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レコンキスタ
PHASE-30
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百八十度回せば、ガチャンと音がなる。
ドアを引けば、重さで抵抗があるけども、ゆっくりと開いていく。
「――――おお!」
明らかに室内の風景が変わった。
黒いロープ状の管がたくさん垂れ下がっている。
この管は見た記憶がある。
王都でヘルムと対峙していた時に、ダイアンから連絡が入って、それを映像として目にした時、ダイアンの後ろに映っていた風景だ。
「おっし!」
カグラさんは近いぞ。
「目指すのは――――」
独白と共に足を動かす。向かうは、管が集まっていく方向。
まだ見張りもいる可能性があるからな、周辺警戒を行いながら、素早く進んで行く。
といっても、ここは床も管だらけ。足下もよく確認して動かないと、足を取られて転倒してしまう。
「あぁぁぁぁあぁあ!?」
転倒してしまう。と、警戒していた矢先に転ぶところが何とも情けないじゃないか……。
しかも転んだ拍子に、下層に続く階段を転げ落ちてしまった。
「いたい……下手したら死んでたぞ」
存外、弾力のある管がクッションになってくれたから助かった。
階段下にはまたもドア。
黒い管は、壁の中に続いている。
どうやら、ドア向こうの部屋に繋がっているようだ。
ここもハンドルをせり上がらせてから回す。
開けば――――、
「カグラさん!」
狭い空間。
段差の高い位置に設けられた、台座に囚われていたカグラさん。
「ピート……ど、の……?」
弱々しくも、聞き覚えのある声に対して反応してくれる。
急ぎ、足を台座へと向かわせる。
「ご無事でよかった」
弱っているけども、意識はしっかりとしている。
今救い出せば、問題ないようだ。
しかし――――、何とも目のやり場に困る。
黒い管が全裸に絡まっていて、情欲をそそられてしまう……。
――……は! いかん! いかんぞ! ピートマックよ! これでは考え方が、下卑な歩哨たちと同じじゃないか!
だが、これは正直――――、見続けていたい気もする。
「んっ……」
急に、艶っぽい、エロい感じの声がカグラさんから漏れた。
囚われた姿とこの声で、しんぼうたまらんのですが。
不謹慎な僕。でも、カグラさんはそうはいかない。節操のない思考を猛反である。
艶っぽい声が上がると、ほのかに体が光る。
光は管の方へと吸い込まれていった。
なるほど。こうやって、魔力を吸収しているわけだ。
エロい考えを抱いている場合じゃない!
カグラさんを早く拘束から解放しないと!
管が邪魔をして足場は悪いけど、跳躍して段差へと移動し、軽快に台座へ駆け上がる。
「助けに来ました」
「お一人……で?」
「もちろんここまで来るのに、いろんな方々の力を借りてます。一人では無理ですよ」
本当の事だけは言わないとね。ここで格好つけて一人とか、分かりきった嘘を言うわけにはいかない。
捷利嚮導の乙女の内部からは一人だったけども、そこだけを抜粋して語るのは野暮だしね。
魔王さんが僕にお願いした事も、ちゃんと伝えた。
「主がですか」
「はい」
「そう……ですか」
嬉しそうな笑みである。
とりあえずは顔しか見れない。視線を下に移してしまえば、救出どころじゃなくなるからね。
右が深紅、左が紺碧からなる、シズクさんとは逆のオッドアイの美しさ。
直視できない魅力を感じて、そこからも目を反らしてしまうので、結局のところ明後日の方向しか見れない、ヘタレな僕。
「あの、これは引っ張ればいいんでしょうか?」
「多分……、これはただ私の体に巻き付いているだけなので……」
この管はドレインタッチの要領で作られているそうだ。
「では、失礼します」
引っ張るとなると、体をしっかりと抱かないと無理な状況。
全裸の美人様に密着するわけだから、一応の了承を得ないと。
「まったく、邪魔をするのが好きだね」
「ヘルム!」
「せめて、さん付けはしよ――――」
「うるせえぞ! ごらぁ!!!!」
言葉を遮ってやる。
何が邪魔をする。だ! このおいしい状況を邪魔してるのは誰だよ!
何の脈絡もなく現れやがって!!
