拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

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トレジャーハントに挑む、三人の公務員

PHASE-20

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「これ以上――――ここで暴れられても困るな」
 う……、冷たい発言だ。

「……?」

 あれ? 僕に対して目線を向けてはいない。
 発言と視線は、腰を抜かして、戦意喪失な両ギルドに向けられていた。

「なんで俺たちだよ。そいつだろうが」

「そうだ、ふざけるな……」
 語気は全くもって強くない。僕たちに対しての高圧的な発言時とはまったく違って、弱々しかった。尻つぼみもいいところ。
 ンダガランさんの睨み一発で、両ギルドは完全に押し黙った。

「お前たちが素直に戦闘を停止していれば、こんな被害は出なかった。お前たちが原因だ。再三の戦闘停止を無視したお前たちが全ての責を負え」

「そんな……」
 納得いかないと、反論したくてもね――――、包囲されてるんですよ……。
 両ギルドの戦闘時にはまったく姿を現さなかった、最古参位エルダークラスの方々がおられます。
 焔馬えんばさんもいれば、バーン・ワイバーンさんもいるよ。
 ――――なぜか、バーン・ワイバーンさんは各部に傷を負っているけども、元気そうだから心配は無用かな。

「怪我人はこちらで回収しましょう」

「お願いします。重傷の方もいるので」

「襲ってきた相手を心配とは、流石はピート殿。お優しい」
 あれ? 株が上がったよ。美人の株が上がるって、これだけやらかしたのに、お咎めもないみたいだし、いい関係になれそうな気がする。
 ――――いかんいかん! 公務員として、油断、怠りなくだったな。
 今度ンダガランさんがやらかしたら、大目に見てあげよう。
 寛大な気持ちで対応するぞ。
 
 怪我人を運んでくれる最古参位エルダークラスの方々。
 本来なら一体だけで、ここにいる皆さんを瞬殺できちゃうような方々なんだよな。
 運ぶと言う名の強制退去で、両ギルドをこの場から撤収させる。
 それに従うように、自力で動ける人達は、手にした利器を、抵抗の意思がないと伝えるように、地面に置いて誘導に従っている。

「では、我々はこれで、後は貴男方が見定めてください」

「ありがとうございます」
 ンダガランさんに深々と一礼をする僕たち。
 カグラさんはまたも派手な火柱の中に消えていった。
 
 見定めるか……。欲するとなると、あれだけの配下の方々と、僕たちを包囲してくるのかな~。
 怖いな……。

 ――。

「いや~存外、簡単に物事が運んで良かったですな」
 先ほど活躍した六角鉄棒を肩に担って笑顔のゴートさん。
 防具として使う事がなかった僕が手にする鍋を回収。
 穴が空く事もなかったから、これで暖かな食事が出来なくなるという危機は回避できましたよ。
 
 そして、作業ポシェットにしまった銃に目を向ける。
 本当に良かった。不謹慎だけど、氷結系で本当に良かった……。
 辺りを見渡してそう思う。
 炎熱系なんて選択してた日にゃ……。火災による二次災害――いや、二次人災だな。
 確実に報復されてたよ…………。
 魔弾の使用は本当によっぽどじゃないと使用しちゃいけないな。
 まったく、百人長め!



「ふう」

「疲れましたか?」

「流石に実戦はね」
 の、わりには、相変わらず息切れもなければ、汗も流していない。
 相手を簡単に拘束したり、ダウンさせたり。レベルが素人のそれとは段違いだね。

「大したことないよ。日頃の鍛錬が状況を打破させてくれたんだ。ピート君も毎日、続ける事だね」
 疑惑の視線を気取られたのかな。でもね、先ほども心で突っ込んでたけど、鍛錬どうのこうの問題じゃないですよ。
 バーン・ワイバーンさんの怪我もゲイアードさんが原因だったりして。
 ――――なんてね。流石にそこまでは出来ないよな。

「先に進みますか」

「休憩を提案します」
 先ほどは頼りになったゴートさんだけど、危機が過ぎると、ヒーヒーと頼りない、息切れが激しい姿に戻ってしまった。
 仰臥で体を大の字だ。
 動きたくないという姿勢を見せつけてくる。
 先ほどの、六角鉄棒を肩に担っての笑顔の姿は何処いずこへ?
 
「では、とっておきをあげましょう」
 ゲイアードさんも腰を下ろしてるし、休憩しますか。僕も座りたいし。
 ポシェットから僕が出すのは――――、
「チョコレートですよ」

「おお! フルーツのような天然の甘みでなく、人工的な甘みだ! ギブミー! チョコレート!!」
 まさか、レインちゃん用でここまで喜んでもらえるとはね……。

「あっ、柔らかくなってる」
 指に触れてる包み紙から、ぐにゃりとした感触。
 紙を取ったらべっとりとした残念なヤツだね。

「心配ご無用!」
 寝ていた体を矢庭に起こすゴートさんは、僕からかっさらうかのようにチョコを手に取ると、僕がやらかした氷結系の魔弾によって、一帯が氷の世界となっているのを利用して、氷柱にペタリとチョコをくっつけた。

「ああ、なるほど」
 僕も続いて、残りのチョコをペタリとくっつける。
 待っている間も、この氷の世界で涼しくて、汗も引いていく。

 ――――しばらくすると、
「いい感じですよ」
 パキパキと割って喜ぶゴートさんは、そのまま紙を取ってパクリだ。

「うまうま。久しぶりの人工的な甘み。幸せだ~」
 体型を裏切らない食いっぷりだ。
 見てると楽しいからいいけど。

「疲れが癒やされる甘みだね」
 と、こちらはパキリと小気味のいい音をたてて一口。
 その動作だけで、女性の心はキュンキュンですよ。
 男前は何をしても様になるからずるいよ。ゲイアードさん。
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