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公務員が発掘冒険とか……
PHASE-16
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――――人間とは不思議なもの。それとも僕が、ただたんに鈍感なのか。
昨晩から今朝にいたって、ぐっすりと眠れた。
目の冴えはここ最近で一番だよ。
ベッドで猫のように背を伸ばす。コキコキと背骨から小気味のいい音が伝わってくる。
体を伸ばすと血流もよくなって、目だけでなく頭も冴えてくる。
体を起こしてサボテンへと水をやる。また一週間くらいケーシーさんに預けないとね。
面倒かけて申し訳ないけど。まあそこまで水はやらないでいいから放置でもいいけど、病気になったりすると困るから、お願いして見てもらおう。
あとは――――、コイツだな。
余裕のないところに赴くからね。
この無駄に芸術的なエングレーブ。
有機的な曲線は植物の蔦や葉をイメージしたもの。
本棚に飾っていたけど、今回こそ出番あるかもだぞ。
「へっ、ズシリと重いぜ」
これって、よくよく考えると貴重品だよな。
銃って、キドさん達の所を除くと、今のところ所有してるのって僕だけだよね。
貴重なアイテムだ。
これが子爵様の耳にでも入れば、歯を軋らせて僕を妬むのかな……。
にしても――だ。この銃をどう携帯するかだな。
ちゃんとしたのがいるよな。
一緒にもらったケースに入れて行動だと、いざという時に取り出すのに時間かかるしね。
剣でいうところの鞘のポジションになるようなやつが欲しいな~。
なんかないかな~。銃が入るの。
周囲を見渡す。つなぎを掛けてるハンガーラックの端っこに掛かる物に目を向ける。
「おっ、これでいいじゃないか」
石切作業なんかで使用する作業ポーチだ。
この金槌や鑿をぶら下げるところに丁度、銃が固定出来るんじゃないですかね。
――。
「いいじゃないか。しっかり固定される。これなら落ちないな」
隣の小物入れに弾を入れればいい。
おお! そもそもが、銃を携帯するために存在しているのじゃないかと思えるくらいに、しっくりくるな。
姿見の前で、作業ポーチを腰に巻いた状態で全身を見回す。
「ふん!」
ポーチから銃を素早く手にしては、またしまう。
それを繰り返してはポージング。
一人の空間だからこそ出来る事である。
とても人様には見せられない。
実戦に近い感じで、抜いて、中折れの状態にした銃に弾を込めて、戻してから撃つ仕草。
排莢してポーチに戻す。
「フフフ……」
鏡の前でほくそ笑んでいる僕の姿がそこにはあった。
余裕なんてないくせに、こんな事をやって笑う余裕はあるってどうよ……。
銃を携帯するとはいえ、使う機会が訪れないように祈りたい。
どう考えても、これ一丁でどうしろって話だからね。
撃たれた最古参位が怒って、僕の体をプチって潰して終わるだけの未来しか見えないよ。
しかし、この銃、短くて取り回しはいいとしても、銃床がないからどうやって狙いを定めるのか。
演習で使用したのと形が違うからな。
演習では頬と右脇を後床に押しつけて、前床部分を左手で握って、三点で固定してから狙いを定めてたけど、これグリップだけなんだよね~。
とりあえず基礎である脇をしめて諸手でしっかりグリップを握ってから、狙いを定めるってとこかな。
先ほどまでやってたポージングより更に洗練するイメージで、鏡を見ながら射撃姿勢を作る――――。
「意外と出来ちゃうのは、演習の成果か」
自画自賛だけど、格好良く構えられているような気がする。
さんざっぱら汚い言葉を浴びせてきた、アーメイ・ジャケット百人長に感謝である。
――――。
「おはよう」
「早いですね! って、本来は下っ端の僕が一番に来てないといけないのに」
「いいよ、組織が違うからね」
「お二人、早いですね」
「おはようございます。ゴートさん」
ゲイアードさん、僕、ゴートさんの順番だった。
この三人で集合場所の南門に立つ。
いよいよか……。
