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変転
PHASE-13
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「とうとう姿を現したな。見なさいピート君。それがそいつの正体だ」
正体だって言われましてもね。上から目線で、髪と瞳の色が変わっただけで、正体は分からないんだけど。
そもそも、この世界ではこんな事は日常茶飯だから。死んでも蘇ったりする方々がおられる世界だからね。
髪と瞳が変わった程度じゃ、インパクトに欠けるよね。
見なさいとか言う前に、きちんと説明しろよ局長。
「あの~どちら様で?」
ここはまず、正体を知ろうじゃないか。
「ほう、随分と落ち着きのある者じゃな。流石は己が身よりも、幼子を救おうとする気骨ある者じゃ」
「あ、どうも」
レインちゃんの事を幼子と言ってるから、レインちゃんじゃなく、第三者なのは間違いない。レインちゃんだけど、レインちゃんじゃないんだな? それとも、レインちゃんの真の正体とかってやつかな?
「困惑した目で見るな。ちゃんと名乗ってやる」
黒いワンピースについた埃を手ではらいつつ、僕の前に立つと、小さな体で腕を組んで胸をはり、
「妾はビルギットじゃ」
「ビルギットさんですか?」
ん? ビルギット?
「ビルギット・ピア・ヴァルバディッシュじゃ」
「――………………って、魔王じゃないか!」
「さよう、妾が魔王じゃ」
ふぁ!? 冗談じゃ……、ないようだな。
そうだよね。こんなシリアスな展開になっている時に、冗談なんて言わないよね。
間違いなくシリアス展開だ。僕なんて、お腹に穴が空いて死にかけたわけだし。
「本当に魔王さん?」
「しつこいの~女人に嫌われるタイプじゃな」
ぐっは! 一番ダメージが大きいんですけど……。
自信に満ちた笑みだ。レインちゃんの元気な笑みとは違う。権力者のものだ。
シュパーブ君は直ぐさま魔王さんの前で跪いてるし。
ぱっと見、子供が足下にぬいぐるみを落としたようにも見える光景だな。
「魔王。この世界を歪めた存在!」
「世迷い言を、妾がいつ世界を歪めた」
「貴様が前王と会談し、いまのシステムを作り出したことだ!」
「よいではないか。人々は平和にすごしている」
――――見下しながらの熱のこもっていない口調。
それで局長の発言に返していくものだから、怒りを抱く局長のこめかみに浮き出た血管からは、鮮血がいまにも噴き出しそうな勢いだ。
血管が激しく蠢いて、生き物を飼っているみたいだ。
会談によって、一般人に被害が出るって事は極端に減ったからね。魔王さんの言うことは間違ってはいないんだけども。
「何が平和だ! いびつなのだ! 偽りの平和なのだよ。真に平和というのならば、魔族などいらんのだ! その事も分からんとは、流石は兄に邪神をもつだけ――――」
言い終えることなく、突如と発生した吹き荒ぶ風によって、局長は言葉を封じられた。
目に土埃が入らないように、腕で顔を覆いながら状況を窺っていると、局長に向けて、魔王さんが腕を振り切っていた。
発生した突風は、魔王さんが起こしたものか。
「妾は寛大ではあるが、あれと並べられると吐き気を催す」
邪神が復活する時に言ってたな。妹には、これ、それ、あれの指示代名詞で呼ばれてたって。嘘じゃなかったみたいだな……。
「ふっ、この程度で私が臆するとでも?」
「の、わりには、声に張りがないの~。肝を冷やしておるのではないかえ?」
体型と語り方が全くもってマッチしていないよ魔王さん……。
「言ってくれる。そよぐ風ていどしか生み出せぬ貴様など、恐るるに足らず。ここで消し去ってくれる」
「それが出来るとでも思っているのか?」
「くっ……」
魔王さんとレインちゃんが同一人物なのかは分からないけども、ケーシーさんは、親バカが発動するくらい、レインちゃんを溺愛してるからね。
消し去る発言イコール、ケーシーさんにとってのは、絶対に倒さなければならない敵。
だから、圧が凄い凄い。
正体だって言われましてもね。上から目線で、髪と瞳の色が変わっただけで、正体は分からないんだけど。
そもそも、この世界ではこんな事は日常茶飯だから。死んでも蘇ったりする方々がおられる世界だからね。
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見なさいとか言う前に、きちんと説明しろよ局長。
「あの~どちら様で?」
ここはまず、正体を知ろうじゃないか。
「ほう、随分と落ち着きのある者じゃな。流石は己が身よりも、幼子を救おうとする気骨ある者じゃ」
「あ、どうも」
レインちゃんの事を幼子と言ってるから、レインちゃんじゃなく、第三者なのは間違いない。レインちゃんだけど、レインちゃんじゃないんだな? それとも、レインちゃんの真の正体とかってやつかな?
