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トレジャーハントに挑む、三人の公務員
PHASE-36
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「おはようございます!」
「なんで昨日の今日でそんなに元気なんだよ」
「いやいや、この時間帯に整備長がいる事の方がビックリでしょう」
「うるせえな! 忙しいんだよ」
ああ、僕の仕事を代わってこなしてくれたのか。申し訳ないね。
「ほら、残りはお前がやれよ」
「え!?」
「え!? じゃねえよ、おめえよ。やるんだよ」
「僕、辞めさせられたりしないんですかね?」
「あ? そんな話は出てえよ。仕事しろ」
ああ……、そうなんだ……。
嬉しいよな、残念でならないような。複雑な気持ちである……。
「ウィザースプーン君」
キタッ! 局長からお呼びがかかった。
罷免とお達しがあるのかもしれない。
周りの同僚を見れば、可哀想にといった視線を受ける。
普段からロールさんと仲がいいから、冷たかったり、殺意の視線ばかりだったけど、今回のは同情のものだ。
ロールさんは不安そうな瞳で僕を見ている。
罷免ならロールさんと屋台! 屋台からのお店立ち上げ! からの、幸せ家族計画。
子供は出来れば子だくさんで、長女、長男の順番が理想的だな。
皆、ロールさんに似てくれれば、美女、美男まちがいなしだな。
ロールさんは不安な瞳だけども、反面、僕の表情は余裕に充ち満ちている。
さあ! クビ宣告を受けてこようかな。
ふふ、スキップで移動してるもんだから、皆さん同情の視線から、驚きに変わってるや。
「失礼します!」
ノックしてから入室。典雅な一礼のコンボだ。
室内を見れば、ブラインドが下ろされて、外側からは見えない配慮。
この閉め切った感は、あまりよろしくない結果だと思われる。
後は、局長が執務用に座るか、接客用のソファに腰かけるか、僕の人生の分水嶺だな。
――――執務用に着席だ。キタコレ!
「昨日は大変だったね。怪我の方は?」
「いえ、大した事ありません。一晩ぐっすりで大事ないです。余裕ですよ余裕」
ふふん。反省している感は全く出さない返答だ。典雅な一礼からは想像できなかったアウトローさでしょう。
「それはよかった」
あれ? そう来る。淡泊ですね。
あれかな? 局長もノムロのおっさんが嫌いだったのかな?
僕が殴った事で、溜飲が下がったりしたのかな。
「申し訳ありませんでした。僕がつい力を振るったばかりに……。子爵様はきっと根に持っている事でしょう。整備局に残ればきっと、あちらから嫌がらせがあるに違いありません。その時は――――刺し違える覚悟で――――」
「お、穏やかじゃないな。駄目だよ、そういう突撃精神は、今後は冷静沈着に事に当たりなさい」
ぬう、なんだコレは? 【今後は冷静沈着――】だと? このままでは罷免宣告がないみたいじゃないか。
僕の脳内は、ロールさんと一緒にお店を出すって事で支配されかかっているというのに。
免職C'mooooooooooon!! と、準備万端! なんですが。
「大公様が口添えしてね」
ぬ!
「今回の事で、君を免職にする事はないから」
なん……だと…………。
あの大公! 感化しないって言ったじゃん。なんで、ここでいい大人になるかな。
なんかあれだな。お食事処で〝お支払いはすでに済んでおります〟みたいな事を店員さんに言われた感じだな。未だにそんな事、言われた経験ないけど。
粋だな。うん粋だ。
粋――――、いらない。
不死王軍の幹部。その中でも対勇者に関しては過激派である幹部、ラゼン・ギル・ダロス元大公。冷酷であれぇっ!
「安堵したかい」
「あ、はい……」
よかったはよかったけどさ~。
何だろうか、どうも損した気分の方が、大きい気がしてならない。
「なんで昨日の今日でそんなに元気なんだよ」
「いやいや、この時間帯に整備長がいる事の方がビックリでしょう」
「うるせえな! 忙しいんだよ」
ああ、僕の仕事を代わってこなしてくれたのか。申し訳ないね。
「ほら、残りはお前がやれよ」
「え!?」
「え!? じゃねえよ、おめえよ。やるんだよ」
「僕、辞めさせられたりしないんですかね?」
「あ? そんな話は出てえよ。仕事しろ」
ああ……、そうなんだ……。
嬉しいよな、残念でならないような。複雑な気持ちである……。
「ウィザースプーン君」
キタッ! 局長からお呼びがかかった。
罷免とお達しがあるのかもしれない。
周りの同僚を見れば、可哀想にといった視線を受ける。
普段からロールさんと仲がいいから、冷たかったり、殺意の視線ばかりだったけど、今回のは同情のものだ。
ロールさんは不安そうな瞳で僕を見ている。
罷免ならロールさんと屋台! 屋台からのお店立ち上げ! からの、幸せ家族計画。
子供は出来れば子だくさんで、長女、長男の順番が理想的だな。
皆、ロールさんに似てくれれば、美女、美男まちがいなしだな。
ロールさんは不安な瞳だけども、反面、僕の表情は余裕に充ち満ちている。
さあ! クビ宣告を受けてこようかな。
ふふ、スキップで移動してるもんだから、皆さん同情の視線から、驚きに変わってるや。
「失礼します!」
ノックしてから入室。典雅な一礼のコンボだ。
室内を見れば、ブラインドが下ろされて、外側からは見えない配慮。
この閉め切った感は、あまりよろしくない結果だと思われる。
後は、局長が執務用に座るか、接客用のソファに腰かけるか、僕の人生の分水嶺だな。
――――執務用に着席だ。キタコレ!
「昨日は大変だったね。怪我の方は?」
「いえ、大した事ありません。一晩ぐっすりで大事ないです。余裕ですよ余裕」
ふふん。反省している感は全く出さない返答だ。典雅な一礼からは想像できなかったアウトローさでしょう。
「それはよかった」
あれ? そう来る。淡泊ですね。
あれかな? 局長もノムロのおっさんが嫌いだったのかな?
僕が殴った事で、溜飲が下がったりしたのかな。
「申し訳ありませんでした。僕がつい力を振るったばかりに……。子爵様はきっと根に持っている事でしょう。整備局に残ればきっと、あちらから嫌がらせがあるに違いありません。その時は――――刺し違える覚悟で――――」
「お、穏やかじゃないな。駄目だよ、そういう突撃精神は、今後は冷静沈着に事に当たりなさい」
ぬう、なんだコレは? 【今後は冷静沈着――】だと? このままでは罷免宣告がないみたいじゃないか。
僕の脳内は、ロールさんと一緒にお店を出すって事で支配されかかっているというのに。
免職C'mooooooooooon!! と、準備万端! なんですが。
「大公様が口添えしてね」
ぬ!
「今回の事で、君を免職にする事はないから」
なん……だと…………。
あの大公! 感化しないって言ったじゃん。なんで、ここでいい大人になるかな。
なんかあれだな。お食事処で〝お支払いはすでに済んでおります〟みたいな事を店員さんに言われた感じだな。未だにそんな事、言われた経験ないけど。
粋だな。うん粋だ。
粋――――、いらない。
不死王軍の幹部。その中でも対勇者に関しては過激派である幹部、ラゼン・ギル・ダロス元大公。冷酷であれぇっ!
「安堵したかい」
「あ、はい……」
よかったはよかったけどさ~。
何だろうか、どうも損した気分の方が、大きい気がしてならない。
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