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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ
PHASE-29
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* *
帰りたい……。この異世界から、心底、帰りたい……。
このまま夜になると、この辺も怖そうだから、必然的に足が冒険者という、ある意味アンデッドって呼んでもいいんじゃないかと思う方々がいる方向へと向く。
――――とにかく、帰らないと。
適当に理由をつけて帰らないと。
夜のとばりが下がる中、トボトボと歩き、明かりが灯された場に辿り着く。
明かりを合図に意を決する僕。
よし! 帰る言い訳をナイゼルさんに言って――――?
なんだ? 何かがおかしい。
先ほどまで馬鹿みたいに騒いでたのに、なんだこの森閑に支配された場は?
それに、なぜか皆さんが僕を見ている。
僕が笑いながら駆けだした姿を見て、おかしくなったと心配してくれてるのかな?
大丈夫、貴方方を越える乱痴気はこの世に存在しませんから。
「マジかよ」
ポツリと、僕に投げかけてくるような発言。誰が言ったのかな? と、思っていたら、僕の登場でざわざわから、徐々に騒がしくなる。
「ナイゼルさん?」
僕は帰る事を伝えようと思ったけども、僕の向けられる、市場の売れ残った魚の目の方々が怖いので、訳を聞く事にシフトチェンジ。
ナイゼルさんは僕の登場を待っていたとばかりに、僕の横に立つと、
「ええ――――向こうサイドからの伝達があったとおり。今回のコンクエストにおけるMVPは、王都整備局員、ピートマック・ウィザースプーン氏である。おめでとうございます! ピートさん」
「ふぁ!?」
何を言っているんだナイゼルさん。
やはり貴男は馬鹿なのか?
「聞きましたよ!」
何を! 近い、魚の目が近くて怖い!!
「あの氷竜王を倒したそうですね!!!!」
「ふぇ!? 倒した?」
「はっきりと氷竜王が言ったそうですよ。いや~ドレッドノートだと思ってたのに。まさかのヴィン海域実戦一日目でMVPなんて、未だかつていないですよ」
倒したって何だ? 僕は――……、もしかして……あれか? 足を滑らせてのやつか?
「すげ~な! 武器も使わず氷竜王に体当たりして押し倒す」
「その後、体を弄って、泣いて謝る氷竜王を無理矢理に抱いて、モノにしたとか」
まてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!! 出来るかそんな事! そこのモブ二人。適当な事を口にするんじゃないよ!
「それ嘘ですよ!」
否定しないと。
「そうなんですか?」
そうですよ。全く、何を信じるところがある。
「俺は見てたぜ」
何をだよ。
――――あ、この人、たしかダグラスさんとかいう、シズクさんにカチコチにされて粉々になった人だ。無精髭に、緑色の服に鎧皮の鎧。間違いないな。
「確かにウィザースプーンさんが、氷竜王と、ウンディーネのイスキの二名に挟まれながらも、凛とした不動の姿で立っていたのを見た。その後は記憶ないけどな」
貴男が見たのは、僕とシズクさんの会話のやり取りだよ。後ろに立ってたイスキさんは、僕を浜まで案内して、たまたま僕の後ろに立ってたんだよ!
お願いだから話をややこしくしないでいただきたい!!
「すげ~ウィザースプーンさん」
ロッケンジーさん。僕を尊敬の眼差しで見ないでください。
僕はひ弱な整備局員です。
「噂では、氷竜王は男嫌い。まぐわってみてどうでした? 噂通りなら――――生娘でしたよね?」
うるせー! 下卑た笑みを見せるな! 男性が苦手な初心な方なんだよ。
まぐわうとかいう発言やめろ。女握りもやめろ。そんな事をいちいち口にするな。僕はまだそんな経験したことないよ!
シズクさんサイド、なんでこんな事をするの? なぜに僕をMVPに仕立て上げるの? 理由を聞かないといけないよね。
でも、帰りたいという思いの方が強いし……。
「これは、明日からでも、ピートさんに参戦してもらうってのもありかもな」
「ないよ。ないですから! ね! ナイゼルさん。アンタ、いい加減にしろよ!」
僕は死にたくないんだ。帰りたいんだ。
「とりあえず、ピートさんのMVPを祝して胴上げだ!」
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
――――なんて?
魚の目をした方々が僕の周囲に集まると、一人の方に軽々と担がれて、皆さんが僕を支えてから――、
「「「「MVP! MVP! MVP! MVP!!!!」」」」
と、連呼しながら、空に向かって放り投げるという蛮行。
普通の胴上げならさ、ちょっとした高さで宙に浮く程度だけども、ここのガチ勢は何事も全力を出さないと気が済まないという、整備長には是非に見習ってほしい気概をお持ちなのだが……。
――……なんで僕は、空を飛んでるのか? と、錯覚するくらいに、宙を舞わなきゃいけないのか…………。
滞空時間が、長いんじゃあ…………。
股間のふわぁってなる感覚は、得もいえぬものがあるけども――――。
しかし、これが何度も何度も続くとね……。
もし、誰も受け止めてくれなかったら、僕の体が弾けるんじゃないかという恐怖が、落下する度に脳裏によぎってしまう地獄……。
「僕はただ、帰りたいだけなんだ…………」
帰りたい……。この異世界から、心底、帰りたい……。
このまま夜になると、この辺も怖そうだから、必然的に足が冒険者という、ある意味アンデッドって呼んでもいいんじゃないかと思う方々がいる方向へと向く。
――――とにかく、帰らないと。
適当に理由をつけて帰らないと。
夜のとばりが下がる中、トボトボと歩き、明かりが灯された場に辿り着く。
明かりを合図に意を決する僕。
よし! 帰る言い訳をナイゼルさんに言って――――?
