拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

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トレジャーハントに挑む、三人の公務員

PHASE-08

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「何処で怪我をしたんです? モンスターにやられましたか?」
 一息つかせるために、暖かいお茶を注いで渡してあげる。
 頭を下げて、礼を述べる黒髪短髪の方の名前は、セイロンさん。
 一口飲んで、安堵の息を漏らしてから、
「違う」
 と、返してきた。
 モンスターじゃないなら、鋭利な木とかに腕を引っかけて、深く切っちゃったって事かな? ――って、それはないよね。
 青あざは明らかに第三者によるものだから。
 そうなると、なんて思っていると、ゲイアードさんが眼鏡をクイッと上げて、
「人による暴行だね」
 その言葉に、セイロンさんは首肯で答えた。
 
 人? 人と同じ背格好の魔王軍の方なのかな? ンダガランさんみたいな。
 好きこのんでこんな場所に入りたがる人なんているわけがない。
 とは言い切れないよね……。目の前にいるのは人だし。

「ピート君」
 ゲイアードさんが顎をしゃくる。
 それに沿って、セイロンさんの右腕に目をやる。
 ああ……。
 なんて面倒くさい状況なんだ…………。
 マジか……。
 セイロンさんの右腕には、大きく口を開いた魚の入れ墨。

「バラクーダの方でしたか。セイロンさん……」
 素行が残念な、トレジャーハンター集団じゃないか。
 思い出すね。僕に対して剣から火の玉だしてきた二人組。
 サージャスさんにしばかれて、ゲイアードさんから違反金を徴収されてたっけ。
 
 バラクーダと分かった時点で、放置でもいいかもしれないけど、それだと倫理に反するし。
 しかし――――、こんな所まで来るなんて、本当に組織の名前になってる魚みたいに、貪欲な方々だよ。
 名は体を表すとはよく出来たことわざだ。
 
 死んじゃうよ。こんなとこ来て。僕たちも言えた義理ではないけども……。

「で、誰にやられたんですか?」
 あら、急に冷淡な語り方になったよ。ゲイアードさん。
 やっぱり、この集団に対しては心証は悪いようだね。
 鋭い目つきで射抜くようにセイロンさんを見るけども、そこは腐ってもトレジャーハンター。
 そんな睨みは怖くないといった感じだ。

「聞こえてますか? 誰にやられたんです?」
 今度は指呼の距離まで近づいたゴートさんが、セイロンさんに質問。
 移動時はヒーヒーと息切れしていたぽっちゃりさんは、笑顔だけども、瞬きは行わない。
 凄みがあって怖い。
 笑顔で凝視のゴートさんに、炯眼で射抜くゲイアードさん。
 飴と鞭のようにも見えるけど、鞭と鞭だな……。

 流石は警務局勤務。相手に圧力をかけるのはゲイアードさんより上手いな。セイロンさんの目が落ち着かなくなった。

「同業者だよ」

「う~ん。質問の意味が理解できてませんか?」

「分かったから、更に近づかないでくれ」
 だめ押しのまん丸笑顔の接近で、鼻頭同士がくっつきそうだ。
 はっきりと言ってくれ! という圧に、根負けしたようである。

「ガリンペイロのくそったれどもだよ」

「「「――――はぁぁぁぁ……」」」
 それを耳にして、三人でシンクロによる重々しい長嘆息をもらす。
 
 ガリンペイロか……。バラクーダと双璧をなすトレジャーハンターギルドじゃないか。
 ――――もちろん悪い意味で。
 
 最悪だな、こんな連中が森の中に入り込んでるのか。普段は誰も訪れないような森になんでだよ? 
 なんでこのタイミングで、ご迷惑集団が二組も入ってるの!!
【カエレ、ココ、シンセイナトチ、ヨソモノハ、ハイルコトユルサレナイ】と、片言で言ってあげたいよ。
 
 二組が森へと入ってきた理由は何なのか? 
 ――――ああ……、そうか。熟考するまでもなかった。

「化石か……」
 探るように呟くと、セイロンさん、ピクリと体を震わせた。
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