「ぶっ飛ばすぞテメー!」
僕個人の事で、こんなに怒りを覚えたのは、ゲンジ砂漠にて、ジュラルミンさんとパゼットさんの戦闘に巻き込まれて、奈落に落ちそうになった時以来だな。
怒髪天を衝くと形容したいくらいに、怒りに支配される僕。
迫力に気圧されたのか、ヘルムの奴、怖じ気づいて後退りだ。
ドアを引けば、重さで抵抗があるけども、ゆっくりと開いていく。
「――――おお!」
明らかに室内の風景が変わった。
黒いロープ状の管がたくさん垂れ下がっている。
この管は見た記憶がある。
王都でヘルムと対峙していた時に、ダイアンから連絡が入って、それを映像として目にした時、ダイアンの後ろに映っていた風景だ。
「おっし!」
カグラさんは近いぞ。
「目指すのは――――」
独白と共に足を動かす。向かうは、管が集まっていく方向。
まだ見張りもいる可能性があるからな、周辺警戒を行いながら、素早く進んで行く。
といっても、ここは床も管だらけ。足下もよく確認して動かないと、足を取られて転倒してしまう。
「あぁぁぁぁあぁあ!?」
転倒してしまう。と、警戒していた矢先に転ぶところが何とも情けないじゃないか……。
しかも転んだ拍子に、下層に続く階段を転げ落ちてしまった。
「いたい……下手したら死んでたぞ」
存外、弾力のある管がクッションになってくれたから助かった。
階段下にはまたもドア。
黒い管は、壁の中に続いている。
どうやら、ドア向こうの部屋に繋がっているようだ。
ここもハンドルをせり上がらせてから回す。
開けば――――、
「カグラさん!」
狭い空間。
段差の高い位置に設けられた、台座に囚われていたカグラさん。
「ピート……ど、の……?」
弱々しくも、聞き覚えのある声に対して反応してくれる。
急ぎ、足を台座へと向かわせる。
「ご無事でよかった」
弱っているけども、意識はしっかりとしている。
今救い出せば、問題ないようだ。
しかし――――、何とも目のやり場に困る。
黒い管が全裸に絡まっていて、情欲をそそられてしまう……。
――……は! いかん! いかんぞ! ピートマックよ! これでは考え方が、下卑な歩哨たちと同じじゃないか!
だが、これは正直――――、見続けていたい気もする。
「んっ……」
急に、艶っぽい、エロい感じの声がカグラさんから漏れた。
囚われた姿とこの声で、しんぼうたまらんのですが。
不謹慎な僕。でも、カグラさんはそうはいかない。節操のない思考を猛反である。
艶っぽい声が上がると、ほのかに体が光る。
光は管の方へと吸い込まれていった。
なるほど。こうやって、魔力を吸収しているわけだ。
エロい考えを抱いている場合じゃない!
カグラさんを早く拘束から解放しないと!
管が邪魔をして足場は悪いけど、跳躍して段差へと移動し、軽快に台座へ駆け上がる。
「助けに来ました」
「お一人……で?」
「もちろんここまで来るのに、いろんな方々の力を借りてます。一人では無理ですよ」
本当の事だけは言わないとね。ここで格好つけて一人とか、分かりきった嘘を言うわけにはいかない。
捷利嚮導の乙女の内部からは一人だったけども、そこだけを抜粋して語るのは野暮だしね。
魔王さんが僕にお願いした事も、ちゃんと伝えた。
「主がですか」
「はい」
「そう……ですか」
嬉しそうな笑みである。
とりあえずは顔しか見れない。視線を下に移してしまえば、救出どころじゃなくなるからね。
右が深紅、左が紺碧からなる、シズクさんとは逆のオッドアイの美しさ。
直視できない魅力を感じて、そこからも目を反らしてしまうので、結局のところ明後日の方向しか見れない、ヘタレな僕。
「あの、これは引っ張ればいいんでしょうか?」
「多分……、これはただ私の体に巻き付いているだけなので……」
この管はドレインタッチの要領で作られているそうだ。
「では、失礼します」
引っ張るとなると、体をしっかりと抱かないと無理な状況。
全裸の美人様に密着するわけだから、一応の了承を得ないと。
「まったく、邪魔をするのが好きだね」
「ヘルム!」
「せめて、さん付けはしよ――――」
「うるせえぞ! ごらぁ!!!!」
言葉を遮ってやる。
何が邪魔をする。だ! このおいしい状況を邪魔してるのは誰だよ!
何の脈絡もなく現れやがって!!
「ぶっ飛ばすぞテメー!」
僕個人の事で、こんなに怒りを覚えたのは、ゲンジ砂漠にて、ジュラルミンさんとパゼットさんの戦闘に巻き込まれて、奈落に落ちそうになった時以来だな。
怒髪天を衝くと形容したいくらいに、怒りに支配される僕。
迫力に気圧されたのか、ヘルムの奴、怖じ気づいて後退りだ。
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