上の力を得るからな……。
映像に映る表情は、相も変わらず見下した笑みだ。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ゲームの《裏技》マスター、裏技をフル暗記したゲームの世界に転生したので裏技使って無双する
鬼来 菊
ファンタジー
飯島 小夜田(イイジマ サヨダ)は大人気VRMMORPGである、『インフィニア・ワールド』の発見されている裏技を全てフル暗記した唯一の人物である。
彼が発見した裏技は1000を優に超え、いつしか裏技(バグ)マスター、などと呼ばれていた。
ある日、飯島が目覚めるといつもなら暗い天井が視界に入るはずなのに、綺麗な青空が広がっていた。
周りを見ると、どうやら草原に寝っ転がっていたようで、髪とかを見てみると自分の使っていたアバターのものだった。
飯島は、VRを付けっぱなしで寝てしまったのだと思い、ログアウトをしようとするが……ログアウトボタンがあるはずの場所がポッカリと空いている。
まさか、バグった? と思った飯島は、急いでアイテムを使用して街に行こうとしたが、所持品が無いと出てくる。
即行ステータスなんかを見てみると、レベルが、1になっていた。
かつては裏技でレベル10000とかだったのに……と、うなだれていると、ある事に気付く。
毎日新しいプレイヤーが来るゲームなのに、人が、いないという事に。
そして飯島は瞬時に察した。
これ、『インフィニア・ワールド』の世界に転生したんじゃね?
と。
取り敢えず何か行動しなければと思い、辺りを見回すと近くに大きな石があるのに気付いた。
確かこれで出来る裏技あったなーと思ったその時、飯島に電流走る!
もしもこの世界がゲームの世界ならば、裏技も使えるんじゃね!?
そう思った飯島は即行その大きな岩に向かって走るのだった――。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―
てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません)
ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。
苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。
錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。
グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。
上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。
広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる