328 / 604
ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ
PHASE-30
しおりを挟む
――――。
はあ……。
硬い岩肌の上で起床。皆さん復活したって事で、僕に貸し出された寝袋は故人のものでなく、使い古されたボロボロの処分前の物だった……。
辛い……。これならシズクさん達の方がいいや。
シズクさんがここの人達より怖くない気がしてきた。トリックが分かったからね。
死んでも蘇る。だから、皆、命を軽はずみに散らす。しかもその軽さを、当人達はまったく気にしてない。散り様に美学があるとさえ考えていそうだ……。
シズクさんの【一度、死んでみたら考え方も変わるかしら?】って脅しの台詞が脳内で再生されたけど、一度って、蘇生込みでの発言だったんだろうね。
死んでも蘇らせるから、ヴィン海域の脅し文句としては軽めの発言だったのかもしれない。
ここを知らない人が聞いたら、恐怖でしかないけどね……。
でもって、なんだかんだで、シズクさんは僕の事を殺害しようとも考えてなかったし。
総合的に考えても、屋根もベッドもある向こうが断然いい。虹彩もしっかりしてるし。
――――周りを見れば、極甘の携行食をバクバク食べてる光景。
見てるだけで胸焼けがしてくるよ。
で、栄養補給が終われば――――。
「今回は勝つぞ!」
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
――――なんて?
てな感じで、昨日の朝と変わらぬ光景……。
本日も楽しそうに、馬鹿みたいに走り出してる。昨日と違うのは、馬鹿みたいに走り出してる人数が多いって事だ。
大爆発に、振動。一つ大きな光が輝けば、そこではいくつかの命が消えているんだろう。
透明度の高い海には不釣り合いな血煙が舞い、阿鼻叫喚だ。
でも不思議と、叫び声の中で、笑い声が耳朶に届く絶命が目立つというね……。
死ぬ時の辞世の発言が、〝よっし! これで女神ちゃんと、やれ…………〟事切れたから最後までは聞き取れなかったけど、言わんとしている事は理解できた。
蘇るから、辞世ってのも違うんだろうけど……。
端的に、腐った連中である。
――――。
――――本日も楽しそうに――――、以下略。
死ねば、コンクエストの決着がつく度に復活し、また戦えば死ぬ。
グルグルグルグルと円環から抜け出せない、というか、抜け出さない。そんな地獄の世界を謳歌する方々。
エクスペンダブルズが空に舞い、魔法が暴走し、通常の威力と桁違いの魔法が発動。
大きな水柱に、小島が半分消え去ったり、なくなったり、また現れたり。ここでのありふれた日常を目にする僕。
ここに来て一週間。慣れてきたってのが怖いけども――、残念ながら慣れてきた……。
――――最近、僕を脅かす存在が現れた。
それは――――、鏡だ。
僕は鏡を見るのが怖くなってきている。目が……、目が、ここの方々のように、市場で売れ残った魚のような目になっていないだろうか? と、憂い、怯えながら覗き込んで、変化のない事に安堵の息を漏らしてから、身だしなみを整え始める……。
――。
「聞いたか! ドレッドノートを倒したってよ!」
「しゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
飛び跳ねたり、抱き合ったりと、体で喜びを表現する方々。
「これは私たちも手柄を得ないと!」
十三歳の、うら若きという表現にもまだ当てはまらないであろう少女が、血気盛んに駆けていく。
虹彩はないけど……。
それに続けと、バロニアさんとザンデさん。
ありがた迷惑な疾風脚を僕の足に唱える。
なんで僕が、随伴する事が当たり前になっているのだろう?
――――小島から海上、また小島と連れ回される。
エライもんで、補助なしで疾風脚を操れるようになっている僕。
「なんて生き生きと……」
虹彩はないけど……。
マリアンさんは細身の双剣を諸手にして、向かってくるシズクさんの配下をバッサバサと斬り屠り、遠くの相手には詠唱からの大魔法。
激しい雷が天から降り注ぎ、相手を黒焦げにしていく。
仕損じたのは、バロニアさんが大剣を使用し、薪割りの要領で、豪腕と大剣の自重を使っての唐竹割り。
補助魔法でパーティーの能力を底上げしつつ、いくつものロングナイフを宙に舞わせて標的を切り刻んでいくザンデさん。
ドレッドノートさんの時はあれだったけど、強いじゃないか。
このパーティーに共通している事は、現況を最高に満喫しているという笑顔だ。
そんな方々を、僕は冷静に眺めている。
「慣れていくのね……自分でもわかる」
実戦見学初日は、あまりの凄惨さに気を失ったのに、今では普通に立っている。足が震えるなんて事もない。もちろん、抵抗はある。
あるんだけど――――、
飛び散る肉片。倒れていく双方。
でも、それらを目にしても、憐憫などの感慨が湧くって事がない。
どうせ生き返るんでしょ。と、思うと、いちいち取り乱すのが面倒になってきたからだ。
と、こういう考え方を抱いてしまっている僕は、元の生活に戻れるか心配になってくる……。
急性ストレス障害を発症し、それを経て、心的外傷後ストレス障害に苦しむ日々が訪れない事を切に願っている…………。
はあ……。
硬い岩肌の上で起床。皆さん復活したって事で、僕に貸し出された寝袋は故人のものでなく、使い古されたボロボロの処分前の物だった……。
辛い……。これならシズクさん達の方がいいや。
シズクさんがここの人達より怖くない気がしてきた。トリックが分かったからね。
死んでも蘇る。だから、皆、命を軽はずみに散らす。しかもその軽さを、当人達はまったく気にしてない。散り様に美学があるとさえ考えていそうだ……。
シズクさんの【一度、死んでみたら考え方も変わるかしら?】って脅しの台詞が脳内で再生されたけど、一度って、蘇生込みでの発言だったんだろうね。
死んでも蘇らせるから、ヴィン海域の脅し文句としては軽めの発言だったのかもしれない。
ここを知らない人が聞いたら、恐怖でしかないけどね……。
でもって、なんだかんだで、シズクさんは僕の事を殺害しようとも考えてなかったし。
総合的に考えても、屋根もベッドもある向こうが断然いい。虹彩もしっかりしてるし。
――――周りを見れば、極甘の携行食をバクバク食べてる光景。
見てるだけで胸焼けがしてくるよ。
で、栄養補給が終われば――――。
「今回は勝つぞ!」
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
――――なんて?
