258 / 604
公務員が発掘冒険とか……
PHASE-18
しおりを挟む
「ピート君」
はい! その声を待ってました!!
「ロールさん」
「ごめん。ちょっと遅くなっちゃって」
見送りは嬉しいけど。
両手で持つそのバックはいただけませんよ。
「駄目ですからね! 付いてくるのは」
一緒に行くなんて言われたら困る。何かあったら、僕が一生消えない傷を心に残すよ。
先手打って、踏み留めるように強い語気で言ってあげる。
「分かってるよ……」
そんなに寂しそうな声を出されると、申し訳ないよ。
僕だって辛いんですから。
これから一週間くらいロールさんに会えないどころか、女っ気のない男三人での行動。苦行だ……。
「これ」
手にするバックを渡される。
いい匂いがする。
「行きのお弁当つくったから、皆さんで」
「ありがとうございます」
やったぜ! ロールさんのお弁当とか幸せすぎる。
この幸せ……、最後の晩餐とかじゃないよね。
「気をつけてね。私も連絡入れたけど、ンダガランさん、やっぱりいい顔してなかったから。カグラさんとは連絡そのものが取れなかったけど……」
「すみません。交友関係にヒビが入ってないですよね?」
「大丈夫だよ。だから、無事に帰ってきてね」
「はい!」
なんだろうか。気合いが入ってきたよ。不安が払拭されるような気分だ。【無事に帰ってきてね】とか、精神が高揚する台詞だ。
勇者になった気分だよ。
いつまでも待ってくれる一途な恋人と、旅立つ勇者のような関係。
帰ってきたら結婚やな! その後はワッショイ、ワッショイだな。
アハハハハハハ――――。
「痛いじゃないですか」
「にやける余裕はあるんだね」
頬を優しくつねられた。
幸せの痛みである。その気持ちのいい痛みをそのままに、いざ運転席へ――。
「無茶な運転はするなよ」
「大丈夫ですよ。運転は慣れてますから。安全運転で行ってきます」
「森の中での寝食で、体調崩さないでね」
「その辺はブートキャンプで経験してますから」
終始、気にかけてくれるロールさんの不安な気持ちを少しでも軽減させたいので、笑顔を維持する僕――――。
「出発進行」
「おお! いよいよか~」
ゴートさんの初体験から出る興奮した声を背に受けつつ、
「行ってきます」
車窓から手を出して振る。
南門を抜けてから、外の世界へ――。
後ろを見れば、見えなくなるまで手を振ってくれる二人。
頑張ってお役目を果たしてから、必ず帰ってこようと、固く心で誓う。
車内ではいい匂いが充満。
「早速いただこうか!」
「いやいや、そんなバカな」
「朝、食べてないからね。朝食にしようよ」
「僕も食べてないですから」
ゴートさんやめてください! そのふとめの体での発言は脅威でしかないですから。
僕が一番じゃなきゃ嫌なんです。
「ゴートさん。少し我慢を。途中で下車してから景色のいいところでいただきましょう。それに皆さんと言ってましたが、ジャイロスパイクさんはピート君のために作っているみたいですし」
「了解です……」
残念そうなゴートさん。
だが、流石はゲイアードさん。分かってますね。そう! 僕のために! こことっても重要。
そこを強調していただけると、僕は幸せ。
ついでにロールさんと僕の素晴らしい噂を広めていただきたいところだ。
――――。
――……広めていただくのは、不可能かな……。
なんだろうか、基本的にお二人とも喋らなくても平気なタイプなのかな?
お弁当の件の後から、一気に車内が森閑に包まれたよ……。
馬車とは違い、車窓からの流れていくような風景が新鮮なようで、それを堪能している二人の大人の姿がそこにはあった――――。
はい! その声を待ってました!!
「ロールさん」
「ごめん。ちょっと遅くなっちゃって」
見送りは嬉しいけど。
両手で持つそのバックはいただけませんよ。
「駄目ですからね! 付いてくるのは」
一緒に行くなんて言われたら困る。何かあったら、僕が一生消えない傷を心に残すよ。
先手打って、踏み留めるように強い語気で言ってあげる。
「分かってるよ……」
そんなに寂しそうな声を出されると、申し訳ないよ。
僕だって辛いんですから。
これから一週間くらいロールさんに会えないどころか、女っ気のない男三人での行動。苦行だ……。
「これ」
手にするバックを渡される。
いい匂いがする。
「行きのお弁当つくったから、皆さんで」
「ありがとうございます」
やったぜ! ロールさんのお弁当とか幸せすぎる。
この幸せ……、最後の晩餐とかじゃないよね。
「気をつけてね。私も連絡入れたけど、ンダガランさん、やっぱりいい顔してなかったから。カグラさんとは連絡そのものが取れなかったけど……」
「すみません。交友関係にヒビが入ってないですよね?」
「大丈夫だよ。だから、無事に帰ってきてね」
「はい!」
なんだろうか。気合いが入ってきたよ。不安が払拭されるような気分だ。【無事に帰ってきてね】とか、精神が高揚する台詞だ。
勇者になった気分だよ。
いつまでも待ってくれる一途な恋人と、旅立つ勇者のような関係。
帰ってきたら結婚やな! その後はワッショイ、ワッショイだな。
アハハハハハハ――――。
「痛いじゃないですか」
「にやける余裕はあるんだね」
頬を優しくつねられた。
幸せの痛みである。その気持ちのいい痛みをそのままに、いざ運転席へ――。
「無茶な運転はするなよ」
「大丈夫ですよ。運転は慣れてますから。安全運転で行ってきます」
「森の中での寝食で、体調崩さないでね」
「その辺はブートキャンプで経験してますから」
終始、気にかけてくれるロールさんの不安な気持ちを少しでも軽減させたいので、笑顔を維持する僕――――。
「出発進行」
「おお! いよいよか~」
ゴートさんの初体験から出る興奮した声を背に受けつつ、
「行ってきます」
車窓から手を出して振る。
南門を抜けてから、外の世界へ――。
後ろを見れば、見えなくなるまで手を振ってくれる二人。
頑張ってお役目を果たしてから、必ず帰ってこようと、固く心で誓う。
車内ではいい匂いが充満。
「早速いただこうか!」
「いやいや、そんなバカな」
「朝、食べてないからね。朝食にしようよ」
「僕も食べてないですから」
ゴートさんやめてください! そのふとめの体での発言は脅威でしかないですから。
僕が一番じゃなきゃ嫌なんです。
「ゴートさん。少し我慢を。途中で下車してから景色のいいところでいただきましょう。それに皆さんと言ってましたが、ジャイロスパイクさんはピート君のために作っているみたいですし」
「了解です……」
残念そうなゴートさん。
だが、流石はゲイアードさん。分かってますね。そう! 僕のために! こことっても重要。
そこを強調していただけると、僕は幸せ。
ついでにロールさんと僕の素晴らしい噂を広めていただきたいところだ。
――――。
――……広めていただくのは、不可能かな……。
なんだろうか、基本的にお二人とも喋らなくても平気なタイプなのかな?
お弁当の件の後から、一気に車内が森閑に包まれたよ……。
馬車とは違い、車窓からの流れていくような風景が新鮮なようで、それを堪能している二人の大人の姿がそこにはあった――――。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる