463 / 604
王都潜入
PHASE-06
しおりを挟む
「こいつかぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
問答無用に、ザイオン氏がブンディー・ダガーをグリーめがけて突き刺す。
「あぶな!」
とっさに壁の中に隠れると、程なくして、今度は石畳から上半身を出してくる。
「そんなもんで突き刺そうとするなよ。俺がベッドの中で突き刺してやるから」
「最低……」
場が凍りつくような、ロールさんの熱が通ってない語調。
他の女性陣たちも、これには激しく首肯で返した。
「なんだよ。いい女ばっかりだな。最低とか言ってるけども、俺と楽しめば、俺が最高って考えに変わるぜ」
「うるせえ!」
排莢からの即座に装填して、二発目を問答無用に撃つ。
鉛玉だ。スタン弾じゃない。当たれば命だって奪う事になる。平原で殺傷力を有する弾丸を使う覚悟はないと思っていたんだけどな。
こいつに対しては、引き金を引く食指が軽くなってしまう。
もし命を奪う事になったとしても、罪悪感に苛まれるという事すらないと自負してしまうくらいに。
「なんて危ない整備局員だ」
「うるせー! いいから二億きっちり払えや!」
怒れる僕を見て、
「ああ、もう……」
と、百人長が大きな嘆息を漏らした。
僕はどうやら、やらかしたようだ……。
嘆息が原因で、少し冷静になってきた。
「あの、すみません……」
「ウィザースプーンさん。我々はステルスミッションを実行中なんですよ。銃声を二度。しかも大声……」
「あ、はい……」
そうですよね。完全にやらかしてしまったね……。
ザイオン氏も大声を出したけど、僕がそれを指摘する資格はないな。現状、僕が一番うるさいんだから。
「百人長、しかたないですニャ。どのみち百人長が、【よし、完了】って言ってる時点でばれてましたニャ」
「お、おう……。それもそうだ……」
鋭角に突っ込んでくるシナンさんにたじたじになっている。
でも、どう言おうが、僕が悪いのが事実。
壁上で物見をしていたアズナさんから、
「敵兵、北より接近。数、二十一」
ばれている時点で、ハンドサインでなく口頭での報告。
独特な数え方だけど、猛禽の視力を持つ鳥人の報告だから、人数は間違いなくあっているだろう。
二十一。数の上ではこちらが有利だ。
こちらは三十人ほどで行動している。
でも、ここは敵のお膝元。即座に、現在接近している以上の兵を展開できる。
それに……。怒りで我を忘れていたけど、冷静になれば――――、
「なんで、あいつはあんな芸当が出来るんですかね?」
グリーは明らかに空間移動魔法を使用している。
戒律の乙女の効果の中で使用出来るのは可能なのだろうか。
「そっちは魔法使えないのかよ。可哀想に。こっちは使えるぜ」
と、手に雷を纏わせて、弾丸に対しての返礼とばかりに、その手を振り、僕に放つ――――。足下に小さな雷が迸る。
咄嗟にサージャスさんが防いでくれたから、直撃を見舞われずにすんだ。
「ありがとうございます」
「当然の事ですから。冒険者が、一般の方に力を行使するなんて許されませんので」
「いやいや、そいつがへんてこなもんを撃ってきたんだよ」
眉間を確実に狙いたかったよ。
だがこれは難儀だな。相手はどうやら、戒律の乙女の支配圏外なんだな。
そりゃそうだよな。使用する側も魔法が使用出来なくなるなんて、兵仗の効果としては頼りなさすぎるよね。
対象側にだけ発揮してこその兵仗だろうからな。
「ところでグリー――――」
「さっきはそこの整備局員に邪魔されたが――――、さんな! 十ぐらい歳が離れてんだ! さん付けしろよ、昔のように!」
うわ~。ださいやつだ。変なところにこだわりを持ってる。女性陣の渋面に拍車がかかってるよ。
問答無用に、ザイオン氏がブンディー・ダガーをグリーめがけて突き刺す。
「あぶな!」
とっさに壁の中に隠れると、程なくして、今度は石畳から上半身を出してくる。
「そんなもんで突き刺そうとするなよ。俺がベッドの中で突き刺してやるから」
「最低……」
場が凍りつくような、ロールさんの熱が通ってない語調。
他の女性陣たちも、これには激しく首肯で返した。
「なんだよ。いい女ばっかりだな。最低とか言ってるけども、俺と楽しめば、俺が最高って考えに変わるぜ」
「うるせえ!」
排莢からの即座に装填して、二発目を問答無用に撃つ。
