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変転

PHASE-26

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「駆けつけたとして、役に立ちそうもない者達ばかりかな?」
 ずかずかと人の心ばかりを覗きやがって! でも、このままじゃ本当にまずい。兵士の方々じゃ、難しい相手だ。
 魔法がないと亡者は倒せない……。兵士で魔法を使えるのは一部だ。

「心配しなくてもいい。ここには集わないから。いまから起こることでね」
 まだなにか企ててるのかよ。
 ヘルムは、ヘイター、アルコンと関係を持っている。
 となれば、ゲルニオってのと、隻眼の屠竜者ドラゴンベインであるダイアンが参戦してくる可能性が高いな。
 もしくはもうどこかで行動しているって考えるべきか。

「思慮深いのはいいことだ。やはり私の下で働かないか?」

「冗談。御免こうむりますよ。で、何をするつもりです」

「ふむ――――」
 もったいつけないでいいからさっさと言えよ。あんたの正体がこういう人間だと明かした時点で、隠し事なんて必要ないだろうに。
 こちらの耳を自分に傾倒させようとしている間の取り方だ――――。

「おっと! ヘルムさん」
 ヘイターが亡者の動きを止めて、ヘルムの元へと一足飛びで移動する。

『お~い。聞こえてるか~』
 ヘイターの腹部から急に声が聞こえてきた。

「よっこいしょ」
 何でもありだな……。ローブの下、黒いスーツ姿が見えたと思った次には、魔石鏡が出てきた。
 サイズは姿見。どうやって出したのやら……。

「首尾は?」
 魔石鏡に向かってヘルムが問えば、
『滞りなく進んだ――――とはいかなかった。こっちサイドが大分やられた。てか、このまま続けたら大敗北だぜ』

「所詮は子爵の子飼いだ。減っても構わん」
 子爵様も自分の掌の中って感じだな。

『子爵の兵はともかく、俺たちにまで累がおよぶぜ』
「それだけは避けるように。同士は新しき世に必要だからな。切り札を使え。最初から使ってもよかったが、子爵の子飼いと、そこで手に入れた物で、所有権の悶着は避けたかったからな。相手に間引けるだけ間引いてもらえ」
『だな』
「切り札で、奥の手を何としても入手してくれ」
『オーキードーキー』
 何かしらやってるみたいだけど、こっちにとって最悪なことだというのは間違いないな。

「何をしておる?」
 代弁してくれる魔王さん。小さい体ですっごく高慢ちきに上から問うています。
 ただでさえ嫌悪しているヘルムの顔が不快なものに変わる。

「直ぐに分かる」
 にべもなく返された。
 
 ――――戦闘は続く。
 亡者の数は少なくなってきたけど、きりがないのも事実。
 アルコンもケーシーさん相手に粘っている。
 魔王さんは腕組みをして、ヘルムを凝視。
 忌み嫌う存在の凝視に受けて立つとばかりに、ヘルムも視線を逸らそうとはしない。
 
 ――――。

『効果は絶大だ』
 嬉々としたダイアンの声が耳に届くと、魔王さんは魔石鏡を凝視する。

「そうか。忠誠心があだとなる連中ばかりだな」
『そんな奴らは嫌いじゃないがな。俺は。――――もうすぐ手に入る』
「ヘルム!」
「何かな? 年長者に対しての口の利き方がなっちゃいないな」
「直ぐに分かるって言ったんだ。僕たちに教えていただけませんでしょうかね。お願いしますでございます」
「小馬鹿にした言い様だ。ヘイター」
「はあ~もう少し遊びたかったな~」
 パンと柏手を一つ。亡者の数が半分ほど残り、残りの半分は召喚していた六芒星の魔法陣に吸収されていった。
 その後、魔法陣も霧散して消えた。

「半分は保険で」

「どうした? この程度なら保険にもならないが?」
 リューディアさんの登場後は落ち着いたゲイアードさん。語調もたたずまい同様だ。
 対してヘイターは、食指を口元で立てて、静かにと返してきた。

 ――。

「動かせそうか?」

『お~。あん? 動くぞ! ハハハ! こいつぁスゲー! 二つある半球に手を置いて考えるだけで動きやがる』
 ダイアンの楽しげな声だけが届いてくる。

「ええい!」
 反面、魔王さんの顔が曇る。どうやら会話の内容で何かしらを理解したようだ。
 相当にまずい状況のようだな……。
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