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公務員が発掘冒険とか……

PHASE-01

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「――――てな感じの有意義な出張でした」
「うん。まあ、出張だったのかな?」
「出張です! 紛う方なき出張です」
「それだけはっきり言い切るならいいけども」
 本日は珍しい組み合わせで、ケーシ―さんの食堂で食事をとっている。
 僕の隣はゲイアードさん。食堂の建具が開かれているから店内が丸見え、白くて艶やかな髪が原因なのか、食堂の外で女性陣がゲイアードさんに視線を向けている。
 店内でも、僕たちの座るカウンターの斜向かいを陣取った女性数人がこれまた凝視だ。
 目がトロンとしている。
 なんなの……。これが本当にモテる人の御業なの?

「ゲイアードさんて、おいくつですか?」

「ん? 三十一だが」
 へ~三十一か……。二十代前半にしか見えないよな~。

「で、普段からスーツなんですか?」

「そうだね。これが楽なんだ」
 大衆食堂には似つかわしくないよね。まあ、ルックス自体このお店には不釣り合いだけどさ。
 この感想は、絶対にケーシーさんの前では述べられないな。
 
 青空の下、掃除の行き届いた綺麗なテラスで、焼きたてサクサクなクロワッサンをつまみながら、プレーンオムレツを典雅に口に運んで紅茶を飲む。
 そんなイメージしかないよ。
 そんなイメージとは違い、口に運ぶのは、山賊とかが喜びそうな、分厚いハムステーキと目玉焼きフライドエッグ、それとオートミール。

「美味しい」
 本人は満足しているみたい。

「ありがとよ」

「素晴らしいですね。無駄をはぶいた動き。そして、私ごのみの焼き加減」
 ここでは先にケーシーさんに注文しておかないと、目玉焼きフライドエッグ両面焼きターンオーバーが主流で出て来る。
 ケーシーさんは片面焼きサニーサイドアップ派ではないのである! 
 ゲイアードさんの目玉焼きフライドエッグの好みの焼き加減は半熟オーバー・ミディアムじゃなくて、綺麗なオレンジ色になってる状態のヤツ。
 淡泊な黄色の堅焼きオーバー・ハード一歩手前の絶妙なヤツだ。
 ねっとりとした口当たりが美味しいタイプだね。
 僕は半熟オーバー・ミディアム派。こうやってパンにつけて食べると――、うまし! なのである。
 
 ケーシ―さんと談笑する事が出来るのも、大人としての経験の多さかな。
 初見だと、鋭い眼光が怖いから、話しかけづらい。
 強面を相手にする事も多い、違令いれい管理課勤務は伊達じゃない。

「で、休日に私に話とは?」
 ああ、普通にご飯を食べるだけになっていた。
 本来ならロールさんもいた方がいいんだろうけど、長いこと王都を離れてたから、堆く積んである書類に悪戦苦闘。
 僕のような下っ端と違って、ハイスペックな一年先輩のロールさんは、周りに頼られて大変だ。
 休日くらいはゆっくりしていただきたいので、ゲイアードさんと二人きりの状況になっているわけだ。
 前日に官庁の違令管理課に赴いて、話を聞いて欲しいと頼んだら、二つ返事で了承――――。
 今に至る。

「折角の休日なのに、すみません。話は食事の後にでも」

「いや、かまわないよ。休日は基本一人――――痛いな……。一人で過ごしているから、たまにはね。お言葉に甘えて、先に食事に専念しよう」
 痛いって何だったんだろう? カウンター狭いから、どこかぶつけたかな? 
 休日はボッチなんだな。親近感わくな~。
 と、いっても、この人の場合は、現状から考えるに、街を歩いてるだけで女性が言い寄ってきて大変そうだな。そういうのが苦手だから一人でいるのかもしれない。
 僕からしたら羨ましいけど……。

「はい、デザート」
 出されたのはフルーツの盛り合わせだ。
 王道のオレンジ、リンゴ、飾り切りに目覚めたのかな? こった切り方をしている。
 それらを彩るのが、マスカットにベリー。後は、何だろうか? 赤い皮の中に半透明な丸っこい果肉、初見だ。

「ライチか――目がないんですよ。うれしいな」

「だろ」
 ? ふむ。初めてのお客に、的確に好物を振る舞うのは、ケーシ―さんの料理人としてのなせる技か。
 ライチっていうのか。珍しい物も揃えてるな。

 ――。

「お、ようやくお目覚めか」
 ケーシ―さんの視線に沿えば――、重役出勤ですかい? レインちゃん。
 寝癖が凄いね。爆発してるよ。いつもの可愛いおかっぱ頭じゃない。

「――……?」
 どうしたレインちゃん? 首を傾げて。

「おまえだれた? 見ないかおだな」

「ゲイアード・マヒューズという」
 律儀に七歳児に名乗る三十一歳。 

「そうか。あ~あれだな。ピートは、かんぜんはいぼくだな」

「ふぁ!?」
 何をもって完全敗北なのかな? 解せないんだけど。屈託のない顔で言い切ったね。

「わからないのか?」

「分からないな~」

「ピートは、ばかだな~」
 ハハハハ―――――。寝癖をもっとクシャクシャにしてあげようか?

「見ろ――――――」
 可愛い食指が僕とゲイアードさんを複数回往復。
 食指は双方の顔へと向けられている。
 おいおい、子供が随分と生意気な比較をしてくれるね。

「な!」
 なにが【な!】だ! 認めたくないよ。その【な!】は……、
「わからないか? まったく。かおだ、かお」
 屈託のない笑顔でさ……。無邪気ゆえに邪気が無い。だからこそこちらの精神世界アストラルサイドへのダメージ凄いよ……。
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