昨晩から今朝にいたって、ぐっすりと眠れた。
目の冴えはここ最近で一番だよ。
ベッドで猫のように背を伸ばす。コキコキと背骨から小気味のいい音が伝わってくる。
体を伸ばすと血流もよくなって、目だけでなく頭も冴えてくる。
体を起こしてサボテンへと水をやる。また一週間くらいケーシーさんに預けないとね。
面倒かけて申し訳ないけど。まあそこまで水はやらないでいいから放置でもいいけど、病気になったりすると困るから、お願いして見てもらおう。
あとは――――、コイツだな。
余裕のないところに赴くからね。
この無駄に芸術的なエングレーブ。
有機的な曲線は植物の蔦や葉をイメージしたもの。
本棚に飾っていたけど、今回こそ出番あるかもだぞ。
「へっ、ズシリと重いぜ」
これって、よくよく考えると貴重品だよな。
銃って、キドさん達の所を除くと、今のところ所有してるのって僕だけだよね。
貴重なアイテムだ。
これが子爵様の耳にでも入れば、歯を軋らせて僕を妬むのかな……。
にしても――だ。この銃をどう携帯するかだな。
ちゃんとしたのがいるよな。
一緒にもらったケースに入れて行動だと、いざという時に取り出すのに時間かかるしね。
剣でいうところの鞘のポジションになるようなやつが欲しいな~。
なんかないかな~。銃が入るの。
周囲を見渡す。つなぎを掛けてるハンガーラックの端っこに掛かる物に目を向ける。
「おっ、これでいいじゃないか」
石切作業なんかで使用する作業ポーチだ。
この金槌や鑿をぶら下げるところに丁度、銃が固定出来るんじゃないですかね。
――。
「いいじゃないか。しっかり固定される。これなら落ちないな」
隣の小物入れに弾を入れればいい。
おお! そもそもが、銃を携帯するために存在しているのじゃないかと思えるくらいに、しっくりくるな。
姿見の前で、作業ポーチを腰に巻いた状態で全身を見回す。
「ふん!」
ポーチから銃を素早く手にしては、またしまう。
それを繰り返してはポージング。
一人の空間だからこそ出来る事である。
とても人様には見せられない。
実戦に近い感じで、抜いて、中折れの状態にした銃に弾を込めて、戻してから撃つ仕草。
排莢してポーチに戻す。
「フフフ……」
鏡の前でほくそ笑んでいる僕の姿がそこにはあった。
余裕なんてないくせに、こんな事をやって笑う余裕はあるってどうよ……。
銃を携帯するとはいえ、使う機会が訪れないように祈りたい。
どう考えても、これ一丁でどうしろって話だからね。
撃たれた最古参位が怒って、僕の体をプチって潰して終わるだけの未来しか見えないよ。
しかし、この銃、短くて取り回しはいいとしても、銃床がないからどうやって狙いを定めるのか。
演習で使用したのと形が違うからな。
演習では頬と右脇を後床に押しつけて、前床部分を左手で握って、三点で固定してから狙いを定めてたけど、これグリップだけなんだよね~。
とりあえず基礎である脇をしめて諸手でしっかりグリップを握ってから、狙いを定めるってとこかな。
先ほどまでやってたポージングより更に洗練するイメージで、鏡を見ながら射撃姿勢を作る――――。
「意外と出来ちゃうのは、演習の成果か」
自画自賛だけど、格好良く構えられているような気がする。
さんざっぱら汚い言葉を浴びせてきた、アーメイ・ジャケット百人長に感謝である。
――――。
「おはよう」
「早いですね! って、本来は下っ端の僕が一番に来てないといけないのに」
「いいよ、組織が違うからね」
「お二人、早いですね」
「おはようございます。ゴートさん」
ゲイアードさん、僕、ゴートさんの順番だった。
この三人で集合場所の南門に立つ。
いよいよか……。
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●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
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