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公務員が発掘冒険とか……
PHASE-09
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――――。
「こんにちは」
「ご足労様です」
官庁に到着して直ぐに、受付の美人なお姉さんに挨拶。
つと立ち上がってこちらに頭を下げてくるお姉さん。
なんだか、申し訳なさそうにしている。
「応接室へどうぞ」
そんな強張った表情を見せられると、行く気がしないよ。
進む足が重くてかなわない……。
「いやいや、僕にやましいところなんてない!」
独白して奮い立たせてみる。
こうでもしないと、足が動いてくれないんだ……。
――。
「失礼します」
ノックしてからドアノブ握って開き、一歩踏み入ってからの一礼。
自分の足下から正面に視線を向ければ、
「ウィザースプーン君」
「あ、ゲイアードさん」
応接室のソファには、ゆったりとした姿勢で腰を下ろしているゲイアードさんの姿。
なんとも余裕だ。僕のようにあたふたとしていない。
ああいう姿を見せられると、こちらも鼓舞されるってもんだ。
説教受けるにしても、顔見知りのほうが楽ってもんだし。
で――、隣に座っている栗毛短髪で、恰幅の良い方は、警務局の兵服を着ている。
全体が黒。でもって、縁や裾には黒みがかった赤の刺繍が入っている。蘇芳色っていうのかな? あの刺繍付きの立場は――――、
「どうも、警務局六課、課長のゴート・フランシスカです」
やはり、長の方だな。
「たしか、叙勲式の時に――」
「ええ、あの時、自分が警務の現場責任を地味にこなしてました。ウィザースプーン君のようには目立てませんでしたよ」
僕も好きこのんで目立ってたわけじゃないんですけど。
可愛げのない子供の行いで目立っただけであって、僕たち公務員は、皆で仲良く隅っこで細々と食事を楽しんでただけじゃないですか。
「子爵様の事では、どの様なお咎めを受けるんでしょうか?」
ゲイアードさんに質問。
「いや、それは私にも分からないよ」
「あれ? ゲイアードさんから僕は何かしらの責を伝えられるんじゃ?」
堂々と着席してる姿から、そう想像してしまった。
「私も君と同じで、責を負わされる側だよ」
え!? なんでゲイアードさんが責を負わされるの? わけが分からないよ。
叙勲式のパーティーには参加してないよね――――。
「うむ、揃ったな」
なんだ偉そうに。
しゃべり方が気に入らないぞ。
奥のドアから現れたのは、羽根飾りの付いた赤いベレー帽を被った、ジト目で才槌頭の、見るからに性根の悪そうな顔立ちのおっさんだ。
「私はノムロ・バズンガ。マリド・カルブレース・クラウザー子爵様の使いである」
このノムロ氏の高圧的な語り方と、皆を見渡せる一人用のソファにドカリと座って、ふんぞり返る横柄な態度。
そこから察するに、子爵様の性格もろくなもんじゃないってのが間接的に理解出来るな。
「茶」
なんとも殴りたくなる所作だ。自分の前にお茶を置けと、食指でテーブルをコツコツと叩く。
この場での若輩者は僕なので、お茶の準備に動き出すと、
「官庁は私が勤務する場だから」
と、ゲイアードさん。
言うと同時に、既に紅茶の入ったティーポットを手にしているっていうね。
無駄なく素早く応対が出来る人って、格好いい。
「まあまあだな」
こんな奴にお茶の味が分かるとは思えないけども、才槌頭を隠すようなベレー帽のおっさんは、紅茶をさらに一口飲むと、
「菓子も出んとは……もてなしの心がないな」
「申し訳ありません」
ゲイアードさん、笑顔を見せながら小さく会釈。
普段からは想像出来ない作り笑顔。
これが宮仕えの辛いところか……。
僕たち公務員は、勇者御一行なんかには強気に応対も出来るけど、貴族や上司など、上には弱い存在であり、仕事の出来る下からの突き上げに、心を配る日々だ。
まあ、まだ僕は一番下だから、下からの突き上げは体験してないけどね。
上司に対しても、整備長限定だけど、強気な態度だし――――。