てな感じで、昨日の朝と変わらぬ光景……。
本日も楽しそうに、馬鹿みたいに走り出してる。昨日と違うのは、馬鹿みたいに走り出してる人数が多いって事だ。
大爆発に、振動。一つ大きな光が輝けば、そこではいくつかの命が消えているんだろう。
透明度の高い海には不釣り合いな血煙が舞い、阿鼻叫喚だ。
でも不思議と、叫び声の中で、笑い声が耳朶に届く絶命が目立つというね……。
死ぬ時の辞世の発言が、〝よっし! これで女神ちゃんと、やれ…………〟事切れたから最後までは聞き取れなかったけど、言わんとしている事は理解できた。
蘇るから、辞世ってのも違うんだろうけど……。
端的に、腐った連中である。
――――。
――――本日も楽しそうに――――、以下略。
死ねば、コンクエストの決着がつく度に復活し、また戦えば死ぬ。
グルグルグルグルと円環から抜け出せない、というか、抜け出さない。そんな地獄の世界を謳歌する方々。
エクスペンダブルズが空に舞い、魔法が暴走し、通常の威力と桁違いの魔法が発動。
大きな水柱に、小島が半分消え去ったり、なくなったり、また現れたり。ここでのありふれた日常を目にする僕。
ここに来て一週間。慣れてきたってのが怖いけども――、残念ながら慣れてきた……。
――――最近、僕を脅かす存在が現れた。
それは――――、鏡だ。
僕は鏡を見るのが怖くなってきている。目が……、目が、ここの方々のように、市場で売れ残った魚のような目になっていないだろうか? と、憂い、怯えながら覗き込んで、変化のない事に安堵の息を漏らしてから、身だしなみを整え始める……。
――。
「聞いたか! ドレッドノートを倒したってよ!」
「しゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
飛び跳ねたり、抱き合ったりと、体で喜びを表現する方々。
「これは私たちも手柄を得ないと!」
十三歳の、うら若きという表現にもまだ当てはまらないであろう少女が、血気盛んに駆けていく。
虹彩はないけど……。
それに続けと、バロニアさんとザンデさん。
ありがた迷惑な疾風脚を僕の足に唱える。
なんで僕が、随伴する事が当たり前になっているのだろう?
――――小島から海上、また小島と連れ回される。
エライもんで、補助なしで疾風脚を操れるようになっている僕。
「なんて生き生きと……」
虹彩はないけど……。
マリアンさんは細身の双剣を諸手にして、向かってくるシズクさんの配下をバッサバサと斬り屠り、遠くの相手には詠唱からの大魔法。
激しい雷が天から降り注ぎ、相手を黒焦げにしていく。
仕損じたのは、バロニアさんが大剣を使用し、薪割りの要領で、豪腕と大剣の自重を使っての唐竹割り。
補助魔法でパーティーの能力を底上げしつつ、いくつものロングナイフを宙に舞わせて標的を切り刻んでいくザンデさん。
ドレッドノートさんの時はあれだったけど、強いじゃないか。
このパーティーに共通している事は、現況を最高に満喫しているという笑顔だ。
そんな方々を、僕は冷静に眺めている。
「慣れていくのね……自分でもわかる」
実戦見学初日は、あまりの凄惨さに気を失ったのに、今では普通に立っている。足が震えるなんて事もない。もちろん、抵抗はある。
あるんだけど――――、
飛び散る肉片。倒れていく双方。
でも、それらを目にしても、憐憫などの感慨が湧くって事がない。
どうせ生き返るんでしょ。と、思うと、いちいち取り乱すのが面倒になってきたからだ。
と、こういう考え方を抱いてしまっている僕は、元の生活に戻れるか心配になってくる……。
急性ストレス障害を発症し、それを経て、心的外傷後ストレス障害に苦しむ日々が訪れない事を切に願っている…………。
0
お気に入りに追加
270
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
一振りの刃となって
なんてこった
ファンタジー
拙いですが概要は、人生に疲れちゃったおじさんが異世界でひどい目にあい人を辞めちゃった(他者から強制的に)お話しです。
人外物を書きたいなーと思って書きました。
物語とか書くのは初めてなので暖かい目で見てくれるとうれしいです。
更新は22:00を目安にしております。
一話一話短いですが楽しんでいただけたら幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
突然伯爵令嬢になってお姉様が出来ました!え、家の義父もお姉様の婚約者もクズしかいなくない??
シャチ
ファンタジー
母の再婚で伯爵令嬢になってしまったアリアは、とっても素敵なお姉様が出来たのに、実の母も含めて、家族がクズ過ぎるし、素敵なお姉様の婚約者すらとんでもない人物。
何とかお姉様を救わなくては!
日曜学校で文字書き計算を習っていたアリアは、お仕事を手伝いながらお姉様を何とか手助けする!
小説家になろうで日間総合1位を取れました~
転載防止のためにこちらでも投稿します。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる