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変転

PHASE-39

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「来なきゃよかったぜ。義理で来たってのに」
 ケルプト山の森の中で、怪我をしていたところを助けた事を恩義に思ってくれてたんだな。
 存外、律儀だな。ルール無用の嫌われトレジャーハンターだと思ってたんだけど。
 
「素直にありがとうございます」
「違反金とか言う前に、その言葉が先に欲しかったぜ」
「でも――――規則なんで」
「はいはい……。まあ、義理もあるが、こっちも踊らされたからな。仮面の男に」
「!?」
 
 ――――バラクーダとガリンペイロのトップの所へ現れたのは、ヘイターだったそうだ。
 どうりで――――。ノムロのおっさんは、馬鹿な子爵はトレジャーハンターを信用していないと言っていた。だから、依頼もしていない。
 情報が漏れていなかったにもかかわらず、森の中にて両ギルドが剣戟。
 原因を作ったのは、化石を見つけていたヘイター自身だったか。

 おおかた、ゲイアードさんが本当に自分の兄なのかを調べるために、両ギルドを使って、少しでも隙を作ろうとしていたんだな。
 結局は、ゲイアードさんに視線を警戒されて、隙を与える事は出来なかったみたいだけど。
 化石を利用して、自分たちを手玉にしていた事を知った両ギルドは怒り心頭。

「そういう情報を手に入れたら、直ぐに伝えてくれないと」

「しかたねえだろ。俺たちもつい最近、手にした情報なんだからよ。こっちはそれで何人かやられてんだ」
 意趣返しをすでに実行していたのか。といっても、組織の全体までは見えていなかったようで、首魁をヘルムでなく、ヘイターだと思っている。

 ――。

「どうしますか?」
 決定権は王様が持っている。セイロンさんを信じるのか。信じないのか。

「この者を信じよう」
 二つ返事だった。
 住民の避難誘導にも赴く素早い行動力。
 王様、判断力の速さに定評のある方なのかも知れないな。
 
 悪名で有名なトレジャーハンターギルドの人物なのに、信じるってのが、寛大なのか鈍いのか。間違いなく前者だろう。決して後者を口にする事は許されない。

「話が早くて助かるぜ。お偉いさん」

「セイロンさん。この方が王様です」
 恰好で、貴族の人だとは理解していたけど、王様とは思わなかったみたいだな。

「へ? えっと……、へへへ――――」
 何を笑いで誤魔化してるんだろうか。直ぐさま穴から飛び出して、着地と同時にひれ伏してるけども……。

「よし! お前たち行動だ。王様がおられる。無様なところは見せるなよ」
 準備万端とばかりに、地下道にはすでにギルドの方々が待機していたようで、王様という発言に戸惑った声が響いて外に漏れてくる。
 内容としては、【なんでまだこんな所にいるんだ?】が多くを占めていた。
 間違いではない内容だと思う。
 普通なら王様ってすでに避難しているって考えるもんね。でも、我々の王様は民をおいては逃げ出さないのです。
 誇っていいよ。僕たちの王様は。
 
 ――――それにしても、
「セイロンさん。人員を動かせるくらいの力を有してたんですね」

「たまたま買い出しでここに来てたんだよ。そしたらこんな事に巻き込まれてな。まあ、俺たちも嫌われているとはいえ、一応は冒険者だからな」
 無断で王都に入ろうとしたりするような精神だから嫌われるわけですけどね。
 巻き込まれたってのも違う。無断で入ってきてる時点で加害側ですからね。
 その辺りは脱出が無事に済んだ後にはっきりとさせましょう。
 というか、何が義理だよ! 買い物が目的だったんじゃないか。律儀とか思って損したぞ。
 まあ、助かったのも事実だから、いいけど。

 ――――お、そうだ!

「もっと、協力的になる話をしましょうか」
「なんだよ?」
「化石発掘で、僕たち、バラクーダ、ガリンペイロを動かした仮面の男なら、ここに来てますよ。中心となって、王都に攻撃を仕掛けてます」
「まじか! 直接出向いてるのか! くそ! ぶっ飛ばしてやりてえ」
 そりゃ無理でしょ。王都近辺で活動している連絡要員の方々の実力じゃ、亡者にされてしまうのが関の山ですよ。

「けじめはここから脱出してからだな。それを知って俄然やる気が出てきたぜ!」

「なんなら、いまこちらに接近している奴らと戦ってもらえると助かるんですけど」
 意地悪な感じで言ってやる。

「わり、むり……」
 うん、知ってる。知っててわざと言ったから。
 でも、ここまで弱々しく返してくるとは思いも寄らなかった。自分の実力はちゃんと理解はしてるんだな。
 勝てないいくさはしない。
 流石はお留守番要員である。
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