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公務員が発掘冒険とか……

PHASE-12

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「クエストの依頼はせん」
 は? なんでよ。じゃあ、どうするんだよ。

「場所が場所だ。受ける者はおらん」
 でしょうね。
 好きこのんで炎竜王のお膝元で行動なんて、命がいくつあっても足りないだろうさ。
 だから、僕たちか……。
 面識のあるこっちから連絡を入れて、化石をゲットするまで周辺のモンスターに手を出させないよう交渉しろって事か。
 サージャスさんやカルタさんの時は、ロールさんが話を通してたけど、今回はそうはいかないだろうな。

「交渉はしましたか?」

「するわけないだろう。しても炎竜王が首を縦に振るわけがない」
 だよね。やっぱり……。

「なぜです?」
 分かっていて聞くスタイル。
 小悪党って大抵が、自分より頭が悪いと認識した相手には口も軽くなるもんだ。

「古龍の化石だ。炎竜王の配下か同胞に属するだろう。炎竜王はそれを化石ではなく、そこで眠っている存在と考えるだろうな」

「では、これは墓荒らし行為になるのでは?」

「そうだ。実行すれば炎竜王の悋気に触れる事になるだろう。現在、名のある一行で炎竜王と渡り合えるとするならクシュリナ・パラシュラの一行だろうが……」
 語尾に進むにつれて暗さがあるな。

「折角、子爵様が仕事を与えてやったというのに、木で鼻をくくる態度で断りおって! 生意気な! 何が借りがあるだ。それどころか、その様な下卑た事はしないと吐き捨ておった!! 特別に依頼を出してやったというのに」
 クエスト依頼は出さなくても、このパーティーには出すってところが、このパーティーの実力の高さが窺える。
 でも、流石はカルタさんの所属する一行の勇者さんだ。格好いいな。
 それに、借りか――――。
 カルタさんの手から離れない、呪剣・ダーインスレイブの事だよね。
 カグラさん訪れるの快諾だったしな。
 クリシュナさん御一行が断るとなったら、きっと他の名のある冒険者に打診しても拒まれるだろう。
 古龍の化石は希少だろうけど、命と引き替えは馬鹿馬鹿しいもの。
 それに名のある方々は自分たちの名声も考えるから、クリシュナさん曰く【下卑た事】には手を出したくないだろう。
 小粒の冒険者じゃ対処は出来ない。
 そらクエスト依頼も出さないよな。ノムロのおっさんも言ってたけど、受けないよこんなの。
 
「では、トレジャーハンターなんてどうです?」
 ここで、ゲイアードさんが参加。

「阿呆か? 出来るか!」
 顔面偏差値が低いおっさんが、顔面偏差値ハイスペックな方を阿呆呼ばわりとは、世も末だ……。
 阿呆呼ばわりされても、ゲイアードさんは眉一つ動かさず暴言を受け止めてる。

「なぜ出来ないので?」
 ゲイアードさんが不愉快になってしまったかもしれないと、フォローを入れるかのように、次は自分がとばかりに、ゴートさんが口を開く。
 出来た方々である。

「そんな事も分からんか?」
 分からないから質問してるんじゃないのかな。
 とりあえず答えを求めようと、三人でアイコンタクト。
 首肯するも、癪なので無口で応対。
 おっさんが説明するまで待つ。
 
 理解したのか、やれやれと首を左右に振り、肩を竦めて、阿呆な奴らだとばかりに見下した視線。
 カップを手にして、ゴクリと紅茶を一口。
 喉を潤してから語る準備を整えて、
「あいつ等は欲の塊だぞ」
 と、子爵様よくのかたまりの忠実な下僕が言っておられます。
 
 トレジャーハンターに依頼すれば、冒険者たちに対するクエスト報酬以上の額をふっかけてくるし、それ以上にリスクとして生じるのが、契約を容易に破棄してくるところだそうだ。
 目の前のお宝が、報酬以上の価値があるなら、簡単にそちらを自分たちの所有物にしてしまおうと考えるらしい。
 その点では勇者御一行は信頼出来るとの事。
 そりゃそうだ。そんなあくどい事をやってしまえば、勇者としての将来はなくなるもの。
 
 カグラさんのお膝元。
 有能な冒険者の参加は見込めない。
 トレジャーハンターは信頼出来ない。
 以上の結果、上のめいに忠実に従ってくれる僕たち公務員に、白羽の矢が立ったんだろう。
 特に王都となると、カグラさんとも親交がある。
 戦う力はないけども、交渉しだいでモンスターから襲われない可能性もあり、生存する可能性は冒険者より高い。
 化石を欲しているところで、渡りに船な存在であったのが僕たちなんだろう。
 見えたよね。子爵様の考えが。
 
 言動や避難誘導の責を負わせるというていで、僕たちに化石の回収を実行させる事で、甥の男爵様に対する非礼や避難誘導の失態に目をつぶってやろうってところだろう。
 したたかだけど、魂胆は丸見え。
 でも、その魂胆が丸見えでも反論出来ない立場が僕たちだから、結局は従う事になるわけだけど…………。

「では、吉報を待つぞ。失敗すれば――――分かるな?」
 ふふん――っと鼻息。偉大なる子爵様の忠実な下男は、勇ましく胸を張ってから、ゆったりとした歩みで、応接室から退出しましたとさ。
 
 益荒男ますらおにはほど遠いおっさんだ。
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