鉛玉だ。スタン弾じゃない。当たれば命だって奪う事になる。平原で殺傷力を有する弾丸を使う覚悟はないと思っていたんだけどな。
こいつに対しては、引き金を引く食指が軽くなってしまう。
もし命を奪う事になったとしても、罪悪感に苛まれるという事すらないと自負してしまうくらいに。
「なんて危ない整備局員だ」
「うるせー! いいから二億きっちり払えや!」
怒れる僕を見て、
「ああ、もう……」
と、百人長が大きな嘆息を漏らした。
僕はどうやら、やらかしたようだ……。
嘆息が原因で、少し冷静になってきた。
「あの、すみません……」
「ウィザースプーンさん。我々はステルスミッションを実行中なんですよ。銃声を二度。しかも大声……」
「あ、はい……」
そうですよね。完全にやらかしてしまったね……。
ザイオン氏も大声を出したけど、僕がそれを指摘する資格はないな。現状、僕が一番うるさいんだから。
「百人長、しかたないですニャ。どのみち百人長が、【よし、完了】って言ってる時点でばれてましたニャ」
「お、おう……。それもそうだ……」
鋭角に突っ込んでくるシナンさんにたじたじになっている。
でも、どう言おうが、僕が悪いのが事実。
壁上で物見をしていたアズナさんから、
「敵兵、北より接近。数、二十一」
ばれている時点で、ハンドサインでなく口頭での報告。
独特な数え方だけど、猛禽の視力を持つ鳥人の報告だから、人数は間違いなくあっているだろう。
二十一。数の上ではこちらが有利だ。
こちらは三十人ほどで行動している。
でも、ここは敵のお膝元。即座に、現在接近している以上の兵を展開できる。
それに……。怒りで我を忘れていたけど、冷静になれば――――、
「なんで、あいつはあんな芸当が出来るんですかね?」
グリーは明らかに空間移動魔法を使用している。
戒律の乙女の効果の中で使用出来るのは可能なのだろうか。
「そっちは魔法使えないのかよ。可哀想に。こっちは使えるぜ」
と、手に雷を纏わせて、弾丸に対しての返礼とばかりに、その手を振り、僕に放つ――――。足下に小さな雷が迸る。
咄嗟にサージャスさんが防いでくれたから、直撃を見舞われずにすんだ。
「ありがとうございます」
「当然の事ですから。冒険者が、一般の方に力を行使するなんて許されませんので」
「いやいや、そいつがへんてこなもんを撃ってきたんだよ」
眉間を確実に狙いたかったよ。
だがこれは難儀だな。相手はどうやら、戒律の乙女の支配圏外なんだな。
そりゃそうだよな。使用する側も魔法が使用出来なくなるなんて、兵仗の効果としては頼りなさすぎるよね。
対象側にだけ発揮してこその兵仗だろうからな。
「ところでグリー――――」
「さっきはそこの整備局員に邪魔されたが――――、さんな! 十ぐらい歳が離れてんだ! さん付けしろよ、昔のように!」
うわ~。ださいやつだ。変なところにこだわりを持ってる。女性陣の渋面に拍車がかかってるよ。
0
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
【完結】「聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした」
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。
神獣に転生!?人を助けて死んだら異世界に転生する事になりました
Miki
ファンタジー
学校が終わりバイトに行く途中、子供を助けて代わりに死んでしまった。
実は、助けた子供は別の世界の神様でお詫びに自分の世界に転生させてくれると言う。
何か欲しい能力があるか聞かれたので希望をいい、いよいよ異世界に転生すると・・・・・・
何故か神獣に転生していた!
始めて書いた小説なので、文章がおかしかったり誤字などあるかもしてませんがよろしくお願いいたします。
更新は、話が思いついたらするので早く更新できる時としばらく更新てきない時があります。ご了承ください。
人との接し方などコミュニケーションが苦手なので感想等は返信できる時とできない時があります。返信できなかった時はごめんなさいm(_ _)m
なるべく返信できるように努力します。
異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる