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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ
PHASE-05
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――――寝不足だよ。最悪のコンディションだよ。
いないと強く願いながら、イリースさんの影に怯えた夜だったよ……。
――。
「じゃあ、本日もやってやろうぜ!」
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
――――なんて?
ナイゼルさんが鞘からクレイモアを抜いて天にかざすと、大気を振動させる大音声が響き渡る。
そして――、前戦へ、飛んだり走ったりして進んで行っております。
「我々も行きましょう。いかんせん昨日は、ウィザースプーンさんを出迎えるために、セーフゾーンまで戻ってましたから。早く前戦に立ちたいですよ」
すみませんね。一人で行ってもいいんですよ。僕は後方待機推奨でいいですから。
待機ですよ。待機。支援なんてしないですよ。
「ウィザースプーンさんの歩みに合わせますから、共に進みましょう」
「僕に合わせたら、今日が終わりますよ」
「大丈夫ですよ。今日は始まったばかりです」
魚のような目なのに、快活だなおい。猟奇的にしか見えないんですけど……。
――――渋々と、駆け足。
さっさと一人で行ってくれていいのに……。
――……うへ~。初っぱなから険しい傾斜の崖だな。
「ここを登りますよ」
登るのか。担いで飛んでくれてもいいんですよ?
――――しんどいけども、登れないってわけじゃない。
登る時は手と足で体を支え、崖に体を密着させずに、胴体は離す。
これで摩擦の抵抗もなく、スムーズに登れて、体力の消耗も少ない。
――。
「ふう――到着」
「いい体力してますね」
「どうも」
どうやら、僕の事を試していたようだ。
冒険者じゃない素人とはいえ、これくらいで根を上げてしまえば、邪魔にしかならないだろうからね。
些末な存在と判断されてしまえば、見捨てられる可能性だってある。
ここは制限解除域、死人に口なしだ。
そうならないためにも、こちらも覚悟をしないといけないのかな。怖いけどさ……。
でも、ここまで来たら引く事も出来ないだろうし、生存率を高めるためにも、強い人を見極めてから追従しないとね。
「さあ、掴まってください」
合格ラインをまたげたようだ。ナイゼルさんの手を掴む。
「風翼」
宙に浮く僕の体。
僕にも飛翔魔法を使用してくれてるみたいだ。
僕がコントロール出来ないから、手をつないで補助してくれているといったところか。
欲を言えば、美人さんに担当してもらいたかったな。
――――上昇。程なくしてから、
「これがヴィン海域です」
「おお」
眼下に広がる風景。
海よりも目立つのは、緑生い茂る島々からなる風光だ。
大陸南西から見渡せる海。
ヴィン海域――――。
本来は大海に続く島一つない海であったが、現在は島々が点在する風光に変貌を遂げている。
原因は、大魔法の乱発だ。
大魔法によって出来た島々によって、多島海と姿を変えたのだった。
魔法で生み出された人工島が存在していなかった時代には、黄昏時の夕陽によって、煌びやかにオレンジ色に輝き染まる海面は、世界最大のカラットからなる、レディッシュオレンジサファイアと形容されていたほどの絶景だったそうだ。
ガチ勢がしゃかりきに大魔法を使用した結果、風光明媚な観光地が一つ奪われたわけだ……。
海上に島を生み出したりさ……。神話に出て来る神々のような御業をポンポンポンポンポンポンポン――――、やらないでいただきたいよ!
まったく――――、
「ふぁっ!?」
ここから離れた小島が、カッと強い光を発生させ、次の瞬間――、
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ボヴァァァァァァァァァァァァァァン! って、爆発したよ。
粉塵舞い上がるその直下では、あったはずの小島が消え失せて、ぽっかりと大穴が口を開いている。
その部分を補おうとしているように、海水がうねり、爆心地に集束するかのように、巨大な渦が生まれている。
まるで大口を開いた海の怪物が、海水をがぶ飲みしているみたいだ。
「ちっ」
へ? いま、舌打ちしました? ナイゼルさん。
「おい! ナイゼル!」
僕たちのいる位置に、近づいてくる人物。焦燥している。あの小島の爆発が原因だろう。
いないと強く願いながら、イリースさんの影に怯えた夜だったよ……。
――。
「じゃあ、本日もやってやろうぜ!」
「「「「ypaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」」」」
――――なんて?
