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レコンキスタ

PHASE-33

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「捕らえろ」
 本当に……、不利になったらこれだよ!

「ふん!」
 急いで動力室に戻って、ドアを閉める。
 ロック、施錠。
 なんかないのか!
 と、肩に背負っていた、銃床つきの銃をハンドルの隙間に通して、壁とドアに沿わせる。
 念のために、ヘルムが落としたググタムさんの銃も、同様に沿わせてドアの固定補強に使用する。

「くそ! 開かねえ!」
 フハハハハ――――。外開き構造だったことを悔いるがいい。
 よっし、今のうちにカグラさんを!
 急いで台座に戻る。

「引っ張りますよ。ドアが開かれるのも時間の問題なので、多少強引にいきます」

「構いません。ピート殿を信じます」
 捕らえられて辛いだろうに、なんて柔和な笑みだ。
 信じてくれているって台詞が嬉しいじゃないか。力が漲ってくるってもんだ。

「しょら!」
 ガッツリと密着。
 全裸の美人様と密着。
 妹さんとは天壌の差であるお胸様を有した美人様と密着。
 柔らかくも弾力のあるものが、僕のお腹部分に当たって――――、最高だぁぁぁぁぁあぁ!
 こんな状況なので、不謹慎でしょうが、とにかく最高なんです!

「く……」

「耐えてください」
 苦しそうだけど、無理矢理に全力で引っ張れば!

「おわ!?」
 台座の上から床に落ちてしまう。

「いてて……」

「大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」
 男前な声で返す。倒れた僕の上に乗る、全裸の美人様に対して――――。

「その様に凝視されると、流石に……」

「ですよね~」
 紳士たれ。
 でも、赤面する姿が可愛すぎる。
 すぐにポシェットから、アズナさんに借りた、まだら模様の上着を取り出して羽織らせた。

「ありがとうございます」

「いえいえ」
 立ち上がって、手を伸ばす。
 ペタリと座り込んだカグラさんがその手を取ろうとした時、
「やっと開いた!」
 まったく、空気の読めないトンチンカン共め!
 僕たちの世界に入ってくるんじゃないよ!

「よし! 捕らえ…………撤退!」
 ヘルムめ、入ってきて早々に、踵を巡らして逃げ出しやがった。
 まあ、わからんではない。
 座り込んでいるカグラさんの体は、紅蓮の炎に包まれていた。
 先ほどまでの柔和なものとは違う、炯眼にてヘルムと取り巻きを射る。
 弱っていてもそこは炎竜王。この状態でも、名のある冒険者ですら容易く倒せるはずだ。
 予備兵のような取り巻きでは、頼りなさすぎるよな。
 
 だがしかし、
「大丈夫ですか!? 捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデは、敵対する魔力を有する者にはダメージが」

「私は動力源でしたから。敵対設定はされていませんよ」
 なるほど。
 と、いう事は。
 悪い顔になる僕。

「ここからは、私がピート殿をお守りします」
 と、いう事になる。
 帰り道は、コソコソしないで、堂々と安心して出て行ける。
 再設定でカグラさんが敵性認識される前には、脱出しないとね。

 ――――はい! 楽でした。
 ね、誰も襲ってこなかった。
 悠々と来た道を戻るだけだった。
 カグラさんに肩を貸して、カグラさんもそれにあまえて、体を預けてくれた。
 そんな姿でも、僕を守ると言って、出口までずっと周囲を取り囲んでいたであろう、姿を見せなかった奴らを威圧してくれていた。
 体を支えてあげていた帰り道は、凄く幸せな時間だった。
 柔らかくていい香り。
 救い出したご褒美としては大満足だ。

 ――。

「さあ、外です」
 ドアへと手を伸ばし、開いて、カグラさんを先に出してあげる。

「心強い存在でした」
 笑んでからの、最高の賞賛だ。
 ナイトになった気分だよ。
 今の僕は格好いいと、自分で自分を褒めてあげたい。
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