拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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王都潜入

PHASE-15

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「――……雲耀疆域ライトニングアーツの下位魔法……」
 光の柱が消え、そこから声がする。
 直撃だけど、無事なようで安心するけども、プスプスと白煙を体中から上げて、膝を突いた姿が目に飛び込んでくる。

「流石にこれは効いたみたいだな」
 ほくそ笑むグリー。

「大体、わかった……」
 笑みなど眼中に無いとばかりに、つと立ち大きく深呼吸を行うサージャスさん。
 自信満々だったグリーだったけど、この魔法でも、サージャスさんの心を折る事は出来なかったようだ。

「何が分かったんだよ!」

「貴男の不愉快な魔力稟賦ひんぷが」

「は?」
 何を訳の分からない事をと、首を傾げながら、もう一度ワンドを振り上げる。

「だから、もう分かったから。受けてあげる義理も無い!」

「決定権はお前にはねえよ! サージャス!!」

「貴男には更にない! 蜂群スターダスト
 サージャスさんが諸手を開いてグリーへと向ければ、赤い小石ほどの塊が無数に現出し、一斉にグリーへと向かっていく。
 赤い小石サイズの物体は、蜂のような機動で飛翔し、攻撃対象を見つけたように、グリーを襲い、ザイオン氏を拘束している亡者たちに取り憑く。
 グリーは亡者を盾にして、上手く難を逃れていた。
 取り憑いた時の衝撃が強かったようで、亡者がザイオン氏から離れた。

「いまです」
 サージャスさんの手招きにザイオン氏が頷き、合流して抱きついた。
 と、同時に、抱きつかれながらも、フィンガーズナップをサージャスさんが行えば、亡者に取り憑いた小石サイズのものが、ボンッと爆ぜた。
 小さいながらも威力は高く、取り憑かれた亡者すべてが霧散した。

「――…………はあ!?」
 難を逃れたグリーが素っ頓狂な声を上げる。
 グリーだけじゃなく、ミッシェルに、一時戦闘を中断し、状況を眺めていたレンショウ。そして、こちらサイドの皆さんも、驚きで目を丸くしていた。
 ――――魔法だ。
 紛う方なき魔法だった。

「魔法でしたよね」

「うん」
 ロールさんと顔を見合わせる。
 なぜ急に魔法? 
 百人長が試しにとばかりに、おもむろに魔法を唱えたけど、何も起こらなかった。
 なぜにサージャスさんだけが使えるんだ?

「な、なんなんだよ!」
 僕たちの思いを代弁してくれたのがグリーだというのが不愉快だけども、この際、お前を仲介にしてもいいから知りたいね。

「ボクの推測が的中しただけ」
「推測?」
戒律の乙女ヘルフィヨトルの効果」
「は?」
 グリーが首を傾げる。
 それは僕たちも同様だ。

「この兵仗の能力は魔力遮断。対象となるのは、敵対する者。そして、対象外となるのは戒律の乙女ヘルフィヨトルを使用する側の者」

「何を分かりきった事を!」

「そう、分かりきった事。だから簡単。遮断する能力は、個々が有している魔力稟賦ひんぷだと推測した」
 稟賦――――。つまりは持って生まれた特質。

「これは整備局の方々が詳しいんじゃないんですか? 魔力残留から使用者を特定できますよね」
 僕たちを見てそう言う。
 腰のポーチに入れているチャントカウンターには、魔法使用者の魔力残留を調べる能力もある。
 違反者が言い逃れできないように。
 で、それが何の関係があるの?
 皆は、なぜサージャスさんが魔法を使えたのかが知りたいんですよ。

「グリー。まあまあだった。貴男の雷柱まほう。と言っても、ダメージは言うほどない。ただ――――貴男の魔力稟賦ひんぷを知るには十分だった」
 何を言っているのか、訳が分からない……。
 ここに至るまで、皆の気持ちはコレで統一されている。
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