チョコチップクッキーですか。美味しそうですね……。
そういえば、お昼ご飯食べてないな~。
「こんにちは」
「ご足労様です」
官庁に到着して直ぐに、受付の美人なお姉さんに挨拶。
つと立ち上がってこちらに頭を下げてくるお姉さん。
なんだか、申し訳なさそうにしている。
「応接室へどうぞ」
そんな強張った表情を見せられると、行く気がしないよ。
進む足が重くてかなわない……。
「いやいや、僕にやましいところなんてない!」
独白して奮い立たせてみる。
こうでもしないと、足が動いてくれないんだ……。
――。
「失礼します」
ノックしてからドアノブ握って開き、一歩踏み入ってからの一礼。
自分の足下から正面に視線を向ければ、
「ウィザースプーン君」
「あ、ゲイアードさん」
応接室のソファには、ゆったりとした姿勢で腰を下ろしているゲイアードさんの姿。
なんとも余裕だ。僕のようにあたふたとしていない。
ああいう姿を見せられると、こちらも鼓舞されるってもんだ。
説教受けるにしても、顔見知りのほうが楽ってもんだし。
で――、隣に座っている栗毛短髪で、恰幅の良い方は、警務局の兵服を着ている。
全体が黒。でもって、縁や裾には黒みがかった赤の刺繍が入っている。蘇芳色っていうのかな? あの刺繍付きの立場は――――、
「どうも、警務局六課、課長のゴート・フランシスカです」
やはり、長の方だな。
「たしか、叙勲式の時に――」
「ええ、あの時、自分が警務の現場責任を地味にこなしてました。ウィザースプーン君のようには目立てませんでしたよ」
僕も好きこのんで目立ってたわけじゃないんですけど。
可愛げのない子供の行いで目立っただけであって、僕たち公務員は、皆で仲良く隅っこで細々と食事を楽しんでただけじゃないですか。
「子爵様の事では、どの様なお咎めを受けるんでしょうか?」
ゲイアードさんに質問。
「いや、それは私にも分からないよ」
「あれ? ゲイアードさんから僕は何かしらの責を伝えられるんじゃ?」
堂々と着席してる姿から、そう想像してしまった。
「私も君と同じで、責を負わされる側だよ」
え!? なんでゲイアードさんが責を負わされるの? わけが分からないよ。
叙勲式のパーティーには参加してないよね――――。
「うむ、揃ったな」
なんだ偉そうに。
しゃべり方が気に入らないぞ。
奥のドアから現れたのは、羽根飾りの付いた赤いベレー帽を被った、ジト目で才槌頭の、見るからに性根の悪そうな顔立ちのおっさんだ。
「私はノムロ・バズンガ。マリド・カルブレース・クラウザー子爵様の使いである」
このノムロ氏の高圧的な語り方と、皆を見渡せる一人用のソファにドカリと座って、ふんぞり返る横柄な態度。
そこから察するに、子爵様の性格もろくなもんじゃないってのが間接的に理解出来るな。
「茶」
なんとも殴りたくなる所作だ。自分の前にお茶を置けと、食指でテーブルをコツコツと叩く。
この場での若輩者は僕なので、お茶の準備に動き出すと、
「官庁は私が勤務する場だから」
と、ゲイアードさん。
言うと同時に、既に紅茶の入ったティーポットを手にしているっていうね。
無駄なく素早く応対が出来る人って、格好いい。
「まあまあだな」
こんな奴にお茶の味が分かるとは思えないけども、才槌頭を隠すようなベレー帽のおっさんは、紅茶をさらに一口飲むと、
「菓子も出んとは……もてなしの心がないな」
「申し訳ありません」
ゲイアードさん、笑顔を見せながら小さく会釈。
普段からは想像出来ない作り笑顔。
これが宮仕えの辛いところか……。
僕たち公務員は、勇者御一行なんかには強気に応対も出来るけど、貴族や上司など、上には弱い存在であり、仕事の出来る下からの突き上げに、心を配る日々だ。
まあ、まだ僕は一番下だから、下からの突き上げは体験してないけどね。
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そういえば、お昼ご飯食べてないな~。
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