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王都潜入

PHASE-27

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「まあ見てろ、嘴の黄色いルーキー共。俺ちゃんの力を」

「「「はい!」」」
 なんだこの光景は……。
 ぬいぐるみみたいなのに、深々と典雅な一礼をするというロウさん達の姿。
 やっぱり年上だからか? 形はこれでも百六十四歳だからな。
 
 愛玩生物が啖呵切って前に立つもんだから、向こうサイドは戦いが始まるという緊迫の場で、クスリと失笑が漏れた。
 ただ一人、ヘルムだけが口は真一文字だ。自然と手の甲に、残った手を添えている。
 氷の塊を見舞われた痛みが蘇ったのかな。

「油断するなよ。姿形は愛らしいが、ヴィン海域の生物だ」
 ヘルムの言葉に、笑んでいた者たちがヘルム同様に、口を真一文字へと変えた。
 ヴィン海域のブランド名はダテじゃないようだ。
 頭のおかしい連中が、日夜、殺し合いを心の底から堪能しているそんな世界。そこの住人となれば、やはり警戒レベルは格段に上がる。

「ドレッドノート・ロード・ポーツマスが子。シュパーブ・テメレーア・ポーツマスという」

「「「「ドレッドノート!!!!」」」」
 盛大にびびりたおす冒険者くずれ達。
 流石にドレッドノートさんの事はヴィン海域じゃなくても知られた名のようだ。
 口から出す水圧だけで、島を消し飛ばす存在だからね。ヴィン海域在住の、名のある冒険者に最も警戒されている存在でもある。
 
 笑みから真一文字、そして――――、震えだす口。
 明らかに前へと進む足が重くなったようだ。

「ちなみに親父殿は、俺ちゃんに対して子煩悩。俺ちゃんが酷い目に遭う時。それは親父殿が現れるという事」
 え~。父親の威光をここで出すの……。ダサいぞ百六十四歳!
 でも、効果は抜群。相手サイドはズサリと後ろに下がる。

「何を恐れる。ブラフだ。ドレッドノートがどうやってここまで来る? 空間移動魔法も使用出来ないんだぞ」
 馬鹿馬鹿しい冗談を真に受けるなと、ヘルムがお怒り。
 その言や正しいとばかりに、嘲笑するシュパーブ君。
 相手からしたら笑えない冗談だからな。

「油断せず倒せ」
 を合図に、愛玩生物に茶化されたと、お怒りの冒険者くずれの一人が、槍の穂先でシュパーブ君を捕捉。

「ふぅぅぅぅぅぅ――――」
 一吹きすれば、そこは最古参位エルダークラスの実力者。
 可愛い顔をしていても、サイコパスしかいないヴィン海域の住人だ。
 無慈悲に、迫ってきた冒険者くずれを氷の世界に閉じ込めた。
 懐かしいな~。シズクさんがちょっと手を動かせば、こんな感じになってたな。
 規模は向こうが圧倒的だけど。

「しょら!」
 ――……やっちゃったよ……。
 これだからガチ勢は…………。
 シズクさんの所は、氷の中に封じ込めたら、拳で氷ごと中の人を砕かないと気がすまないのだろうか……。
 とても見せられないので、僕はロールさんの目を諸手で塞いだ。
 ギリギリ間に合ったようで、ロールさんがゴア要素満載の光景を目にする事はなかった。

「凄いですニャ……」
 ゲンジ砂漠の面々とはいえ、そこは新兵。あそこがガチ勢の巣窟だった時を知らない方々にとって、凄惨な一撃を平然と行う愛玩生物に、恐れを抱いてしまったようだ。
 正常な精神だと思われる。

 僕の後ろでは、
「ぁえ~……」
 変な呻きを発しながら、ブンゴさんが気を失う。
 顔面蒼白になりながらも、タモンさんがそれを支えた。

「俺ちゃん強い! はっきりわかんだね。でもって、一切、容赦しないスタイル」

「これだから魔王軍は!!」
 お怒りのヘルム。
 端から見たら、シュパーブ君の声も相まって、完全にこちらが悪役みたいなんですけど……。
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