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レコンキスタ

PHASE-35

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「おい」

「何でしょう」

幼龍ドラゴネットには言うとらん!」
 懸命に目を反らそうとしているシュパーブ君。

「動くな!」

「はい!」
 渋い声の愛玩生物が戦いている。

「聞いておるのであろう! おおかた、思い人が危機に瀕した時に助けだそうという腹積もりであろう。だから、妾の招集にも反応をしなかったのじゃな? いい加減せぬと、お前の所行をばらし――――」

「お久しぶりです! ビルギット様」
 ――――急にシズクさんが現れたよ。
 急すぎて、空間移動魔法を使用したのかすら分からない速さだった。
 何をあんなに焦っているのか?
 僕と目が合えば、照れくさそうにしているような、よそよそしいような――――。
 相も変わらず可愛いですな。ヴィン海域では無茶苦茶やってるけども。

「久しいなシズク」

「ああ姉さん! 何と情けない」
 お、カグラさん、シズクさんには弱いのかな。言われて作り笑いを見せた。

「脆弱でしかない者たちに囚われるとは。炎竜王も地に落ちたわね。ああ情けない」

「反論できないな……」
 姉として、妹には寛大なようだ。言われるがままだよ。
 うん、器の大きさが、胸の大きさなんだろう。
 うん……。可哀想に……。姉妹であそこまでサイズに差があるんだから。

「あら、貴女」

「ロール・ジャイロスパイクと申します。氷竜王さん」

「さん! へ~、たかが人間が、私に対してさん付けとか、可愛いからって調子に乗らないでね」
 なんでロールさんに当たりがきついのだろう?
 言われて、慌てて平謝りのロールさん。

「いい加減にせぬか! 嫌われるぞ、そんな小姑みたいな立ち位置でいると」
 と、魔王さんが言えば、静かになる。
 でもって――――、
「お久しぶりです。ピート様」

「お久しぶりです」
 カグラさんやロールさんの時とは打って変わって、典雅な挨拶をしてくるシズクさん。

「「「「様!?」」」」
 周囲の皆さんは、様の部分に引っかかったようだ。
 分かりますよ。一公務員に対して、魔王軍でも、二枚看板の片方が、僕を様付けとかね。

『まったく君は大したものだよ』

「おうヘルム。顔の具合はどうだい?」
 急に話しかけられても、もう何の新鮮味も無いな。
 例によって、ヘルムが空中に映し出される。
 このおっさんは初老なのに、ここまでして目立ちたいのだろうか? もしかして、自分が格好いいとか思ってる系初老?

『絶好調だよ。しかし、両脇に炎竜、氷竜の両王を居並ばせるとは、大したものだね』
「あなた如きじゃ、この位置に立つことは出来ないわね。ピート様と違って、魅力もなさそうだし」
『魅力はなくても志はある。だからこそ、人が集ってくれる』
「烏合の衆ばかりでよくもそれだけ言える。狭い世界で生きているから、周りの質の悪さに気づけないんでしょうね」
 と、ヴィン海域という限定的な場所でのみ活動している方が、言っております。

『生意気だな、氷竜王。私の同胞を侮辱するなよ』

「侮辱をしようがしまいが、結果は見えてるでしょう。私がここに来た時点で終わり」

『ああ、終わる。我らの勝利でな。炎竜王、これまでご苦労だった。本来、君の仕事は、捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデを王都まで運ぶこと。そこで役目は終わっていた。どれだけ膨大な魔力を持っていたとしても、この巨神の力を完全に出し切るのはやはり不可能であった』
 長々と、なんだよ、その実は本気じゃなかった。これからが真の戦いだ。みたいな逃げ口上は。
 大体なんで王都に運ぶんだよ。

『理由は簡単だ。王都は大陸の中心。様々なものが集まっている。修復、改修も、王都にある機材を使った方が早くていいからだ』
 お、今度はちゃんと心を読んできたな。
 映像ごしでも覗けるとか、便利だな。
 なんて思ってたら、〝どうも〟と、頭をさげてきた。本当にのぞき見が可能なようだ。

「わからんの~。カグラを超える魔力となると、絶好調時の妾か、アレくらいなものじゃ」
 アレってのは、邪神のことだな。

「超えることが出来る存在が、お前の取り巻きにいるとは思えんし、ありえん」
『あるさ。私は以前に言ったぞ。決着は人の手でつけると』
「妾の作品を使っておいてよく言う」
『だとしても、ここからは人の力よ。――――見せてやれ』
 と、背部が映し出されれば、白いシーツみたいなのが、たなびいている。
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