拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

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王都潜入

PHASE-29

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「助かったぞ」

「騒がしかったので、外の守りからこちらに来ましたが、正解でしたね」
 くそ! サージャスさんを相手にして敗北を経験した男だ。
 でも、冒険者くずれ達よりも、実力は格段に上だ。
 武器が王城庭園の時とは違い、手槍になってる。
 腰にはもちろん剣も帯びてるけど、サージャスさんに負けてから、武器を変えたのかな?

「さあ、こい」
 大仰に手槍の穂先をシュパーブ君に構えて、大音声。

「元気とうるさいのを履き違えた勇者バカか」

「ふん!」
 炎系の魔法をゲルニオが唱える。
 つぶてサイズの無数の火の玉が、こちらに飛んでくる。
 サージャスさんがザイオン氏を救った時のような、誘導する能力は無いようで、無軌道ではなく、真っ直ぐと飛んでくる。
 ゲルニオの人間性が出ているようだ。

「無駄だ」
 容易く冷たい息で無数の火の玉をかき消せば、即座にゲルニオの前まで移動し――、
「ぶらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 最強のかけ声と言っても過言ではないな……。
 愛らしい拳に氷を纏い、最強のかけ声と共に放たれた、正拳突き。

「なんと!?」
 格好良く現れたものの、ゲルニオの持つ手槍の柄が、愛らしい拳でたたき折られた。

「俺ちゃんって強いだろ」
「生意気な!」
「だから、元気とうるさいは違うぞ。横分けボーイ」
「黙れ!」
 抜剣するも。ひょいと躱す。

「お前たちも、ゲルニオに協力するんだ」
 戦闘を見ていた冒険者くずれも、ヘルムの言で動き出す。

「させないぞ」
 ググタムさんがナイフを銃に変えて、発射。
 流石はダークエルフ。エルフ族だから射撃は得意だ。
 一人の頭を撃ち抜いた。

「おのれ! 大切な同胞を!」
 怒れるゲルニオ。
 シュパーブ君からググタムさんにターゲットを変え、装填し終わった銃を剣で払うと、室内を舞う銃が、何の因果か、ヘルムの諸手の中に。

「いいプレゼントをありがとう。この銃なる武器も、今後の私の世界で活用したかったからね」

「あ! くそ、返せ!」
 焦るググタムさん。隙が生まれてしまう。
 そこにゲルニオの一撃。
 ――……背中を斬られ倒れた……。
 すぐに起き上がったから、傷の程度は浅いようだ。
 それでもすぐに片膝をついた。

「仕損じたか! ならば」

「ググタム!」
 ロウさんが割って入り、救おうとするが、
「機敏なだけだな!」
 ググタムさんに剣を向けたままの状態で蹴りを見舞う。
 倒れた棚に体を打ち付けるロウさん。

「まだまだだな」
 おい、強いじゃないか! ゲルニオ!
 容易くサージャスさんにやられたイメージなのに。
 サージャスさんが強すぎるってだけなんだろうけど。
 反省しないと。サージャスさんを物差しとして考えるべきじゃないな。相手の力の程度を見誤ってしまう。

「調子に乗るなよ」
 シュパーブ君がここでゲルニオを背後から狙えば、流石に新兵相手とは違い、余裕がないのか、躱すのに全力だ。
 体は一番小さいけど、現状ここで一番頼りになる存在だな。

「こう使うのかな?」
 ヘルムが銃口を向けれる方向は……、ググタムさん。

「させないニャ!」
 銃を構えて撃鉄を下ろし、シナンさんはヘルムを狙う。
 僕もロールさんから手を離して銃を構えようと、背負っていた銃を手にした時だった。
 
 ――――!?
 
 皆の動きが止まる。
 こっちだけじゃなく、向こうもだ。
 それくらいの振動が、室内にいる全員に伝わる。
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