なんだ? 何かがおかしい。
先ほどまで馬鹿みたいに騒いでたのに、なんだこの森閑に支配された場は?
それに、なぜか皆さんが僕を見ている。
僕が笑いながら駆けだした姿を見て、おかしくなったと心配してくれてるのかな?
大丈夫、貴方方を越える乱痴気はこの世に存在しませんから。
「マジかよ」
ポツリと、僕に投げかけてくるような発言。誰が言ったのかな? と、思っていたら、僕の登場でざわざわから、徐々に騒がしくなる。
「ナイゼルさん?」
僕は帰る事を伝えようと思ったけども、僕の向けられる、市場の売れ残った魚の目の方々が怖いので、訳を聞く事にシフトチェンジ。
ナイゼルさんは僕の登場を待っていたとばかりに、僕の横に立つと、
「ええ――――向こうサイドからの伝達があったとおり。今回のコンクエストにおけるMVPは、王都整備局員、ピートマック・ウィザースプーン氏である。おめでとうございます! ピートさん」
「ふぁ!?」
何を言っているんだナイゼルさん。
やはり貴男は馬鹿なのか?
「聞きましたよ!」
何を! 近い、魚の目が近くて怖い!!
「あの氷竜王を倒したそうですね!!!!」
「ふぇ!? 倒した?」
「はっきりと氷竜王が言ったそうですよ。いや~ドレッドノートだと思ってたのに。まさかのヴィン海域実戦一日目でMVPなんて、未だかつていないですよ」
倒したって何だ? 僕は――……、もしかして……あれか? 足を滑らせてのやつか?
「すげ~な! 武器も使わず氷竜王に体当たりして押し倒す」
「その後、体を弄って、泣いて謝る氷竜王を無理矢理に抱いて、モノにしたとか」
まてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!! 出来るかそんな事! そこのモブ二人。適当な事を口にするんじゃないよ!
「それ嘘ですよ!」
否定しないと。
「そうなんですか?」
そうですよ。全く、何を信じるところがある。
「俺は見てたぜ」
何をだよ。
――――あ、この人、たしかダグラスさんとかいう、シズクさんにカチコチにされて粉々になった人だ。無精髭に、緑色の服に鎧皮の鎧。間違いないな。
「確かにウィザースプーンさんが、氷竜王と、ウンディーネのイスキの二名に挟まれながらも、凛とした不動の姿で立っていたのを見た。その後は記憶ないけどな」
貴男が見たのは、僕とシズクさんの会話のやり取りだよ。後ろに立ってたイスキさんは、僕を浜まで案内して、たまたま僕の後ろに立ってたんだよ!
お願いだから話をややこしくしないでいただきたい!!
「すげ~ウィザースプーンさん」
ロッケンジーさん。僕を尊敬の眼差しで見ないでください。
僕はひ弱な整備局員です。
「噂では、氷竜王は男嫌い。まぐわってみてどうでした? 噂通りなら――――生娘でしたよね?」
うるせー! 下卑た笑みを見せるな! 男性が苦手な初心な方なんだよ。
まぐわうとかいう発言やめろ。女握りもやめろ。そんな事をいちいち口にするな。僕はまだそんな経験したことないよ!
シズクさんサイド、なんでこんな事をするの? なぜに僕をMVPに仕立て上げるの? 理由を聞かないといけないよね。
でも、帰りたいという思いの方が強いし……。
「これは、明日からでも、ピートさんに参戦してもらうってのもありかもな」
「ないよ。ないですから! ね! ナイゼルさん。アンタ、いい加減にしろよ!」
僕は死にたくないんだ。帰りたいんだ。
「とりあえず、ピートさんのMVPを祝して胴上げだ!」
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
――――なんて?
魚の目をした方々が僕の周囲に集まると、一人の方に軽々と担がれて、皆さんが僕を支えてから――、
「「「「MVP! MVP! MVP! MVP!!!!」」」」
と、連呼しながら、空に向かって放り投げるという蛮行。
普通の胴上げならさ、ちょっとした高さで宙に浮く程度だけども、ここのガチ勢は何事も全力を出さないと気が済まないという、整備長には是非に見習ってほしい気概をお持ちなのだが……。
――……なんで僕は、空を飛んでるのか? と、錯覚するくらいに、宙を舞わなきゃいけないのか…………。
滞空時間が、長いんじゃあ…………。
股間のふわぁってなる感覚は、得もいえぬものがあるけども――――。
しかし、これが何度も何度も続くとね……。
もし、誰も受け止めてくれなかったら、僕の体が弾けるんじゃないかという恐怖が、落下する度に脳裏によぎってしまう地獄……。
「僕はただ、帰りたいだけなんだ…………」
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