「困惑した目で見るな。ちゃんと名乗ってやる」
黒いワンピースについた埃を手ではらいつつ、僕の前に立つと、小さな体で腕を組んで胸をはり、
「妾はビルギットじゃ」
「ビルギットさんですか?」
ん? ビルギット?
「ビルギット・ピア・ヴァルバディッシュじゃ」
「――………………って、魔王じゃないか!」
「さよう、妾が魔王じゃ」
ふぁ!? 冗談じゃ……、ないようだな。
そうだよね。こんなシリアスな展開になっている時に、冗談なんて言わないよね。
間違いなくシリアス展開だ。僕なんて、お腹に穴が空いて死にかけたわけだし。
「本当に魔王さん?」
「しつこいの~女人に嫌われるタイプじゃな」
ぐっは! 一番ダメージが大きいんですけど……。
自信に満ちた笑みだ。レインちゃんの元気な笑みとは違う。権力者のものだ。
シュパーブ君は直ぐさま魔王さんの前で跪いてるし。
ぱっと見、子供が足下にぬいぐるみを落としたようにも見える光景だな。
「魔王。この世界を歪めた存在!」
「世迷い言を、妾がいつ世界を歪めた」
「貴様が前王と会談し、いまのシステムを作り出したことだ!」
「よいではないか。人々は平和にすごしている」
――――見下しながらの熱のこもっていない口調。
それで局長の発言に返していくものだから、怒りを抱く局長のこめかみに浮き出た血管からは、鮮血がいまにも噴き出しそうな勢いだ。
血管が激しく蠢いて、生き物を飼っているみたいだ。
会談によって、一般人に被害が出るって事は極端に減ったからね。魔王さんの言うことは間違ってはいないんだけども。
「何が平和だ! いびつなのだ! 偽りの平和なのだよ。真に平和というのならば、魔族などいらんのだ! その事も分からんとは、流石は兄に邪神をもつだけ――――」
言い終えることなく、突如と発生した吹き荒ぶ風によって、局長は言葉を封じられた。
目に土埃が入らないように、腕で顔を覆いながら状況を窺っていると、局長に向けて、魔王さんが腕を振り切っていた。
発生した突風は、魔王さんが起こしたものか。
「妾は寛大ではあるが、あれと並べられると吐き気を催す」
邪神が復活する時に言ってたな。妹には、これ、それ、あれの指示代名詞で呼ばれてたって。嘘じゃなかったみたいだな……。
「ふっ、この程度で私が臆するとでも?」
「の、わりには、声に張りがないの~。肝を冷やしておるのではないかえ?」
体型と語り方が全くもってマッチしていないよ魔王さん……。
「言ってくれる。そよぐ風ていどしか生み出せぬ貴様など、恐るるに足らず。ここで消し去ってくれる」
「それが出来るとでも思っているのか?」
「くっ……」
魔王さんとレインちゃんが同一人物なのかは分からないけども、ケーシーさんは、親バカが発動するくらい、レインちゃんを溺愛してるからね。
消し去る発言イコール、ケーシーさんにとってのは、絶対に倒さなければならない敵。
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