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トレジャーハントに挑む、三人の公務員

PHASE-22

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「歯や骨の主成分は、リン酸カルシウムの一種である燐灰石アパタイトだ。それが長い年月をかけて、ケイ酸分に入れ替わり、オパール化する」

「これオパールなんですか!?」
 二の句を継いだゲイアードさんに、僕は素っ頓狂に返答。
 だって、これ全部が……。

「ああ、遊色がとても美しい。宝石として価値のあるプレシャスオパールだ。生物や樹木の化石がオパール化するのは珍しい事ではないけども、発掘されたりするのは、一部がオパール化した物だ。だが、この古龍の化石は、全てがオパール化している」
 これ全てが宝石……。
 
 確かにこれは、トレジャーハンターには依頼できないよ。どれほど報酬を積もうとも、眼前の存在の方が遙かに価値があるもの。

「これだけの物を貨幣換算したら……」
 野暮な考え方だけど、ゴートさんが真っ先にそれを考えるのも仕方ない。
 口にはしなかったけど、僕も考えたもの。

「天文学的な価値だね」
 ですよね。領地をなげうってでも欲しがるお偉いさんもいるかもな。
 ワギョウではその昔、茶器と城が同等の価値があったとかどうとか。

「ゴートさん?」
 見入っておられる。これほどの物だからね。仕方ないね。
 物欲という魔力だけには注意して欲しいね。
 魔力ソレにがっつりかかってしまっている、子爵様に渡したらどうなるんだ?
 阿呆みたいに自慢ばっかりするんだろうな。
 カグラさんからの心証も悪くなるだろうし、本当にマイナスでしかない存在だよ。君……。
 と、心で古龍の亡骸に向かって呟いてみる。
 これの存在がしれたら、これ欲しさに、大陸の権力者が各地から動き出すかも。

「さあ、確保の証明である差し押さえの札を貼ろうか」
 それさえ貼れば、この場合は子爵様の所有物となる。
 貴族、とくに爵位持ちの札を取ってしまえば、重罪になるから、それを取るのは勇気がいる。
 でも、これを貼ればカグラさんとの関係も……。
 でも、手に入れなかったら、躍起になった子爵様が、欲するあまりに後先考えないで、ここの情報をなりふり構わず流してしまえば、ここが混沌とした場になりそうだし。
 それなら一カ所にあった方が……。
 そうなると子爵様の所有となるのか……。
 も~。なんでこんな事に頭を使わなければならないのか。
 
 ゲイアードさん。貼ると発言したので、出来ればゲイアードさんに貼ってもらいたい。
 思いが伝わったのか、懐から札を取り出してる。

 ――――なんで僕を見るんですか? 早く貼ってくださいよ。

「どうします?」

「ほわ!?」
 いきなり背後からの登場。ンダガランさん。
 派手な登場じゃなかった。
 見れば、空間に穴が空いてる。静かに参上だな。

「驚かさないでくださいよ……」

「申し訳ありません。で――――どうするのです?」
 なんで僕に聞くんです?
 ここは官庁勤めの、僕たち局員の上の立場であるゲイアードさんに聞くべきだと思うんですが?

「どうするの?」
 見入っていたゴートさんまで僕に聞いてくるよ。
 ゲイアードさんもさっきから僕を見てるし。
 卑怯だぞ三十過ぎ! ペーペーに託そうとするんじゃないよ。責任逃れなのか? そんな方々には見えないけども、そんな方々だったんですか? もしそうなら、ガッカリですよ。
 
 ンダガランさんの鋭い眼力が僕を射抜いてくるし……。
 でも――――なんだか寂しげ。
 同胞の眠りを妨げないで欲しいという優しさからのものなのか、なんだかんだ脅しても、妨害をしなかったのは、僕たちとの関係もこじらせたくないとの考えもあったのかな~。
 こちらも同じように、関係をこじらせたいとは思ってもいない。
 正直、墓荒らしをする為に公務員なったわけじゃないんだよね。
 この行為は端から見たら、発掘とかじゃなく盗掘なんだよな……。悪道ですよ。

「は~」
 嘆息だよ。長嘆息ですよ。三人とも僕を見てさ。僕が口を開くまで語ろうとしやがらないよ。
 まったく!
 やだも~…………。
 
 やおら瞼を閉じて、長い吸気から、長い呼気。

 やおら瞼を開いてからの、
「――――埋めましょうか」

「え!? 何を言ってるんだいピート君」
 僕の答えを待ってたんでしょ? ゴートさん! だったらそれを受け止めてくださいよ。
 埋める事を主張しますよ。

「私は別にかまわないよ」

「ゲイアードさんまで!?」
 僕に賛同してる。なぜか口元を上げて笑んでいる。
 埋めるって発言を望んでいたといったところか。
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