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王都潜入

PHASE-06

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「こいつかぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
 問答無用に、ザイオン氏がブンディー・ダガーをグリーめがけて突き刺す。

「あぶな!」
 とっさに壁の中に隠れると、程なくして、今度は石畳から上半身を出してくる。

「そんなもんで突き刺そうとするなよ。俺がベッドの中で突き刺してやるから」

「最低……」
 場が凍りつくような、ロールさんの熱が通ってない語調。
 他の女性陣たちも、これには激しく首肯で返した。

「なんだよ。いい女ばっかりだな。最低とか言ってるけども、俺と楽しめば、俺が最高って考えに変わるぜ」

「うるせえ!」
 排莢からの即座に装填して、二発目を問答無用に撃つ。
 鉛玉だ。スタン弾じゃない。当たれば命だって奪う事になる。平原で殺傷力を有する弾丸を使う覚悟はないと思っていたんだけどな。
 こいつに対しては、引き金を引く食指が軽くなってしまう。
 もし命を奪う事になったとしても、罪悪感に苛まれるという事すらないと自負してしまうくらいに。

「なんて危ない整備局員だ」

「うるせー! いいから二億きっちり払えや!」
 怒れる僕を見て、
「ああ、もう……」
 と、百人長が大きな嘆息を漏らした。
 僕はどうやら、やらかしたようだ……。
 嘆息が原因で、少し冷静になってきた。

「あの、すみません……」

「ウィザースプーンさん。我々はステルスミッションを実行中なんですよ。銃声を二度。しかも大声……」

「あ、はい……」
 そうですよね。完全にやらかしてしまったね……。
 ザイオン氏も大声を出したけど、僕がそれを指摘する資格はないな。現状、僕が一番うるさいんだから。

「百人長、しかたないですニャ。どのみち百人長が、【よし、完了】って言ってる時点でばれてましたニャ」

「お、おう……。それもそうだ……」
 鋭角に突っ込んでくるシナンさんにたじたじになっている。
 でも、どう言おうが、僕が悪いのが事実。
 
 壁上で物見をしていたアズナさんから、
「敵兵、北より接近。数、二十一ふたじゅうひと
 ばれている時点で、ハンドサインでなく口頭での報告。
 独特な数え方だけど、猛禽の視力を持つ鳥人タンガタ・マヌの報告だから、人数は間違いなくあっているだろう。
 二十一。数の上ではこちらが有利だ。
 こちらは三十人ほどで行動している。
 でも、ここは敵のお膝元。即座に、現在接近している以上の兵を展開できる。
 それに……。怒りで我を忘れていたけど、冷静になれば――――、
「なんで、あいつはあんな芸当が出来るんですかね?」
 グリーは明らかに空間移動魔法を使用している。
 戒律の乙女ヘルフィヨトルの効果の中で使用出来るのは可能なのだろうか。

「そっちは魔法使えないのかよ。可哀想に。こっちは使えるぜ」
 と、手に雷を纏わせて、弾丸に対しての返礼とばかりに、その手を振り、僕に放つ――――。足下に小さな雷がほとばしる。
 咄嗟にサージャスさんが防いでくれたから、直撃を見舞われずにすんだ。

「ありがとうございます」

「当然の事ですから。冒険者が、一般の方に力を行使するなんて許されませんので」

「いやいや、そいつがへんてこなもんを撃ってきたんだよ」
 眉間を確実に狙いたかったよ。
 だがこれは難儀だな。相手はどうやら、戒律の乙女ヘルフィヨトルの支配圏外なんだな。
 そりゃそうだよな。使用する側も魔法が使用出来なくなるなんて、兵仗の効果としては頼りなさすぎるよね。
 対象側にだけ発揮してこその兵仗だろうからな。

「ところでグリー――――」

「さっきはそこの整備局員に邪魔されたが――――、さんな! 十ぐらい歳が離れてんだ! さん付けしろよ、昔のように!」
 うわ~。ださいやつだ。変なところにこだわりを持ってる。女性陣の渋面に拍車がかかってるよ。
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