ナイゼルさんが鞘からクレイモアを抜いて天にかざすと、大気を振動させる大音声が響き渡る。
そして――、前戦へ、飛んだり走ったりして進んで行っております。
「我々も行きましょう。いかんせん昨日は、ウィザースプーンさんを出迎えるために、セーフゾーンまで戻ってましたから。早く前戦に立ちたいですよ」
すみませんね。一人で行ってもいいんですよ。僕は後方待機推奨でいいですから。
待機ですよ。待機。支援なんてしないですよ。
「ウィザースプーンさんの歩みに合わせますから、共に進みましょう」
「僕に合わせたら、今日が終わりますよ」
「大丈夫ですよ。今日は始まったばかりです」
魚のような目なのに、快活だなおい。猟奇的にしか見えないんですけど……。
――――渋々と、駆け足。
さっさと一人で行ってくれていいのに……。
――……うへ~。初っぱなから険しい傾斜の崖だな。
「ここを登りますよ」
登るのか。担いで飛んでくれてもいいんですよ?
――――しんどいけども、登れないってわけじゃない。
登る時は手と足で体を支え、崖に体を密着させずに、胴体は離す。
これで摩擦の抵抗もなく、スムーズに登れて、体力の消耗も少ない。
――。
「ふう――到着」
「いい体力してますね」
「どうも」
どうやら、僕の事を試していたようだ。
冒険者じゃない素人とはいえ、これくらいで根を上げてしまえば、邪魔にしかならないだろうからね。
些末な存在と判断されてしまえば、見捨てられる可能性だってある。
ここは制限解除域、死人に口なしだ。
そうならないためにも、こちらも覚悟をしないといけないのかな。怖いけどさ……。
でも、ここまで来たら引く事も出来ないだろうし、生存率を高めるためにも、強い人を見極めてから追従しないとね。
「さあ、掴まってください」
合格ラインをまたげたようだ。ナイゼルさんの手を掴む。
「風翼」
宙に浮く僕の体。
僕にも飛翔魔法を使用してくれてるみたいだ。
僕がコントロール出来ないから、手をつないで補助してくれているといったところか。
欲を言えば、美人さんに担当してもらいたかったな。
――――上昇。程なくしてから、
「これがヴィン海域です」
「おお」
眼下に広がる風景。
海よりも目立つのは、緑生い茂る島々からなる風光だ。
大陸南西から見渡せる海。
ヴィン海域――――。
本来は大海に続く島一つない海であったが、現在は島々が点在する風光に変貌を遂げている。
原因は、大魔法の乱発だ。
大魔法によって出来た島々によって、多島海と姿を変えたのだった。
魔法で生み出された人工島が存在していなかった時代には、黄昏時の夕陽によって、煌びやかにオレンジ色に輝き染まる海面は、世界最大のカラットからなる、レディッシュオレンジサファイアと形容されていたほどの絶景だったそうだ。
ガチ勢がしゃかりきに大魔法を使用した結果、風光明媚な観光地が一つ奪われたわけだ……。
海上に島を生み出したりさ……。神話に出て来る神々のような御業をポンポンポンポンポンポンポン――――、やらないでいただきたいよ!
まったく――――、
「ふぁっ!?」
ここから離れた小島が、カッと強い光を発生させ、次の瞬間――、
「ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ボヴァァァァァァァァァァァァァァン! って、爆発したよ。
粉塵舞い上がるその直下では、あったはずの小島が消え失せて、ぽっかりと大穴が口を開いている。
その部分を補おうとしているように、海水がうねり、爆心地に集束するかのように、巨大な渦が生まれている。
まるで大口を開いた海の怪物が、海水をがぶ飲みしているみたいだ。
「ちっ」
へ? いま、舌打ちしました? ナイゼルさん。
「おい! ナイゼル!」
僕たちのいる位置に、近づいてくる人物。焦燥している。あの小島の爆発が原因だろう。
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